光の姫巫女

始まり

1 少しづつ慣れていく

エミリーが次に目を覚ますとメイドがいた。
「おはようございます、お嬢様。私の小さな主様。メイドのアンと申します。どうぞ、これからよろしくお願いします。今から、お嬢様の身の回りの事をさせていただきます。」
ニコリと微笑みながらメイドのアンは言った。
が、エミリーは人見知りを起こして布団に隠れてしまった。
アンは軽くタメ息をついた。
(聞いていた通り、人見知りなのね。でも、大丈夫！愛情を注げばきっと私にも慣れてくれるはず！！)
小さく拳を作りながらアンは心の中で呟いた。
「お嬢様、まずは着替えましょう！」
アンはそう言うと後ろに控えていた侍女たちを呼び、怯えているエミリーを着替えさせる。


「お嬢様、ご飯を食べてください！！」
アンはエミリーに頼み込んでいた。
エミリーはずっと1人、震えており、ご飯を食べようとしない。
(困ったわ・・・このままじゃ栄養不足で倒れてしまう。）
アンは悩みに悩んだ末、ご飯を食べ始めた。
「ちょ、アン！！」
周りのメイドは慌てているがアンはお構いなしでエミリーが食べるはずのものを食べている。
「美味しいですよ！ね、エミリー様？」
アンはそう言いながらニコニコと頬張る。
エミリーはアンが食べて言ったものを食べていた。
「す、すごいぞ。」
「完食ですね。」
屋敷で働いてる皆が驚いた。
小さな体のエミリーと華奢な体のアンの2人で完食。
「お嬢様、美味しかったですね！」
アンは優しくエミリーに微笑んだ。
「・・・。」
エミリーはアンから目線を逸らす。
エミリーはジョン、ルイス、ジーク以外の人には心を許していない。
幼い少女は一体どんな生活をしていたのだろうか？
これからアンはエミリーと仲良くなるために様々な案を考えたがすべて失敗に終わった。
「エミリー様、ジーク様とルイス様が、」
アンが2人が来たことを言うとエミリーは車いすを器用に動かす。
「ジーク、ルイス！」
エミリーの声はいつもよりも明るくなる。
笑うことはまだできない、声を出すこともできない。
それでも2人に会う時はいつもより嬉しそうに見える。
ブレスレットは心の感情をそのまま出してくれる。
「お嬢様は本当にあの2人が好きなのね。」
アンは寂しそうに笑いながら言った。
それから数日が経った。
エミリーは相変わらずの人見知りでいる。
「お嬢様、おはようございます。朝ですよ。」
ある日の朝。
アンがいつもどおりにエミリーを起こしに来るとベットにいるはずのエミリーがいなかった。
「お嬢様！？」
アンが悲鳴に近い声でエミリーを探し回る。
すると
「ここだよ。」
と、後ろから誰かに抱きしめられる。
アンを後ろから抱きしめたのは体の小さなエミリーだった。
「お嬢、様？」
アンは目に涙を浮かべながら小さな手を握る。
「私の側にいてくれてあろがとう。これからもよろしくお願いします。」
エミリーは今までに聞かせたことがない親しみにこもった声をだした。
「言われなくてもこれからもお嬢様の傍にいますよ、支えるのは私なんですから。」
アンは嬉しそうに涙を流した。
「アン。」
他の侍女たちはアンとエミリーの様子を微笑ましく見ていた。
「もちろん、他のお姉さんたちもよろしくおねがいします。」
エミリーはそう言うと小さくあくびをした。
「お嬢様、眠いでしょうが朝ごはんがあるんですからね！」
「ふぁい。」
アンがエミリーを着替えさせると、食堂へと向かう。
エミリーはこの日を境に屋敷で働く人たちに心を開いたのだった。