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春の物語
歌の花が枯れるとき
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『歌姫は春風歌花ちゃんです!』
結果を聞いた瞬間、私はお父さんに抱き着いていた。
昔から歌うことが好きで、気が付くと歌を歌っていた。
家族は私の好きなことを尊重してくれた。
歌のコンテストにも出させてくれた。
ずっとずっと私の事を応援してくれた。
だから優勝したかった。
みんなのおかげで優勝できたよと伝えたかった。
「じゃあ、俺さきに行ってるな。歌花。また、後でな。」
「うん、お兄ちゃん。また後でね。」
お兄ちゃんはこの後用事があるらしくてさきに帰った。
私は、知らなかった。
幸せなことがあれば、悲しいことがあることを。
お父さんが運転する車は居眠り運転とぶつかって事故にあった。
何があったのか分からなかった。
ただ、気づいたら体が痛かったことと、焦げ臭いにおい。救急車の音。
周りに人が集まってきて、前に座っているお父さんを助けていたこと。
私はそれをみた瞬間に後の事は何も覚えてない。
ーーーー目が覚めたら白い天井が見えた。
「歌花。よかった、目が覚めたのね。」
隣にはお母さんが座っていた。
目に涙を溜めて、私の手を握りしめていた。
「お父さんは?」
そう言いたかったのに喉から声が出なかった。
驚いて声を出そうとしたけれど、どうやっても出なかった。
口をぱくぱくさせながら私は泣いていた。
お母さんが慌ててこう言った。
「歌花、大丈夫よ。時間はかかるけれど声は出るようになるから。」
私は安心した。
だけれどお母さんの次の言葉で悲しみの底えと変わった。
「だけれど前みたいに歌うことは難しいそうよ。」
一瞬で世界が色をなくした。
頭の中で何かが壊れる音がした。
どうしてなんだろう。
あんなに楽しかった毎日が今では遠いことのように感じる。
これは私が6歳の時のことだった。
結果を聞いた瞬間、私はお父さんに抱き着いていた。
昔から歌うことが好きで、気が付くと歌を歌っていた。
家族は私の好きなことを尊重してくれた。
歌のコンテストにも出させてくれた。
ずっとずっと私の事を応援してくれた。
だから優勝したかった。
みんなのおかげで優勝できたよと伝えたかった。
「じゃあ、俺さきに行ってるな。歌花。また、後でな。」
「うん、お兄ちゃん。また後でね。」
お兄ちゃんはこの後用事があるらしくてさきに帰った。
私は、知らなかった。
幸せなことがあれば、悲しいことがあることを。
お父さんが運転する車は居眠り運転とぶつかって事故にあった。
何があったのか分からなかった。
ただ、気づいたら体が痛かったことと、焦げ臭いにおい。救急車の音。
周りに人が集まってきて、前に座っているお父さんを助けていたこと。
私はそれをみた瞬間に後の事は何も覚えてない。
ーーーー目が覚めたら白い天井が見えた。
「歌花。よかった、目が覚めたのね。」
隣にはお母さんが座っていた。
目に涙を溜めて、私の手を握りしめていた。
「お父さんは?」
そう言いたかったのに喉から声が出なかった。
驚いて声を出そうとしたけれど、どうやっても出なかった。
口をぱくぱくさせながら私は泣いていた。
お母さんが慌ててこう言った。
「歌花、大丈夫よ。時間はかかるけれど声は出るようになるから。」
私は安心した。
だけれどお母さんの次の言葉で悲しみの底えと変わった。
「だけれど前みたいに歌うことは難しいそうよ。」
一瞬で世界が色をなくした。
頭の中で何かが壊れる音がした。
どうしてなんだろう。
あんなに楽しかった毎日が今では遠いことのように感じる。
これは私が6歳の時のことだった。
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