光の姫巫女

始まり

２ パーティー

エミリーが寝込んでから次の年になった。
「まさかエミリーが寝込んでから０.2年(この世界では3年たってから1年になる。つまり0.2年とは二年間の事)
　になるとは。」
ジョンはエミリーの細い手を握りながら呟いた。
エミリーの顔はただでさえ白いのにもはや色がなかった。
「エミリー。今日は国王からの命令でこの屋敷でパーティーを開かないといけないんだ。だからうるさくなるだろう。なるべくこの部屋からは遠い場所でするからな。」
ジョンはそう言うとエミリーの手を離した。
「パーティーが終わったら来るよ。」
ジョンはそう言うと部屋を出て行った。


「皆様、本日はお越しくださりありがとうございます。」
ジョンはたくさんの人の前で挨拶をしていた。
「ジョン伯爵、本日のような祝いに呼んでいただき感謝します。」
公爵の1人がジョンに挨拶した。
「いえいえ、こちらこそお越しくださりありがとうございます。」
ジョンは顔に笑顔を貼り付けて会話する。
「父上、あちらにいてもよろしいでしょうか？」
緑色の髪にエメラルドの目の小さな少年が公爵に話しかけた。
「あぁ、いいよ。だが大人しくしてるんだぞ。」
公爵は優しく微笑みかけると少年は
「分かっています！」
と言って走って料理が並ぶ机に行った。
『助けて。』
少年は突然聞こえる声に驚いた。
「え？」
少年はきょろきょろと目を動かす。
『助けて、助けて。』
少年は声に連れられてふらふらと歩き出した。
―――――――――。
「あれ、ここは？」
少年は屋敷の外にいた。
外と言っても庭に出ていたのだ。
夜の星や月に照らされた花々はキラキラと妖しく輝いていた。
すると少年はとある少女を見つけた。
桜色の長い髪にサファイアとマリンブルーの瞳。
少年は何も言わずに少女を見ていた。
「どちら様？」
少女は透き通った声で少年に話しかけた。
いいながら小首をこてんと傾げている。
「俺は。ハルキ。ハルキ・リターン・ルロッカ。君は？」
少年・ハルキは最初話しかけられて驚いていたがすぐに落ち着き堂々と自己紹介した。
「私？私はエミリー・マナベ・アイザワ。ジョンお父様とリンカお母様の一人娘。この屋敷に住んでいます。」
少女はカーテシをしながら微笑んだ。
ハルキはぼうっとエミリーに見とれている。
「なぁ、ため口で話さない？型ぐるしいのは苦手で。」
ハルキは恥ずかしそうに頬を指でかく。
エミリーはニコリと微笑むと頷いた。
「なぁ、どうして君はここにいるんだ？皆と一緒にパーティーに参加しなくていいの。」
ハルキはエミリーの近くまで行くと話しかけた。
エミリーは寂しそうに微笑むと
「参加したいけどできないの。」
どうしてとハルキは言わなかった。
エミリーの瞳が揺れていたからだ。
「なぁ、踊ることはできるか？」
ハルキは何を思ったのかふとそんな事を言った。
エミリーは首を横に振る。
「そっか。」
ハルキは短く言うと屋敷から音楽が流れてきた。
エミリーは軽く目を閉じて音楽を聴いている。
「！！！」
「お、おいどうしたんだ！？」
突然エミリーが苦しみ出したので慌てるハルキ。
「っ！？」
ハルキはエミリーを触ろうとして触れなかった。
エミリーの体がピンク色に光る。
瞳から涙がぽろぽろとこぼれているエミリー。
苦しそうに息をしながらも美しく微笑むエミリー。
そしてエミリーはピンク色に光りながらも消えた。
最期までハルキに微笑みかけながら。