「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太

文字の大きさ
上 下
16 / 40
第一章

第16話 新クラン名決定!

しおりを挟む
 その日、僕たちは三人で新しくクランを結成したということで、ちょっとした懇親会を開くことになった。クランの名前が未定なので懇親会ではクラン名も決める予定だった。

 夜も更けてきた頃、クラン本部として使うアパートの一室で僕とミサキ、セネリーは片手にお酒の入ったコップを手にしながらテーブルを囲んでいた。

「そ、それじゃあ新しいクラン結成を祝って、か、乾杯……」

 なぜか乾杯の音頭を取るように二人に言われた僕は、そっとコップを掲げた。

「……かんぱい」

「ふふ、この杯《さかずき》を新たなクランに捧げる……」

 ……いまいち噛み合っていない感じがしながらも三人での懇親会が始まった。僕は正直本当にこれでよかったのかなぁと思った。やはり三人だけのクランだとどうしてもこの先が不安になる。セネリーも最近ランク2になったばかりということだし、みんな冒険者は初心者みたいな感じなのだ。

「……そう言えば前から気になってたんだけど、ミサキのその眼帯はファッションなのかい? それとも怪我?」

 少し酒が入ったのかセネリーがズケズケと聞く。ミサキの眼帯については正直僕も気になっていたのでセネリーが聞いてくれてよかったと思った。セネリーの質問に対してミサキは特に顔色一つ変えることなく答える。

「……けが。商隊護衛の仕事をしているときに盗賊にやられた」

 ミサキはそう言って肩をすくめる。

「そうか、それは気の毒に……。最近は物騒な世の中だからね。私もついこの前クランを追い出されたばかりだし……。人生なかなかうまくいかないものさ」

 そう言ってセネリーがごくごくとぶどう酒を飲む。僕はセネリーが酔っ払う前に新しいクラン名を決めようと思った。

「あ、あのさ、新しいクラン名についてなんだけど、どうしようか? 二人は何かいい案ある?」

「……私はなんでもいい」

 ミサキが興味なさそうな顔をして言った。

「うーん、そうだな……。私としては絶対『カオス』の文言は入れたいね! 『カオスの求道者たち』とかどう?」

 セネリーが得意げな顔をして言った。僕は普通にそれはないと思った。カオスの求道者って明らかに怪しい集団の匂いしかしないんですけど……。

「それはダサすぎ」

 ミサキがすかさずダメ出しを入れた。

「えぇ!? さっきなんでもいいって言ったじゃん! それじゃあ代案を出してよ代案を!」

 そう言ってセネリーはテーブルをバンバン叩く。

「………………じゃ、じゃあ、『迷える子猫たちの会』……とか」

 ミサキは少し小さな声でそう言った。……猫……かぁ。猫とか好きなのかな。

「……なんかすごく弱そうなんだけど」

「そ、そんなことない!」

「だいたいさ、そもそも迷える子猫とか全然冒険者っぽくないじゃん? 凶悪なモンスターが徘徊する未知のダンジョンに挑むのが冒険者だよ? 子猫ちゃんなんてお断りでしょ」

 セネリーがそう言ってやれやれと言った顔をする。

「!! ち、違う!! 別に子猫だって強いから!! というかカオスなんて意味不明な言葉を使うあなたよりよっぽどマシなんだけど!」

「な、なにおお!」

 その後、二人の間でよくわからない論争が続いた。セネリーはカオスとか暗黒みたいな中二病的ワードにこだわり、ミサキは猫とか迷子みたいなふわふわした感じのワードにこだわった。……これからこの三人でクランを運営していくわけなんだけど、最初からこんな感じで大丈夫なんだろうか。

 僕はそう思いつつ、頑張って場の雰囲気を和やかにしようと努めていた。


 ……結局、新しいクラン名については揉めに揉めてなかなか決まらなかった。僕は無難に三人の名前を取って『ユミセネ冒険者協会』とか『ユミセネ団』といった案を出したけど、二人には速攻で却下された。「普通に地味すぎるbyセネリー」とか「ユミセネという言葉が意味不明byミサキ」とかボロクソに言われて、僕は正直グサっと来た。

「……あーもう、これじゃあいつまで経っても決まらないよ! もうこうなったらみんなこれだけは絶対に入れたい!って言葉だけ出して、それをくっつけたものにしよう。多少変なのになってもいいからもうそれで決定で!」

 しびれを切らした僕はそう二人に提案した。

「……わかった」

「りょーかい」

 二人は僕の提案を了承した。

「じゃあ、『いっせーのーで』で行くよ? ……いっせーのーで!」

「カオス!」

「ねこ!」

「団!」

 …………。

 この時を持ってして、新しいクランの名前は『カオスねこ団』になった。さらに新クランのリーダーも決めることになったけど、ミサキが「絶対パス」と言い、セネリーが「そういうの私に務まると思う?」と言ったので消去法的に僕になった。

 僕は正直リーダーなんてやりたくなかったけど、このメンバーだとそんな僕ですら僕がやった方がいいかもと思うほどだったので渋々やることにした。

(なんだろう……この世界に来てからというもの、僕の負うべき責任が加速度的に増していっている気がする)

 僕は自分が普通の高校生活を送っていた現代がどんどん遠くなっていくのを感じた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役に転生した俺が、影の英雄ムーブを楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった

木嶋隆太
ファンタジー
ブラック企業の社畜だった俺は気が付けば異世界に転生していた。それも大好きだったゲームの悪役に……。このままでは将来主人公に殺されるという破滅の未来を迎えてしまうため、全力で強くなるための行動を開始する。ゲーム内知識を活かしながら、とにかく、筋トレ! 領民に嫌われたままも嫌なので、優しく! そんなことをしていると、俺の評価がどんどん上がっていっていき、気づけばどこに行っても褒められるような人間へとなっていた。そして、正体隠してあちこちで魔物を狩っていたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまい……おや? 様子がおかしいぞ?

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼

ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。 祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。 10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。 『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・ そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。 『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。 教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。 『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

処理中です...