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出会い
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この国の首都である、城塞都市の中心にある教会の中は広く、入り口前の広場には多くの人々が行き来していた。
人々はその教会の前を何気なく通り過ぎるが、祈りの日には必ず神との架け橋であるこの教会に出向いて祈りを捧げる。厄災が過ぎたからといって、人々の信仰心が揺らいだことは無い。
その外観は縦に長くそして高く、はるか天に思し召す神に少しでも近づいて敬意を表そうという思いが込められている。教会の壁には多くのレリーフが掘られ、人間と神がこれまでに強くつながってきた歴史を物語っていた。
老人は司祭に連れられて、教会の中へ足を踏み入れた。入口から最奥の方に小さく祭壇が見え、その道のりを彩るカラフルなステンドグラスは神への尊敬を表すような眩しさを放っていた。
祭壇の前には、一人の少女が跪き、手を組んで神に祈りを捧げていた。まるで何年もその場所で身動きひとつさせずに祈っていたのかと思わせるような、荘厳とした佇まいだった。司祭と老人の足音に気がついて、立ち上がり、振り向いた。その所作はまるで無駄がなく、可憐と言っても良いくらいに美しいものだった。
「司祭様、そのお方は」
少女の声はその佇まいに似合わず、少し幼さを感じさせるものだった。そして老人の、自然体ながらその奥に威厳を感じ、少し動揺したように尋ねた。
「いえいえ、大した者ではありませんよ」
老人は謙遜して両の手をパタパタとしながら言った。
「そんなお人が、大司教様と共に教会にいるとは思えないのですが…」
少女は少し困惑した表情を見せた。少し首を傾げていながらも、姿勢や所作は変わらずに可憐だった。
「なるほど、やはり君にはまどろっこしい物言いは通用しないね。では短刀直入に。この方こそ、かつての厄災を退けたドラゴンスレイヤー本人なのですよ」
司祭は少し自慢げに、そして謙虚さの両方を合わせたような口調で言った。
それを聞いた少女はハッとした表情になり、はじめからきれいな姿勢をさらに正し、老人にお辞儀した。
「失礼いたしました。あのドラゴンスレイヤー様とはつゆ知らずに、ご無礼をお許しください、老師様」
少女の声にはか細い、申し訳なさそうな響きと共に、わずかな興奮が感じられた。
「お顔をお上げください、小さな司祭様。そんな話もありましたが、とうの昔の話です。今はただの老いた隠居の身です」
少女は恐る恐るといった様子で顔を上げた。その視線の先には老人の柔らかな笑みがあった。
「話は聞いていますよ。司祭様。一人前になるための試練に護衛をつけずに挑もうとして頑なだと」
「ご存じでしたか」
「さしでがましいようですが、護衛をつけずに試練に挑むのはいささか無謀かと思います。道中には山賊や、弱体化したとはいえ魔獣もおりますよ」
「わかっております、老師様。しかし、護衛の方におんぶに抱っこというわけにはいきません。私自身の受ける試練なのですから。それに、教会で教わる白魔法は一通り会得していますので、身の安全も守れると考えています」
少女は先ほどの申し訳なさを感じない、多少の頑固さと、決意と、自信を込めた言葉を発した。老師はそれをわずかに微笑ましい目つきで見ていた。
「ご覧のとおり、賢い子なのですが、少し頑固でして」
司祭は困ったと言わんばかりの仕草をしながら言った。
「いえいえ、頑固なのは私の若い頃に少し似ています。もっとも、私の場合は田舎の荒くれ者に過ぎませんでしたが」
老師は穏やかな口調で目を細めた。
人々はその教会の前を何気なく通り過ぎるが、祈りの日には必ず神との架け橋であるこの教会に出向いて祈りを捧げる。厄災が過ぎたからといって、人々の信仰心が揺らいだことは無い。
その外観は縦に長くそして高く、はるか天に思し召す神に少しでも近づいて敬意を表そうという思いが込められている。教会の壁には多くのレリーフが掘られ、人間と神がこれまでに強くつながってきた歴史を物語っていた。
老人は司祭に連れられて、教会の中へ足を踏み入れた。入口から最奥の方に小さく祭壇が見え、その道のりを彩るカラフルなステンドグラスは神への尊敬を表すような眩しさを放っていた。
祭壇の前には、一人の少女が跪き、手を組んで神に祈りを捧げていた。まるで何年もその場所で身動きひとつさせずに祈っていたのかと思わせるような、荘厳とした佇まいだった。司祭と老人の足音に気がついて、立ち上がり、振り向いた。その所作はまるで無駄がなく、可憐と言っても良いくらいに美しいものだった。
「司祭様、そのお方は」
少女の声はその佇まいに似合わず、少し幼さを感じさせるものだった。そして老人の、自然体ながらその奥に威厳を感じ、少し動揺したように尋ねた。
「いえいえ、大した者ではありませんよ」
老人は謙遜して両の手をパタパタとしながら言った。
「そんなお人が、大司教様と共に教会にいるとは思えないのですが…」
少女は少し困惑した表情を見せた。少し首を傾げていながらも、姿勢や所作は変わらずに可憐だった。
「なるほど、やはり君にはまどろっこしい物言いは通用しないね。では短刀直入に。この方こそ、かつての厄災を退けたドラゴンスレイヤー本人なのですよ」
司祭は少し自慢げに、そして謙虚さの両方を合わせたような口調で言った。
それを聞いた少女はハッとした表情になり、はじめからきれいな姿勢をさらに正し、老人にお辞儀した。
「失礼いたしました。あのドラゴンスレイヤー様とはつゆ知らずに、ご無礼をお許しください、老師様」
少女の声にはか細い、申し訳なさそうな響きと共に、わずかな興奮が感じられた。
「お顔をお上げください、小さな司祭様。そんな話もありましたが、とうの昔の話です。今はただの老いた隠居の身です」
少女は恐る恐るといった様子で顔を上げた。その視線の先には老人の柔らかな笑みがあった。
「話は聞いていますよ。司祭様。一人前になるための試練に護衛をつけずに挑もうとして頑なだと」
「ご存じでしたか」
「さしでがましいようですが、護衛をつけずに試練に挑むのはいささか無謀かと思います。道中には山賊や、弱体化したとはいえ魔獣もおりますよ」
「わかっております、老師様。しかし、護衛の方におんぶに抱っこというわけにはいきません。私自身の受ける試練なのですから。それに、教会で教わる白魔法は一通り会得していますので、身の安全も守れると考えています」
少女は先ほどの申し訳なさを感じない、多少の頑固さと、決意と、自信を込めた言葉を発した。老師はそれをわずかに微笑ましい目つきで見ていた。
「ご覧のとおり、賢い子なのですが、少し頑固でして」
司祭は困ったと言わんばかりの仕草をしながら言った。
「いえいえ、頑固なのは私の若い頃に少し似ています。もっとも、私の場合は田舎の荒くれ者に過ぎませんでしたが」
老師は穏やかな口調で目を細めた。
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