「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太

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第一章

第20話 遠距離スキル

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 冒険都市エリュシウスに来て一ヶ月と少しが経った。冒険者生活にも慣れ、お金も貯まってきたので、僕はこの街に来て以来ずっと泊まっている宿から新しく部屋を借りて引っ越すことに決めた。

 僕は賃貸物件を扱っている業者の元に行き、部屋を探した。いくつかいい物件があったので内覧をして、そのうちの一つに決める。部屋を借りるのはこれが初めてのことだったけど、ミサキやセネリーから詳しいことは事前に聞いていたので、結構すんなりと事が運んだ。

 僕は業者を後にして帰り道についたけど、少し疲れたので街の広場にある喫茶店で休憩を取ることにした。ここのオレンジジュースとサンドイッチセットはとてもおいしく、僕のお気に入りだ。

 カウンター席でサンドイッチをもぐもぐ食べていると、広場の方から大きな騒ぎ声が聞こえた。何かと思って広場の方を見てみると、何やら冒険者っぽい格好の二つのグループが小競り合いを起こしている。そして、それを第三者と思われるグループが必死に止めていた。

(あのマークは……獅子の牙と這い寄る者たち……?)

 小競り合いを起こしている二つのグループはそれぞれ獅子の牙のマークと這い寄る者たちのマークが入った服を来ていた。両者を諌めているグループは白銀騎士団のマークを付けている。

「獅子の牙と這い寄る者たちか、相変わらずよくやるねぇ……」

 隣の席に座っていた男の人が呟くように言った。

「獅子の牙と這い寄る者たちって仲が悪いんですか?」

 僕は気になったのでちょっと聞いてみた。

「えっ? あ、ああ、仲は悪いよ。いつもどこかで小競り合いを起こしてるな」

「どうして仲が悪いんです?」

「んー、それはまぁ、クランの方針がお互い合わないってのもあるだろうけど、やっぱ一番の理由はそれぞれのクランのマスター同士が仲悪いからだろうな」

 クランのマスター……。そう言えば、以前に両方のクランを見学したときにはどちらでもマスターに会うことはなかったなと僕は思った。

「獅子の牙のマスターと這い寄る者たちのマスターってどんな人なんですか?」

「え? 君、見たことがないのかい?」

「はい。この街に来てまだ一ヶ月ちょっとぐらいなので……」

「そうか。獅子の牙のマスターは通称『鉄戦鬼ギルガー』、這い寄る者たちのマスターは通称『深淵の魔女ヴァジェヌ』っていうんだ。二人ともかなり癖が強い人間でね……ギルガーは熱血系戦士って感じで、ヴァジェヌは冷めてる大魔女って感じなんだけど、これがまた反りが合わなくてね」

 そう言って男の人は少し笑った。

「ついでに言っておくと、二人の間に入ってよく二人をなだめてる白銀騎士団のマスターがいるんだけど、彼は通称『神聖騎士ゼトス』って言われてる。この街ではこの三人は超有名人だからね。君もそのうちどこかで目にすると思うよ」

 ……男の人はそう言うと、カウンターの方へと姿勢を戻して店員の人に追加で飲み物を注文し始めた。僕は白銀騎士団には入らなかったけど、よく仲裁役をしているという神聖騎士ゼトスという人にはなんだか親近感を感じた。


 ――喫茶店で休憩した後は、僕はスキル店バルロシェへと向かった。店内に入るとバルロさんが「いらっしゃい」と声をかけてくる。

 僕が今日バルロシェに来たのは遠距離攻撃ができるスキルを身につけたいと思ったからだ。僕はランク2のダンジョンで火吹きイタチに遭遇したわけだけど、あの火炎攻撃はかなり厄介だった。剣で攻撃するには近づかないといけないけど、その分だけ火炎で焼かれる危険性は増す。

 あのときはミサキと一緒だったから片方が囮になったりすることでなんとかなったけど、一人だったらなかなか厳しいものがあっただろう。その経験から、僕は遠距離攻撃の重要性を痛感したのだった。

「えっと、遠距離攻撃系のスキルを探してるんですが、どんなのがありますか?」

 僕はそうバルロさんに尋ねる。

「遠距離攻撃? うーん、そうだな。剣だと斬撃を飛ばす系のスキルがあるけど、貴重だしかなり高いよ?」

 バルロさんはそう言っていくつかスキル書を棚から取り出し、僕に見せてくれた。ただ、どれも予算を桁違いに上回る額でとてもじゃないけど手が出なかった。僕がそのあまりの高さに目を点にしていると、バルロさんは笑って言った。

「すごい額でしょ? まぁ、ただでさえ剣は人気がある武器だからねぇ。その剣の貴重な放出系スキルとなると、モノによっては家が一軒立つぐらいの価格になったりすることもあるよ」

 バルロさんはそう言って肩をすくめる。僕は予想外の展開にどうすればいいか悩んだ。

(うーん、スキルじゃなくて弓矢の現物を買ってそれを持ち歩くか……)

 スキルと違って弓矢自体は値段的にそれほど高くはないだろう。ただ、実物の弓矢は持ち運ぶと結構な荷物になる。それに、僕は弓矢など扱ったことはないので、それなりに使えるようになるためにはかなりの練習も必要になると思う。それを考えると正直いいアイデアとは思えなかった。……何か別にいい方法はないだろうか。

「他に遠距離攻撃となると、そうだねぇ……弓矢を具現化するスキルはどうかな? 結構【精神力】を使うけど、持ち運ばなくていい分かなり楽だよ」

 弓矢を具現化……? 僕はその言葉を聞いて、それこそ僕が求めているものじゃないかと思った。

「それだと矢も好きなだけ具現化できるってことですか?」

「あぁ、もちろん。精神力のある限りね。一般的に【具現化系】のスキルは持ち運び要らずでとても便利なんだけど、その分だけ具現化したときの精神力の消耗が激しい。だから人気はそんなにないんだよね。値段もお手頃になってるよ」

 バルロさんはそう言って僕に【具現化:弓矢】のスキル書を見せてくれた。値段は確かにお手頃でさっき見せてもらった斬撃を飛ばす系スキルと比べると桁違いに安い。

「ところで君、今までに弓矢を扱った経験は?」

「……ないです」

「それなら一緒に【弓使いの心得】の購入がオススメだね。このスキルを使うと、レベルに応じて弓の技術が大幅に上がるんだよ。これさえあれば今日から君も凄腕の弓使いさ。……ま、レベルが低いとそんなに効果はないんだけど」

 バルロさんはそう言って【弓使いの心得】のスキル書をカウンターに置くと、さらに別のスキル書を取り出した。

「最後にこれもおすすめ。【魔力の矢】っていうんだけどね。このスキルを使うと魔力を矢に込めることができるんだ。込めた魔力の量によって矢の破壊力が大幅にアップするよ。基本レベルのスキルだけど、弓使いには必須と言ってもいいスキルだと思うよ」

 バルロさんはそう言いながら【魔力の矢】のスキル書を僕に見せる。

(なるほど、【具現化:弓矢】で弓矢を具現化して【弓使いの心得】を使い、命中精度を高めた上でさらに【魔力の矢】で魔力で強化した矢を撃つ感じか……)

 バルロさんは具現化スキルは精神力の消費が激しいと言っていたけれど、僕のレベル的に精神力は相当量あるはず。とすればこれはかなり僕向きでは……? 

 僕はそう考えながら、三つのスキル書の値段も吟味する。【具現化:弓矢】と【魔力の矢】の値段は安めだ。【弓使いの心得】はそこそこするけど、それでもそこまで高くない。三つあわせてもギリギリ予算の範囲内に収まる……。となればここは買い一択だ。

 僕は三つのスキルを買うことに決め、バルロさんに購入する旨を伝えた。

 そして、いつものように店内でスキルを身につけると、さっそく僕は自分に【識別】をかけた。


【識別結果】
 レベル:368
 スキル:【識別】【魅了攻撃】【受け流し】【魔力障壁】【具現化:弓矢】【弓使いの心得】【魔力の矢】


(………………【魔力障壁】?)

 識別結果には【魔力障壁】という見たことがないスキル名があった。名前的には多分結界のようなものを張るスキルなんだろうけど、僕はそのスキルを覚えた記憶はなかった。

(うーん、レベルが上がると何かスキルを覚えたりすることもあるとか?)

 僕はバルロさんに聞いてみようかと思い、バルロさんの方を伺うと、タイミングが悪いことにバルロさんは他の客の応対で忙しそうにしていた。客の応対が終わるのを待とうかとも思ったけど、閉店時間も近かったので僕はまた後で聞くことにした。僕は新たなスキルを覚えたということで楽しい気分で家路へとついた。
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