18 / 40
第一章
第18話 スキル【魅了攻撃】
しおりを挟む
後日、僕はミサキと一緒にランク2のダンジョンへと向かった。セネリーは留守番をして魔導具の研究をするとのことだった。ランク2のダンジョンはたくさんあったけど、僕たちが選んだのは街に一番近いもので、かつランク2の中でも攻略難度が低めのものだった。
現代でいうところのバスのように都市と都市をつなぐ馬車に乗ること数十分、僕たちはダンジョンに一番近い停留所で馬車を降りた。そこから少し歩くとダンジョンのある遺跡が見えてきた。
遺跡内にあるダンジョンへの地下階段を降りると、そこには最初の試練のときのように樹海が広がっていた。最初の試練のときのダンジョンと違うのは、こちらの方が少し明るく、騒がしいというところだろうか。
さっそくミサキが【索敵】を使い、周りを警戒しながら進んでいく。しばらく進むと、ミサキの【索敵】に反応があり、モンスターが僕たちの前に姿を現した。
「……【火吹きイタチ】か。――【識別】。……レベル11でスキル【火吹き】持ちと」
ミサキが目の前の小さな動物のようなモンスターを見て呟くように言った。火吹きというからには多分火を吐いてくるんだろう。
「ミサキ、ちょっと囮を頼めるかな? 前に覚えた【魅了攻撃】を使ってみたいんだ」
「……そういえばそんなこと言ってたね。わかった」
ミサキはそう言うと、左の方向から火吹きイタチに近づいていった。僕はそれを見て右方向から火吹きイタチに近づいていく。ミサキが十分に火吹きイタチに近づくと、火吹きイタチはミサキに向かって火を吐いた。ミサキを軽いステップで後ろに下がり、火を回避する。僕はそれを見て、火を吐いている火吹きイタチの背後に一気に近づいた。
「――【魅了攻撃】!」
僕はスキルを発動し、火吹きイタチに剣を軽くぷすっと刺す。すると火吹きイタチはその場に倒れた。しかし火吹きイタチはすぐに起き上がり、僕の方に近寄ってきて、なんと体を僕の足に擦り付けてきた! 僕は思わず「お、おお!」と感嘆の声を漏らした。どうやら【魅了攻撃】が成功したらしい。
魅了状態の火吹きイタチは完全に僕たちの味方になり、他のモンスターと戦うときに大いに役立った。僕は自分のレベルの高さが疑われないように、【魅了攻撃】をたまには発動せず失敗したりしながら、出会った他の火吹きイタチたちを魅了状態にしていった。火吹きイタチがさらに数匹、魅了状態になったときにはほとんど火吹きイタチだけでモンスターが倒せるようになっていた。
「――グオオオオ!」
六匹、七匹の火吹きイタチに囲まれて火を吹かれ、燃え盛る炎に身を包まれている【ホブゴブリン】が咆哮を上げる。
ホブゴブリンはゴブリンの上位種でレベルは15ほどだった。【身体強化】持ちで侮れない戦闘力を誇るが、動きが鈍く、動きの素早いイタチとは相性がとても悪かった。火炎に耐えきれなくなってホブゴブリンが逃げ出そうとしたところで、待ってましたと言わんばかりにミサキが死角から細剣をホブゴブリンの背中へと突き刺す。ホブゴブリンは倒れ、身体が離散して魔石へと変わった。
仲間になった火吹きイタチたちとのコンビネーションで僕たちはどんどんモンスターを倒していった。ホブゴブリンみたいな正面から戦うと手強いかもしれないモンスターも、火吹きイタチの火の攻撃さえあれば、楽勝なのだった。
加えて、そもそもミサキのレベルが30以上はあるわけだから、このランクのダンジョンのモンスターに苦戦することはなかった。
僕はもはや途中からただの魔石拾い係と化していた。
……数時間後、十分な魔石を手に入れたので僕たちはダンジョンから帰還することにした。魅了状態の火吹きイタチたちが何匹かその場にいたけど、そこで処理して魔石にした。今まで僕たちのために戦ってくれた火吹きイタチたちを倒すのにはかなり心が傷んだけど、連れて帰るわけにもいかないし、こうするしかなかった。
(【魅了攻撃】は便利だけど、ちょっと後味がよくないかもね……)
僕は、このスキルの利用は今後はできるだけ控えようと思った。
それから僕たちはダンジョンの入り口に向かって来た道を戻った。
「……【索敵】に反応あり。入り口に誰かいる」
ダンジョンの入口付近まで来ると、ミサキがそう言った。人が四人ほどいるらしい。
「僕たちと同じ冒険者かな?」
「……多分」
ダンジョン内で他の冒険者と遭遇するのは時々あることなので僕は特に気にしなかった。僕たちはそのまま入り口へと向かっていく。そして入り口の階段が見える開けた場所まで来ると、そこには見慣れない光景が広がっていた。
現代でいうところのバスのように都市と都市をつなぐ馬車に乗ること数十分、僕たちはダンジョンに一番近い停留所で馬車を降りた。そこから少し歩くとダンジョンのある遺跡が見えてきた。
遺跡内にあるダンジョンへの地下階段を降りると、そこには最初の試練のときのように樹海が広がっていた。最初の試練のときのダンジョンと違うのは、こちらの方が少し明るく、騒がしいというところだろうか。
さっそくミサキが【索敵】を使い、周りを警戒しながら進んでいく。しばらく進むと、ミサキの【索敵】に反応があり、モンスターが僕たちの前に姿を現した。
「……【火吹きイタチ】か。――【識別】。……レベル11でスキル【火吹き】持ちと」
ミサキが目の前の小さな動物のようなモンスターを見て呟くように言った。火吹きというからには多分火を吐いてくるんだろう。
「ミサキ、ちょっと囮を頼めるかな? 前に覚えた【魅了攻撃】を使ってみたいんだ」
「……そういえばそんなこと言ってたね。わかった」
ミサキはそう言うと、左の方向から火吹きイタチに近づいていった。僕はそれを見て右方向から火吹きイタチに近づいていく。ミサキが十分に火吹きイタチに近づくと、火吹きイタチはミサキに向かって火を吐いた。ミサキを軽いステップで後ろに下がり、火を回避する。僕はそれを見て、火を吐いている火吹きイタチの背後に一気に近づいた。
「――【魅了攻撃】!」
僕はスキルを発動し、火吹きイタチに剣を軽くぷすっと刺す。すると火吹きイタチはその場に倒れた。しかし火吹きイタチはすぐに起き上がり、僕の方に近寄ってきて、なんと体を僕の足に擦り付けてきた! 僕は思わず「お、おお!」と感嘆の声を漏らした。どうやら【魅了攻撃】が成功したらしい。
魅了状態の火吹きイタチは完全に僕たちの味方になり、他のモンスターと戦うときに大いに役立った。僕は自分のレベルの高さが疑われないように、【魅了攻撃】をたまには発動せず失敗したりしながら、出会った他の火吹きイタチたちを魅了状態にしていった。火吹きイタチがさらに数匹、魅了状態になったときにはほとんど火吹きイタチだけでモンスターが倒せるようになっていた。
「――グオオオオ!」
六匹、七匹の火吹きイタチに囲まれて火を吹かれ、燃え盛る炎に身を包まれている【ホブゴブリン】が咆哮を上げる。
ホブゴブリンはゴブリンの上位種でレベルは15ほどだった。【身体強化】持ちで侮れない戦闘力を誇るが、動きが鈍く、動きの素早いイタチとは相性がとても悪かった。火炎に耐えきれなくなってホブゴブリンが逃げ出そうとしたところで、待ってましたと言わんばかりにミサキが死角から細剣をホブゴブリンの背中へと突き刺す。ホブゴブリンは倒れ、身体が離散して魔石へと変わった。
仲間になった火吹きイタチたちとのコンビネーションで僕たちはどんどんモンスターを倒していった。ホブゴブリンみたいな正面から戦うと手強いかもしれないモンスターも、火吹きイタチの火の攻撃さえあれば、楽勝なのだった。
加えて、そもそもミサキのレベルが30以上はあるわけだから、このランクのダンジョンのモンスターに苦戦することはなかった。
僕はもはや途中からただの魔石拾い係と化していた。
……数時間後、十分な魔石を手に入れたので僕たちはダンジョンから帰還することにした。魅了状態の火吹きイタチたちが何匹かその場にいたけど、そこで処理して魔石にした。今まで僕たちのために戦ってくれた火吹きイタチたちを倒すのにはかなり心が傷んだけど、連れて帰るわけにもいかないし、こうするしかなかった。
(【魅了攻撃】は便利だけど、ちょっと後味がよくないかもね……)
僕は、このスキルの利用は今後はできるだけ控えようと思った。
それから僕たちはダンジョンの入り口に向かって来た道を戻った。
「……【索敵】に反応あり。入り口に誰かいる」
ダンジョンの入口付近まで来ると、ミサキがそう言った。人が四人ほどいるらしい。
「僕たちと同じ冒険者かな?」
「……多分」
ダンジョン内で他の冒険者と遭遇するのは時々あることなので僕は特に気にしなかった。僕たちはそのまま入り口へと向かっていく。そして入り口の階段が見える開けた場所まで来ると、そこには見慣れない光景が広がっていた。
53
お気に入りに追加
675
あなたにおすすめの小説

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜
ree
ファンタジー
古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教…人々の信仰により生まれる神々達に見守られる世界《地球》。そんな《地球》で信仰心を欠片も持っていなかなった主人公ー桜田凛。
沢山の深い傷を負い、表情と感情が乏しくならながらも懸命に生きていたが、ある日体調を壊し呆気なく亡くなってしまった。そんな彼女に神は新たな生を与え、異世界《エルムダルム》に転生した。
異世界《エルムダルム》は地球と違い、神の存在が当たり前の世界だった。一抹の不安を抱えながらもリーンとして生きていく中でその世界の個性豊かな人々との出会いや大きな事件を解決していく中で失いかけていた心を取り戻していくまでのお話。
新たな人生は、人生ではなく神生!?
チートな能力で愛が満ち溢れた生活!
新たな神生は素敵な物語の始まり。
小説家になろう。にも掲載しております。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる