光の姫巫女

古川優亜

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「エミリーは、どうして魔力が暴走しなかったんですか。」
ハルキはぽつりと言った。
話を聞いている途中からずっと下を向いていて、手のひらに指が食い込み血がにじんでいる。
「母親の存在が大きかったんだろう。あの子がずっと笑顔でいられたのはただ、家族を守りたかったんだろうな。」
ジョンが言うとハルキも納得したように頷く。
エミリーは倒れても人を守るような心優しい少女だ。
ずっと、泣くのをこらえて笑顔を浮かべていても不思議ではない。
ハルキはふと初めて会ったときのことを思い出す。
綺麗な満月に照らされた桜色の髪の少女ははかなくて消えてしまいそうなほど現実味がなかった。
実際にエミリーは寝たきりの状態で心だけ外にいたのだ。
そして、魔力だけがどんどん暴走していき優しい心とは真逆に人を傷つけていったエミリー。
涙を流しながらどうすることもできなくて。
(あの時、何も言ってなかった。言ってなかったのに。)
ハルキはエミリーの涙を見ながら「私を殺して。」そう言っているような気がした。
いてもたってもいられず、エミリーのそばにいったハルキは魔力の暴走をなんとか止めることができた。
「エミはハルキ君に出会えてようやく普通の女の子になれた。本当に心からの感謝を言うよ。そばにいてくれて、ありがとう。」
ジョンは涙を浮かべながら頭を下げた。
ハルキはそれをぼうっとみながら考える。
エミリーは頭がよくて、魔力も強い。
自分はもちろん、今までと同じようにエミリーのそばにいるつもりだ。
でも、エミリーは・・・。


「ハルキ様。」
ハルキが考え込んでいると後ろから優しい声がした。
頭だけを後ろに向けると花冠を持ったエミリーが微笑んでいた。
エミリーの後ろにはリンカもおり、幸せそうにエミリーを見ながら微笑んでいる。
「お父様、花冠をお母さまと作ったの。これはお父様の分です。」
エミリーはジョンの頭に白色の花びらの花冠をのせるとハルキの元に向かい
「ハルキ様にはスカイブルーの綺麗なお花で作りました!」
恥ずかしそうにでも嬉しそうにふわりと微笑むエミリー。
ハルキはそれにつられるように笑い頭に花冠を乗せる。
小さくてはかない少女。
何かあれば消えていなくなってしまうんじゃないかと、思うほど不安になってしまう。
ハルキはエミリーの顔をじっとみつめる。
エミリーは首を傾げながらも恥ずかしそうに立っていた。
時が止まったように誰も何も言わない。
ふぅとハルキは息をつくとエミリーの手をとり
「おいで、書庫で本を読もう。」
と二人並んで歩きだす。
「これから娘のエミを頼むよ、ハルキ君。」
ジョンはぼそりと言い、リンカと共に微笑みあう。



エミリーとハルキは並んで本を読んでいた。
エミリーが声を出してゆっくりと本を読み進めていく。
途中途中で止まるのはいつものこと。
ハルキとエミリーは本が好きだから「ここが好きだ」「これが面白い」など話す。
仲良さそうに笑いあう二人は仲が良く、兄弟のようだ。
本棚の陰からアンとラムが二人の様子を見ていた。
「エミリー様・・・今日もかわいらしい💓。」
「・・・なんで、俺まで巻き込むんだよ、姉さん」
片手を頬にあててうっとりと二人を眺めるアンに呆れたような目で見つめるラム。
なんだかんだでいつも一緒にいるこの兄弟は性格が真逆だがお互い仲が良かった。
「はぁ。可愛いエミリー様の話をウカ姉さんにしたいわ。」
アンがため息をつきながら言うとラムは
「俺だってウカ姉さんに会いたいよ。」
ぼそりとラムが返すとアンはきらりと目を光らせてから顔を両手で覆った。
「いつもラムはそう。ウカ姉さんにだけ懐いて私には冷たい。お姉ちゃん、悲しい。」
「え、は?ちょ、姉さん!?」
慌てだすラム。
そして顔を真っ赤にして、これまた小さな声で言った。
「そ、その・・・姉さんが一番好き、だから。そんな、、、、泣かない、で。」
とぎれとぎれでそこまで言うとアンは
「お姉ちゃんもラムのことが世界で一番好きよ~(笑)」
と言いながらラムに抱き着いた。
「へ?は、ちょ。まさか今のウソ泣き!?」
「いいかげん学習しなさい、私の可愛いラム。愛しい弟」
アンは楽しそうにコロコロ笑いながら最愛の弟ラムを今日もからかうのだった。
そして、二人は気づいてないがエミリーとハルキは二人を見ていた。
こっそりと目を合わせ、小さな二人は笑う。
仲良し二人の二組は今日も平和に笑っていた。
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