ただ、笑ってほしいだけ

古川優亜

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「ほら、起きなシャーロット!!」
「いた!!」
勢いよく布団をはがされて私はベットから落ちた。
おしりを強くぶつけて正直泣きたい。
「今すぐ着替えなさい!!」
「は、はーい!!」
急いで立ち上がってメイド服に着替える。
「で、誰が持っていく?」
朝ごはんをもらいに調理場に行けば深刻な顔して話してる先輩たちがいた。
「どうしたんですか?」
椅子の上に座りながら聞けば近くにいた人が教えてくれた。
「あ、シャーロット。昨日、離れにスープを持って行ったでしょう?で、今日一日誰が持っていくかもめてるの。」
先輩はため息をつきながらどうしようかねとか言ってる。
「はい!!!」
思い切り元気に手を伸ばせばみんな驚いたように私を見る。
「私が行く!!道をまだ覚えてないし。覚えるためにも私が行く!!」
一生懸命に手を伸ばして言えばみんな突然笑い出した。
「そうかい、そうかい!!なら、今日一日探検するといい。」
執事の中で一番偉い執事長っていう人が頭を撫でてくれた。
「だが、母屋には近づかないように。探検するとしたら離れにしときなさい。」
人差し指を横に振りながら注意を受ける。
「はい!!」
「よし、では指切りをしようか。」
指切りをしてから慌ててスープを飲む。
そして、こっそりと自分の分のパンをポケットの中に入れる。
「ご馳走様!!行ってきまーす!!」

スープをこぼさないように慎重に歩いて離れに行く。
2階に上がって一つ一つ部屋を確認していく。
「は?」
5つ目の扉で王子様のいる部屋だった。
「あ、いた!!」
少しだけ早く歩いて王子様の元へ行く。
「朝ごはんだよ!!パンもあるから!!」
私は王子様の目の前にある机の上にお盆を置く。
向かい合わせの少し高い椅子に座って王子様が食べ始めるのをまつ。
「・・・俺が食べない限りここに居座るつもりか。」
「いすわる??」
王子様はため息をつくと何も言わず黙々とスープを飲み始めた。
だけど、パンにだけは一切触ろうとしなくて。
「王子様、どうして?どうしてパンだけ食べてくれないの??」
スプーンを置いて本を読もうとする王子様に慌てて話しかける。
「いや、まずこのパンどうした。俺にはパンなんて貰ったことない。」
「え?何言ってるの??私がコックさんに頼んだんだよ!!そしたら『秘密だよ?』って言ってくれたの!!」
腰に手を当てて胸を張れば王子様は頷いてくれた。
そして、少しづつちぎって食べる王子様を見て安心する。
よかった。
ばれなくて。
本当は私の朝ごはんのパンなの。
リンゴは夜中のうちにこっそりと盗んだの。
王子様のご飯の少なさに。
このままだと王子様が消えていきそうで。
私は王子様に背中を向けて横になる。
だめ。
こんな顔見せれない。
いつでも、どんな時でも。
私はただの幼い5歳の女の子でいなくちゃいけないの。
嘘ばかりついてごめんなさい。
本当にごめんなさい。
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