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春の物語
喜びは苦しみ
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私は気づいたらベットの上にいた。
右手が温かくて横を見ると男の子がいた。
疲れているのかぐっすり寝ていて、私の手を離さない。
ここは多分…病院なんだろう。
「ん。歌花?起きたのか。」
男の子が半分寝ぼけながらも起きた。
私はどうしてここにいるのか分からなかった。
いくら思い出そうとしても思い出せない。
「おはようございます。手、放してもらえますか。」
私はいつもの仮面をかぶって言った。
そう言うと彼は驚き悲しそうな顔をした。
どうして、そんな顔をするの?
「俺の事、覚えてないのか?」
この言葉に私は不思議だなと思いながら首を振った。
「嘘、だろ。」
彼は私の肩を掴んでいった。
「本当に。本当に俺の事が分からないのか。」
まるで信じられないという顔だった。
あなたを見ていたらどうして、こんなに苦しいの?
私はただうなずくだけ。
彼は手をゆっくりと下ろすと笑った。
「そっか。悲しいけど…しょうがないな。」
そこまで言うと彼は上を向いた。
何かをこらえているみたいだった。
私はただじっと彼を見た。
「悲しいの?」
気がつけば私はそう言っていた。
さっき悲しいと言っていた人にこの質問は不自然だ。
それでも私は彼に聞いた。
ゆっくりと私の顔を見る彼は…さみしそうだ。
「悲しいよ。」
そう言うと彼は私に腕を伸ばし
「それでもそばにいる。」
私を抱きしめながら言った。
私は抱きしめながらも震えている彼に気づいていた。
どうして彼は私を抱きしめるのだろう?
どうして彼は悲しいのだろう?
どうして…どうして彼は私のそばにいると言ったのだろう…。
色々と気になることがある。
ありすぎてどうしたらいいのか分からないくらい。
「………。どうしてあなたは私のそばにいるの。」
静かにそういうと彼は私を離して言った。
「春風と約束したから。ずっとずっとそばにいる。そう言ったんだ。」
彼はそう言うと私の頭をなでた。
「春風。俺の名前。分かる?」
私は首を横に振る。
すると彼はにぃと笑って言った。
「俺の名前は深谷彗。春風と同じ学級委員だ。」
「私が学級委員?」
繰り返して聞くと深谷君はうなずいた。
私は彼のことも学級委員になったことも知らない。
「驚くのも当然だよ。俺だって忘れられているのに驚いたんだから。」
そう言いながら窓の所に行って窓を全開に開けた。
風が入ってきてカーテンが揺れる。
月の光を浴びる深谷君は。私と同じ世界の人なのかと疑ってしまった。
「なぁ、春風。歌ってよ。」
急に言われて私は戸惑った。
あの頃のようには歌えない。
【天使の歌声】
いろんな人にそう言われてきた。
でも今の私はもう出来ない。
あの声は出せない。
上手に歌えない。
「別に上手く歌わなくてもいいんだよ。好きなことを自由に歌えばいい。」
自由に歌う?
「そう。春風が歌いたいように。好きなように歌う。ただそれだけでいいんだよ」
簡単だろ?というかのように言う彼は私に微笑んでいた。
私は小さく頷く。
「今、どんな歌を歌いたい?」
静かに聞かれ私は頭の中にある歌詞を思い出す。
♪「夜明けの来ない夜はないさ」
小さな声で歌い始めると彼も重ねてきた。
♪「「あなたはぽつり言う 灯台のたつ岬で暗い海を見ていた」」
久しぶりに歌う歌は私の心に楽しさがよみがえる。
深谷君は月の光に照らされながらも私と一緒に歌い続ける。
そして声は少しづつ大きくなる。
楽しくて私は歌ってはいけないことを忘れていた。
だからあんなことになってしまった。
右手が温かくて横を見ると男の子がいた。
疲れているのかぐっすり寝ていて、私の手を離さない。
ここは多分…病院なんだろう。
「ん。歌花?起きたのか。」
男の子が半分寝ぼけながらも起きた。
私はどうしてここにいるのか分からなかった。
いくら思い出そうとしても思い出せない。
「おはようございます。手、放してもらえますか。」
私はいつもの仮面をかぶって言った。
そう言うと彼は驚き悲しそうな顔をした。
どうして、そんな顔をするの?
「俺の事、覚えてないのか?」
この言葉に私は不思議だなと思いながら首を振った。
「嘘、だろ。」
彼は私の肩を掴んでいった。
「本当に。本当に俺の事が分からないのか。」
まるで信じられないという顔だった。
あなたを見ていたらどうして、こんなに苦しいの?
私はただうなずくだけ。
彼は手をゆっくりと下ろすと笑った。
「そっか。悲しいけど…しょうがないな。」
そこまで言うと彼は上を向いた。
何かをこらえているみたいだった。
私はただじっと彼を見た。
「悲しいの?」
気がつけば私はそう言っていた。
さっき悲しいと言っていた人にこの質問は不自然だ。
それでも私は彼に聞いた。
ゆっくりと私の顔を見る彼は…さみしそうだ。
「悲しいよ。」
そう言うと彼は私に腕を伸ばし
「それでもそばにいる。」
私を抱きしめながら言った。
私は抱きしめながらも震えている彼に気づいていた。
どうして彼は私を抱きしめるのだろう?
どうして彼は悲しいのだろう?
どうして…どうして彼は私のそばにいると言ったのだろう…。
色々と気になることがある。
ありすぎてどうしたらいいのか分からないくらい。
「………。どうしてあなたは私のそばにいるの。」
静かにそういうと彼は私を離して言った。
「春風と約束したから。ずっとずっとそばにいる。そう言ったんだ。」
彼はそう言うと私の頭をなでた。
「春風。俺の名前。分かる?」
私は首を横に振る。
すると彼はにぃと笑って言った。
「俺の名前は深谷彗。春風と同じ学級委員だ。」
「私が学級委員?」
繰り返して聞くと深谷君はうなずいた。
私は彼のことも学級委員になったことも知らない。
「驚くのも当然だよ。俺だって忘れられているのに驚いたんだから。」
そう言いながら窓の所に行って窓を全開に開けた。
風が入ってきてカーテンが揺れる。
月の光を浴びる深谷君は。私と同じ世界の人なのかと疑ってしまった。
「なぁ、春風。歌ってよ。」
急に言われて私は戸惑った。
あの頃のようには歌えない。
【天使の歌声】
いろんな人にそう言われてきた。
でも今の私はもう出来ない。
あの声は出せない。
上手に歌えない。
「別に上手く歌わなくてもいいんだよ。好きなことを自由に歌えばいい。」
自由に歌う?
「そう。春風が歌いたいように。好きなように歌う。ただそれだけでいいんだよ」
簡単だろ?というかのように言う彼は私に微笑んでいた。
私は小さく頷く。
「今、どんな歌を歌いたい?」
静かに聞かれ私は頭の中にある歌詞を思い出す。
♪「夜明けの来ない夜はないさ」
小さな声で歌い始めると彼も重ねてきた。
♪「「あなたはぽつり言う 灯台のたつ岬で暗い海を見ていた」」
久しぶりに歌う歌は私の心に楽しさがよみがえる。
深谷君は月の光に照らされながらも私と一緒に歌い続ける。
そして声は少しづつ大きくなる。
楽しくて私は歌ってはいけないことを忘れていた。
だからあんなことになってしまった。
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