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Past#1 不意打-thunderbolt-
Past#1 不意打-thunderbolt- side.?
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どうやら地獄と言うやつは、存外無法地帯らしい。
あれか、裁判官は鬼じゃねぇのか。猫なのか。
それとも。釜茹でってのは囚人を猫にするオプション付きだったか。
……俺にしては上出来な冗談だが、んなわけねぇだろばかやろう……
つまり目の前にふんぞり返る白い毛並みも、耳を覆いたくなるミャァミャアうるせぇ鳴き声も。
「こら、ブチ!! 怪我人に乗るんじゃない!!」
胸を圧迫する生き物も、センスのない名前を連呼する声も。
俺が捨ててしまいたかった世界のもの。
しぶてぇなぁ、俺。
なに、まさかまたここで『俺』を生きなきゃなんねぇの?
……マジ勘弁なんだけど。
「ブーチー、いい加減にしないと怒るよ」
もう既に言葉尻に怒りが込められた声に、猫が鳴く。
「ダメ。確かにお前あったかいけど、怪我が膿んだらどうするの」
厳しく言い渡された猫は、それでもなんか、負けじと鳴き返して。
「却下。だめ。……ってわ、シロ!! お前重いっ、キイロも部屋から出ろって!!」
……なんなの、この猫屋敷。
わらわらと視界に現れる多様な柄の猫に、できる限り抑えているつもりらしい男の声がかけられる。
言葉だけ聞いてりゃまるで人間同士の会話のように。
つーかブチに続いてシロとキイロって、ネーミングセンスが欠片もねぇ。
――そう思った瞬間。
「あ……っ」
焦り声が、俺の鼓膜を震わす。
次いで、チロチロと小さなもんが傷だらけの頬を舐めてそれが滲(し)みて。
「……ッ」
「ばっ、だからダメだって!! 部屋から出てなって言ったじゃないかブ、」
僅かに狭まった視界に突如現れた手が、まだ小さい猫を抱き上げる。
「……チ、」
目があった。
つーか合わせた、俺が。
男にしては高めの声に、期待を裏切らない童顔。
丈ははなかなかあるようで顔は遠い。運動部のように刈り上げた黒の短髪に、目が大きいのが特徴的だろう。
その大きな目をこれでもかというぐらい見開き、固まった男の腕を抜け出して、白と黒の斑模様を持つ、尾のない猫が擦りよってくる。
……あぁなるほど。だから『ブチ』。
じゃぁなに。
目の前でふてぶてしく座る白猫が『シロ』で、奥の目が黄色い奴が『キイロ』ってか。
単純にも程度ってもんがあるだろう、コイツ。
ふは、と息が漏れた。次第にたまらなくなって、笑うとマジで折れた骨に響いて痛ぇのに止まらなくなる。
「な、な……ッ!!」
顔中真っ赤させて、石像みてぇに固って。
なにこれ
コイツ絶対おかしい。
「……その猫、アンタが拾ったの」
別に、このまま放っておいてもよかったんだけど。
ずっと情けない"な"を聞かされるより、興味を持った。
捨てられることに慣れた過ぎたこの街で。
ガラクタ集めて、名前までつけて、抱き抱えている奴のこと。
どうやら地獄と言うやつは、存外無法地帯らしい。
あれか、裁判官は鬼じゃねぇのか。猫なのか。
それとも。釜茹でってのは囚人を猫にするオプション付きだったか。
……俺にしては上出来な冗談だが、んなわけねぇだろばかやろう……
つまり目の前にふんぞり返る白い毛並みも、耳を覆いたくなるミャァミャアうるせぇ鳴き声も。
「こら、ブチ!! 怪我人に乗るんじゃない!!」
胸を圧迫する生き物も、センスのない名前を連呼する声も。
俺が捨ててしまいたかった世界のもの。
しぶてぇなぁ、俺。
なに、まさかまたここで『俺』を生きなきゃなんねぇの?
……マジ勘弁なんだけど。
「ブーチー、いい加減にしないと怒るよ」
もう既に言葉尻に怒りが込められた声に、猫が鳴く。
「ダメ。確かにお前あったかいけど、怪我が膿んだらどうするの」
厳しく言い渡された猫は、それでもなんか、負けじと鳴き返して。
「却下。だめ。……ってわ、シロ!! お前重いっ、キイロも部屋から出ろって!!」
……なんなの、この猫屋敷。
わらわらと視界に現れる多様な柄の猫に、できる限り抑えているつもりらしい男の声がかけられる。
言葉だけ聞いてりゃまるで人間同士の会話のように。
つーかブチに続いてシロとキイロって、ネーミングセンスが欠片もねぇ。
――そう思った瞬間。
「あ……っ」
焦り声が、俺の鼓膜を震わす。
次いで、チロチロと小さなもんが傷だらけの頬を舐めてそれが滲(し)みて。
「……ッ」
「ばっ、だからダメだって!! 部屋から出てなって言ったじゃないかブ、」
僅かに狭まった視界に突如現れた手が、まだ小さい猫を抱き上げる。
「……チ、」
目があった。
つーか合わせた、俺が。
男にしては高めの声に、期待を裏切らない童顔。
丈ははなかなかあるようで顔は遠い。運動部のように刈り上げた黒の短髪に、目が大きいのが特徴的だろう。
その大きな目をこれでもかというぐらい見開き、固まった男の腕を抜け出して、白と黒の斑模様を持つ、尾のない猫が擦りよってくる。
……あぁなるほど。だから『ブチ』。
じゃぁなに。
目の前でふてぶてしく座る白猫が『シロ』で、奥の目が黄色い奴が『キイロ』ってか。
単純にも程度ってもんがあるだろう、コイツ。
ふは、と息が漏れた。次第にたまらなくなって、笑うとマジで折れた骨に響いて痛ぇのに止まらなくなる。
「な、な……ッ!!」
顔中真っ赤させて、石像みてぇに固って。
なにこれ
コイツ絶対おかしい。
「……その猫、アンタが拾ったの」
別に、このまま放っておいてもよかったんだけど。
ずっと情けない"な"を聞かされるより、興味を持った。
捨てられることに慣れた過ぎたこの街で。
ガラクタ集めて、名前までつけて、抱き抱えている奴のこと。
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