光の姫巫女

古川優亜

文字の大きさ
上 下
1 / 21
始まり

序章

しおりを挟む
真っ暗な夜の闇。
何人ものいかつい男が一人の少女を追う。
「追え!」
「あそこだ!!」
「逃がすな!!」
力の限り、少女は走っている。
が、すぐに少女は捕まる。
少女の髪を男は掴むと、不気味に微笑んだ。
「もう、逃げられないぞ。」
少女は絶望のまなざしで男を見る。
瞳には光がなく虚ろな目で涙を浮かべている。
少女はゆっくりと目を閉じる。
すると、周りが何故か燃え始めた。
炎は勢いを増し、男たちを燃やす。
少女は青白い顔で燃えていく男たちを見る。
小刻みに小さな体が震えて力尽きたように倒れた。
(助けて。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
ベットに一人の少女が寝ている。
ボロボロの薄汚い服を着て、頬も痩せこけていた。
ベットに横になっているのに、呼吸が荒く体中に汗をかいてる。
赤い髪のいかにも運動が得意そうな青年が少女の汗をぬぐっていた。
「ジーク、どうですか。」
銀髪の長い髪を一つにまとめた知的な青年が赤い髪の青年に話しかける。
「いや、起きる様子はねぇな。ずっと苦しそうにうなされてる・・・。ルイス、頼むからその母さん癖どうにかしてくれ。」
赤い髪の青年ジークは苦笑いを浮かべながら銀髪の青年ルイスの持っているものに目が釘づけになっている。
「しかし、熱もありますし。」
ルイスは袋に入れた氷を少女の頭にそっと置いた。
「・・・。」
少女はゆっくりと目を開き虚ろな目で二人の青年を見る。
「「!!!」」
2人の青年は少女の瞳をみて息を飲んだ。
少女はゆっくりとふらつきながら体を起こし、ジークとルイスに向けて土下座をした。
が、体に上手く力が入らずベットに勢いよく倒れる。
「お、おい!」
「しっかりしてください!!!」
ジークがすぐに少女に布団をかぶせてルイスが頭に氷袋をのせる。
「おい、やべぇぞ、熱が上がってる。」
ジークは少女の額に手をのせると、ルイスを見た。
「・・・朝になったら本部に戻りましょう。その時にこの女の子の体調の事も考えながら、移動します。」
ルイスはそう言うと少女の手を握り何か呪文を唱えていた。


朝になり少女の呼吸もだいぶ落ち着き始めた。
熱もかなりさがっており、少女は目を覚ましていた。
「おはようございます、僕の名前はルイスです。大丈夫、そんなに怯えないで。」
「俺はジーク!て、おい!何で布団にもぐりこんだ!?」
少女はどうやらジークの事が怖いらしく布団の中に隠れたる。
ルイスとジークはとりあえず少女に自己紹介はしたもののこの後、どう伝えればいいのかを顔を見合わせて考える。
ぐーぎゅるるるー!
「「・・・。」」
布団からの大きな音で2人は少女を見ると少女は青白い顔で小さくガタガタと震えていた。
ルイスとジークは少女を残して部屋を出て無言で料理を始めた。
「なぁ、ルイス。」
「何か?」
ジークは鍋に火をかけながら隣で野菜を切っているルイスに話しかける。
「あいつ、今までどんな生活してたんだろうな。あの目といい、行動といい。」
「・・・きっと、何かあったんでしょうね。僕たちが深く聞くわけにはいきません。」
「・・・そう、だな。でも俺は・・・あの女の子には笑ってほしいな。」
重い空気を吹っ切るようにジークは力強い声で言った。
その言葉にはルイスも頷く。
「えぇ、そうですね。あの子は僕たちに恐怖を抱いてますが、逆に今はその恐怖を使わせていただきましょう。」
ルイスはそう言うと鍋を見てからジークの頭を叩いた。
「いてっ!何すんだよ!!!」
「鍋を見なさい!鍋を!!!」
鍋からブクブクとスープがこぼれていた。


少女は布団にもぐったままぴくりとも動かなかった。
(生きてるのか、これは。しかも小さく丸まってるし。)
ジークは小さく思う。
「おーい!出てこい!!」
ジークは布団をぱっと取る。
そして、毛布で少女をくるむと
「よし、行くか!!」
茫然としている少女を片手で抱え込むとそのまま部屋を出る。
「????」
「こら、ジーク!!レディをなんという持ち方をしているんですか!!」
ジークが少女を荷物のようにして持っているのに気づいたルイスは笑いながらも注意した。
ジークは椅子に座るとおどけたように謝る。
「へいへい、分かったよーっと。」
ジークは少女を優しく自分の膝の上に乗せる。
「まだ、熱いし熱も下がったばかりなので少しづつゆっくりと飲んでください。」
ルイスはジークの隣の席に座るとフーフーとスープを覚ましながら少しづつ少女に飲ませていく。
最初は怯えていた少女に怖くないと伝えるためにルイス自らスープを飲んだりもしていた。
そして少女に見えるように水でスプーンも洗ったりしていて・・・。
少女は怯えながらも完食するとルイスは満足そうに微笑んだ。
「さて、お風呂に入りましょうか。傷がかなり目立ちしみて痛いと思いますが、汗もたくさん搔いていましたし、熱が下がっているうちにさっさと済ませましょう。」
ーーーーーーーーーー。
「どのくらい風呂に入ってなかったんだ???」
ジークは少女の背中をこすりながらタメ息をついた。
どうやら少女はルイスとジークを信用したらしく今となってはジークにすべて任せている。
ジークはなるべく優しく体をこすりながら少女が怯えなくなったので嬉しそうに笑っていた。
「ジーク、もうそろそろお湯に浸からせてあげてください。いいですか?
 ジークお兄さんが60秒数えるので60と言ったら上がるんですよ?」
最期の言葉は少女に向けて言ったものらしく少女は首を傾げながらも頷いていた。
「よし、じゃぁ数えるぞいーち、にーい!」
ジークはゆっくりと大きな声で数を数え始めた。
少女もジークと数えるように口を動かす。
「・・・60!はい、上がろうな。おーい!ルイス!!」
「はいはい。待ってくださいね。」


「うわぁお!見違えったなぁ。」
ジークが感嘆の声を上げる。
綺麗になった少女はまるでお人形のようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく
ファンタジー
 私は大学からの帰り道に突然意識を失ってしまったらしい。  目覚めると 「異世界に行って楽しんできて!」と言われ訳も分からないまま強制的に転生させられる。 ちょっと待って下さい。私重度の人見知りですよ?あだ名失神姫だったんですよ??そんな奴には無理です!!     しかし神様は人でなし…もう戻れないそうです…私これからどうなるんでしょう?  頑張って生きていこうと思ったのに…色んなことに巻き込まれるんですが…新手の呪いかなにかですか?   これは3歩進んで4歩下がりたい主人公が騒動に巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んでいく3歩進んで2歩下がる物語。 ♪♪   注意!最初は主人公に対して憤りを感じられるかもしれませんが、主人公がそうなってしまっている理由も、投稿で明らかになっていきますので、是非ご覧下さいませ。 ♪♪ 小説初投稿です。 この小説を見つけて下さり、本当にありがとうございます。 至らないところだらけですが、楽しんで頂けると嬉しいです。 完結目指して頑張って参ります

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

いじめられっこが異世界召喚? だけど彼は最強だった?! (イトメに文句は言わせない)

小笠原慎二
ファンタジー
いじめられっこのイトメが学校帰りに攫われた。 「勇者にするには地味顔すぎる」と異世界に落とされてしまう。 じつはいじめられっ子は仮の姿で、彼は最強の人物だった。しかし正気を保つためには甘いものが必要となるので、冒険者になってお金を稼ぎ、甘いものを手に入れようと頑張り始める。 イトメの代わりに勇者として召喚されたのは、イトメをいじめていたグループのリーダー、イケメンのユーマだった。 勇者として華やかな道を歩くユーマと、男のストーカーに追い回されるイトメ。 異世界で再び出会った両者。ユーマはイトメをサンドバッグ代わりとして再び弄ぼうと狙ってくる。 仲間を狙われたイトメは、力の片鱗を見せてユーマを遠ざけようとする。 しかしなんの運命の悪戯か、行く先々でユーマの危機にイトメが立ち会う羽目になってしまい、不承不承ながらイトメがユーマを助けることになってしまう。 格下と見ていたイトメに何度も助けられるユーマは次第に壊れ始めて行く。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...