ナンセンス文学

イシナギ

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白い悪魔と黒い怪物

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またやってしまった…

心の中で呟きながら僕は溜め息をついた。新聞からは僕のマヌケな顔がこちらを見ている。防犯カメラに映った映像だそうだ。

最初に言っておこう。僕は人殺しだ。それも殺ったのは1人や2人じゃない。今回で50人目。記念に道路にあったコーンをソイツの頭に被せて目印にしてやった。そして油断して覆面を取ってしまい、やらかしたという訳。いつもそうだ。トドメは完璧なのに、自分で言うのもアレだが生憎頭の方が悪い為証拠を残してしまう…。
でもおかしな話だよ。そもそも僕はゲームをしているだけなのに、なぜこんなに悪者扱いされなきゃいけないんだろうか?…まあ、それが世の常なんだから仕方ない、と新聞を閉じ、どこか隠れる場所を探すことにした。
街のビルに取り付けられた大きなテレビも、僕のしたことを知らせている。ついた異名は、
「白い悪魔、ねぇ…」僕はテレビから目を逸らし、人混みに紛れた。

━━━━━━あれ?
何か変だ。急に人の声が聞こえなくなった。気配もしない…。恐る恐る顔を上げてみる。
「嘘…だろ?」  周りを見て目を疑った。こんなことあるはずが無い。そう思いながら目に映る景色には……
色が無かった。景色だけではない。元々白ずくめで髪も白い僕自身の色も消えていた。肌も、目も。全てがモノクロになっていた。僕は初めて焦りや恐怖という感情を抱いた。これは夢だ…錯覚だ!そう叫びながら街を走り、この気味の悪い世界を抜け出せる出口を探した。……見つかる訳が無い。どうやって来てしまったかも分からないんだから。座りこもうとしたその時、人影が見えた。僕とは対称的な、真っ黒な人影が。僕は走ってそれに追いつき、声をかけた…否、声をかけようとした。━━訂正したのは、声が出なかったからだ。僕が話しかけようとしたそれは……人では無かった。2mはあろうかという長身に、黒のシルクハット。ガタイの良い体つきに細長い足と全身黒ずくめの服とマントに4本しかない指。唯一白いマフラー。そして1番の特徴は、1つしかない、巨大な目。
恐怖で体が動かない…。そんな僕にそいつは、目だけ動かし僕を睨んだ。途端に僕は弾かれるようにしてそこを離れた。
「なんだったんだ今のは…!?」いや、今はそんな事どうだっていい。とにかく助かる方法を…!
ドン!
何かにぶつかり、僕は尻もちをついてしまった。顔を上げて見えたものに、ゾッとした。だってそいつは……
 僕が昨日殺した、50人目のアイツだったから。真っ白なワンピースに、どこかのホラー映画に出て来そうな長い黒髪の女…。そして頭には僕が被せたコーン。間違いない。過呼吸気味になりながらも立ち上がって逃げようとするが、足に力が入らない。すると後ろからさっきの1つ目の怪物がやってきた。もう何がなんだか分からない…恐怖で引きつっているであろう僕の顔をしり目に、あのコーン女に何か言った後、怪物は僕を見てこう言った。
「少し眠ってろ」
すると全身に物凄い衝撃を感じ、目の前が真っ暗になった…………
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