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Past#1 不意打-thunderbolt-
Past#1 不意打-thunderbolt- side.kota
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黒く、黒い
底無しの
どこまでも飲み込んでいくような
目
もしかして、見られてた?
ずっと
こうやって
この
距離
で?
「―――――ッ!!!!」
「コタッ!!」
呼ばれた時には、彼の手を払いのけ、彼の顔面を殴っていた。
……殴ってしまった。
容赦なく。
肺が求めるままに、一挙に酸素を取り込んだせいで咳き込む。苦しくて生理的な涙で歪む視界の隅に、床に転がった彼が見えた、がそれをシズさんの背中が遮る。
「お前、覚悟はできてるでしょうね」
普段からは想像もつかない地を這う声でシズさんが問うもの、彼は動かない。自分も動けない。
ただ、握りしめた左手がじんじんする。熱が引く。それは驚くほどの早さでもって。
……怪我人を殴った。
絶対安静って言われていた彼を、本気で殴った。
いくら嫌で嫌だったとしてもこれでまた怪我が広がって、それこそ取り返しのつかないことになっていたら?
彼は動かない。
ぴくりとも、しない。
「し、シズさんっどうしよう、僕!!」
「大丈夫です、その程度で死ぬような人間じゃないでしょうから」
いつもの声に戻ったシズさんは、そうして深々とため息をついた。
「人の心配より貴方、自分がこれに何をされたか分かってますか?」
……何を、て。
――……キス?
「――――ッ!!!!!!」
瞬間ぼん、と思考回路がショートした。
燃えるような赤を顔中にちらしながら。
「――――――ッ!!」
思い出すな思い出すな思い出すな!!
禁じれば禁じるほど脳裏にちらつく黒い眼に、もう顔から本当に火が出てるんじゃないかと思う。
というか発狂したいというかもうすでにしてるというかそもそもどうしてこうしてあんなことに!?
しかも男!?
ファーストキスがどうだとかいうつもりはないけど、女の子ともしたことない、いやまずお付き合い経験すらないのに全て吹っ飛ばしてよりによって男とでぃ、でぃでぃでぃ!?
……やばい、これ本気で泣く。
「……まったく、貴方って本当に」
「……し、ジズざん……」
人が良すぎですと、またため息をつくシズさんの声に、その時呻く声が重なった。
ずるりと仰向けになるように畳に寝転んだ彼は、そうして、浅い息を整えこちらを向く。部屋が暗くて確証はないけど、身構える自分たちに薄く笑ったように思う。
「……なんだ」
彼は言った。
床に横たわったまま、顔に包帯が巻かれた手を当てたまま。
低く、低く呟き声で。呻く、声で。
「殺せば良かったのに」
……え?
底無しの
どこまでも飲み込んでいくような
目
もしかして、見られてた?
ずっと
こうやって
この
距離
で?
「―――――ッ!!!!」
「コタッ!!」
呼ばれた時には、彼の手を払いのけ、彼の顔面を殴っていた。
……殴ってしまった。
容赦なく。
肺が求めるままに、一挙に酸素を取り込んだせいで咳き込む。苦しくて生理的な涙で歪む視界の隅に、床に転がった彼が見えた、がそれをシズさんの背中が遮る。
「お前、覚悟はできてるでしょうね」
普段からは想像もつかない地を這う声でシズさんが問うもの、彼は動かない。自分も動けない。
ただ、握りしめた左手がじんじんする。熱が引く。それは驚くほどの早さでもって。
……怪我人を殴った。
絶対安静って言われていた彼を、本気で殴った。
いくら嫌で嫌だったとしてもこれでまた怪我が広がって、それこそ取り返しのつかないことになっていたら?
彼は動かない。
ぴくりとも、しない。
「し、シズさんっどうしよう、僕!!」
「大丈夫です、その程度で死ぬような人間じゃないでしょうから」
いつもの声に戻ったシズさんは、そうして深々とため息をついた。
「人の心配より貴方、自分がこれに何をされたか分かってますか?」
……何を、て。
――……キス?
「――――ッ!!!!!!」
瞬間ぼん、と思考回路がショートした。
燃えるような赤を顔中にちらしながら。
「――――――ッ!!」
思い出すな思い出すな思い出すな!!
禁じれば禁じるほど脳裏にちらつく黒い眼に、もう顔から本当に火が出てるんじゃないかと思う。
というか発狂したいというかもうすでにしてるというかそもそもどうしてこうしてあんなことに!?
しかも男!?
ファーストキスがどうだとかいうつもりはないけど、女の子ともしたことない、いやまずお付き合い経験すらないのに全て吹っ飛ばしてよりによって男とでぃ、でぃでぃでぃ!?
……やばい、これ本気で泣く。
「……まったく、貴方って本当に」
「……し、ジズざん……」
人が良すぎですと、またため息をつくシズさんの声に、その時呻く声が重なった。
ずるりと仰向けになるように畳に寝転んだ彼は、そうして、浅い息を整えこちらを向く。部屋が暗くて確証はないけど、身構える自分たちに薄く笑ったように思う。
「……なんだ」
彼は言った。
床に横たわったまま、顔に包帯が巻かれた手を当てたまま。
低く、低く呟き声で。呻く、声で。
「殺せば良かったのに」
……え?
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