光の姫巫女

古川優亜

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始まり

2 エミリーの力

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「そういえば、どうしてこんなに豊かなんだ?確か、ここの領は。」
ハルキが首をかしげながら隣にいるロキに聞いた。
「話が長くなりますが聞きますか?きっともう二度と起こらないだろう、奇跡の話を。この領に舞い降りた心優しい天使様の物語を。」
ロキはそういうと語りだした。
ハルキが知らない独りの天使の物語を。



エミリーが来る前から領土の民は飢えや病気で苦しんでいた。
食べるものはなく、植物も生えていない。
干からびた土は雨が降っても潤うことはなかった。
まず、土からどうにかしないといけなかったのだが、そんな大掛かりなことをする金もなく、ロキは頭を悩ませていた。
するといつもは本を読んでいるだけのエミリーが突然こんなことを言い出した。
「やってみたい魔法があるの。ラム医師とアモン先生レイ先生を呼んできてくれる?」
皆、何をするのかわからず戸惑っていたが真剣な顔のエミリーの目を見たら動いていた。
数分後。
エミリーの部屋に全員揃うと床が光りだした。
「これは!!」
屋敷にいたはずなのに今目の前に広がる景色に全員何も言えなかった。
「お嬢様、どういうつもりですか。」
ロキがしゃがみ込みエミリーに問う。
エミリーはロキをまっすぐ見ていった。
「私は、形だけでもここの領主です。今から、復興をします。あなたたちは今すぐ自分たちの仕事をしなさい。」
エミリーは鞄から炎と水の魔石を取り出した。
「いくらでも使いなさい。」
車椅子を動かし、移動していくエミリー。
使用人やロキたちは戸惑いながらもエミリーの指示通りに動く。
「アモン、これを運ぶから手伝ってくれ。」
「ロキ様、病人はラム医師のところに運ぶので手伝ってください。」
「先にこの材料を切ってくれ!」
みんな協力しながら復興の手伝いをする。
そんななか、エミリーは魔法を使っていた。
土に魔力を流し、植物を生み出す。
エミリーは地面から手を離し、領民たちをみた。
「お嬢様、スープできました。」
アンが言うとエミリーは頷きまた魔力を流す。
すると地面から大きな木が伸びてきた。
木からやがて実がなり赤い果物や黄色い果物、紫などたくさんの色の様々な種類の果物がエミリーの周りにでた。
「この果物も食べさせてあげて。それぞれの人にあった栄養面を考えて果物を渡していって。」
小さくあくびをすると眠たそうに眼をこするエミリー。
「お嬢様、私の魔力では少人数しか治癒できませんがどうしますか。」
ラム医師が言うとエミリーは魔法で浮かび上がる。
「私が治癒をかけます。ラム医師は大丈夫か後で確認してください。」
エミリーはそういうとピンク色の光で人々を包み込む。
挙句の果てには地面に立っている人全員に治癒をかけていた。
顔が険しくなっており誰もが魔力を調整できてないのがわかる。
エミリーが地面に座るとラム医師は激怒した。
「体が弱いのにこんな莫大な魔法を使わないでください!!!!!!」
作ったスープもなくなり木の実もなくなった頃。
領民たちはすっかり元気になった。
エミリーは魔石などを作ってギルドに売ったりして領民たちの生活を陰ながらに支えていた。
そのおかげもあって領民たちの衣服などもそろうようになった。
エミリーは一週間毎日食べ物を配ったり、治癒を施したりしていく。
そのかいあって元気になった者たちはエミリーの手伝いを少しづつするようになり。
活気あふれるようになるとエミリーは屋敷にこもるようになるがこもる前にロキたちにある頼みをしていた。
「植物の苗と家畜を購入しといて。」
なぜ購入しないといけないのか最初は誰もが疑問に思っていたがすぐにみんな理由がわかるようになる。
苗は土になじみすくすくと育ち、今は芽がでている。
家畜もエミリーによって生えた雑草などを食べて成長しており、ついこの間まで貧しかったとは思えないほど領民も土地も潤い、活気づいていた。
エミリーは毎日部屋から、空に向かって魔力を開放する。
この魔力のおけげで作物が異常に早く、大きく成長する。
エミリーの機転で2か月ほどで領民たちは普通に生活できるようになっていた。
古くて壊れかけていた家や建物は王都から呼んだ大工や建築士たちに直してもらったりした。



「と、こうしてみんな幸せに暮らしましたとさ。おしまいでございます。」
ロキは語り終わると紅茶を飲んだ。
「・・・エミリー様は何がしたいんだ?」
「さぁ?それは家臣でもわかりませぬ。ただ私たち家臣がわかるのは、お嬢様はとても優しい天使のようなお方であることです」
ハルキは頷きながら笑った。
「確かに、彼女はそういう人だ。」
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