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第一章
第18話 スキル【魅了攻撃】
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後日、僕はミサキと一緒にランク2のダンジョンへと向かった。セネリーは留守番をして魔導具の研究をするとのことだった。ランク2のダンジョンはたくさんあったけど、僕たちが選んだのは街に一番近いもので、かつランク2の中でも攻略難度が低めのものだった。
現代でいうところのバスのように都市と都市をつなぐ馬車に乗ること数十分、僕たちはダンジョンに一番近い停留所で馬車を降りた。そこから少し歩くとダンジョンのある遺跡が見えてきた。
遺跡内にあるダンジョンへの地下階段を降りると、そこには最初の試練のときのように樹海が広がっていた。最初の試練のときのダンジョンと違うのは、こちらの方が少し明るく、騒がしいというところだろうか。
さっそくミサキが【索敵】を使い、周りを警戒しながら進んでいく。しばらく進むと、ミサキの【索敵】に反応があり、モンスターが僕たちの前に姿を現した。
「……【火吹きイタチ】か。――【識別】。……レベル11でスキル【火吹き】持ちと」
ミサキが目の前の小さな動物のようなモンスターを見て呟くように言った。火吹きというからには多分火を吐いてくるんだろう。
「ミサキ、ちょっと囮を頼めるかな? 前に覚えた【魅了攻撃】を使ってみたいんだ」
「……そういえばそんなこと言ってたね。わかった」
ミサキはそう言うと、左の方向から火吹きイタチに近づいていった。僕はそれを見て右方向から火吹きイタチに近づいていく。ミサキが十分に火吹きイタチに近づくと、火吹きイタチはミサキに向かって火を吐いた。ミサキを軽いステップで後ろに下がり、火を回避する。僕はそれを見て、火を吐いている火吹きイタチの背後に一気に近づいた。
「――【魅了攻撃】!」
僕はスキルを発動し、火吹きイタチに剣を軽くぷすっと刺す。すると火吹きイタチはその場に倒れた。しかし火吹きイタチはすぐに起き上がり、僕の方に近寄ってきて、なんと体を僕の足に擦り付けてきた! 僕は思わず「お、おお!」と感嘆の声を漏らした。どうやら【魅了攻撃】が成功したらしい。
魅了状態の火吹きイタチは完全に僕たちの味方になり、他のモンスターと戦うときに大いに役立った。僕は自分のレベルの高さが疑われないように、【魅了攻撃】をたまには発動せず失敗したりしながら、出会った他の火吹きイタチたちを魅了状態にしていった。火吹きイタチがさらに数匹、魅了状態になったときにはほとんど火吹きイタチだけでモンスターが倒せるようになっていた。
「――グオオオオ!」
六匹、七匹の火吹きイタチに囲まれて火を吹かれ、燃え盛る炎に身を包まれている【ホブゴブリン】が咆哮を上げる。
ホブゴブリンはゴブリンの上位種でレベルは15ほどだった。【身体強化】持ちで侮れない戦闘力を誇るが、動きが鈍く、動きの素早いイタチとは相性がとても悪かった。火炎に耐えきれなくなってホブゴブリンが逃げ出そうとしたところで、待ってましたと言わんばかりにミサキが死角から細剣をホブゴブリンの背中へと突き刺す。ホブゴブリンは倒れ、身体が離散して魔石へと変わった。
仲間になった火吹きイタチたちとのコンビネーションで僕たちはどんどんモンスターを倒していった。ホブゴブリンみたいな正面から戦うと手強いかもしれないモンスターも、火吹きイタチの火の攻撃さえあれば、楽勝なのだった。
加えて、そもそもミサキのレベルが30以上はあるわけだから、このランクのダンジョンのモンスターに苦戦することはなかった。
僕はもはや途中からただの魔石拾い係と化していた。
……数時間後、十分な魔石を手に入れたので僕たちはダンジョンから帰還することにした。魅了状態の火吹きイタチたちが何匹かその場にいたけど、そこで処理して魔石にした。今まで僕たちのために戦ってくれた火吹きイタチたちを倒すのにはかなり心が傷んだけど、連れて帰るわけにもいかないし、こうするしかなかった。
(【魅了攻撃】は便利だけど、ちょっと後味がよくないかもね……)
僕は、このスキルの利用は今後はできるだけ控えようと思った。
それから僕たちはダンジョンの入り口に向かって来た道を戻った。
「……【索敵】に反応あり。入り口に誰かいる」
ダンジョンの入口付近まで来ると、ミサキがそう言った。人が四人ほどいるらしい。
「僕たちと同じ冒険者かな?」
「……多分」
ダンジョン内で他の冒険者と遭遇するのは時々あることなので僕は特に気にしなかった。僕たちはそのまま入り口へと向かっていく。そして入り口の階段が見える開けた場所まで来ると、そこには見慣れない光景が広がっていた。
現代でいうところのバスのように都市と都市をつなぐ馬車に乗ること数十分、僕たちはダンジョンに一番近い停留所で馬車を降りた。そこから少し歩くとダンジョンのある遺跡が見えてきた。
遺跡内にあるダンジョンへの地下階段を降りると、そこには最初の試練のときのように樹海が広がっていた。最初の試練のときのダンジョンと違うのは、こちらの方が少し明るく、騒がしいというところだろうか。
さっそくミサキが【索敵】を使い、周りを警戒しながら進んでいく。しばらく進むと、ミサキの【索敵】に反応があり、モンスターが僕たちの前に姿を現した。
「……【火吹きイタチ】か。――【識別】。……レベル11でスキル【火吹き】持ちと」
ミサキが目の前の小さな動物のようなモンスターを見て呟くように言った。火吹きというからには多分火を吐いてくるんだろう。
「ミサキ、ちょっと囮を頼めるかな? 前に覚えた【魅了攻撃】を使ってみたいんだ」
「……そういえばそんなこと言ってたね。わかった」
ミサキはそう言うと、左の方向から火吹きイタチに近づいていった。僕はそれを見て右方向から火吹きイタチに近づいていく。ミサキが十分に火吹きイタチに近づくと、火吹きイタチはミサキに向かって火を吐いた。ミサキを軽いステップで後ろに下がり、火を回避する。僕はそれを見て、火を吐いている火吹きイタチの背後に一気に近づいた。
「――【魅了攻撃】!」
僕はスキルを発動し、火吹きイタチに剣を軽くぷすっと刺す。すると火吹きイタチはその場に倒れた。しかし火吹きイタチはすぐに起き上がり、僕の方に近寄ってきて、なんと体を僕の足に擦り付けてきた! 僕は思わず「お、おお!」と感嘆の声を漏らした。どうやら【魅了攻撃】が成功したらしい。
魅了状態の火吹きイタチは完全に僕たちの味方になり、他のモンスターと戦うときに大いに役立った。僕は自分のレベルの高さが疑われないように、【魅了攻撃】をたまには発動せず失敗したりしながら、出会った他の火吹きイタチたちを魅了状態にしていった。火吹きイタチがさらに数匹、魅了状態になったときにはほとんど火吹きイタチだけでモンスターが倒せるようになっていた。
「――グオオオオ!」
六匹、七匹の火吹きイタチに囲まれて火を吹かれ、燃え盛る炎に身を包まれている【ホブゴブリン】が咆哮を上げる。
ホブゴブリンはゴブリンの上位種でレベルは15ほどだった。【身体強化】持ちで侮れない戦闘力を誇るが、動きが鈍く、動きの素早いイタチとは相性がとても悪かった。火炎に耐えきれなくなってホブゴブリンが逃げ出そうとしたところで、待ってましたと言わんばかりにミサキが死角から細剣をホブゴブリンの背中へと突き刺す。ホブゴブリンは倒れ、身体が離散して魔石へと変わった。
仲間になった火吹きイタチたちとのコンビネーションで僕たちはどんどんモンスターを倒していった。ホブゴブリンみたいな正面から戦うと手強いかもしれないモンスターも、火吹きイタチの火の攻撃さえあれば、楽勝なのだった。
加えて、そもそもミサキのレベルが30以上はあるわけだから、このランクのダンジョンのモンスターに苦戦することはなかった。
僕はもはや途中からただの魔石拾い係と化していた。
……数時間後、十分な魔石を手に入れたので僕たちはダンジョンから帰還することにした。魅了状態の火吹きイタチたちが何匹かその場にいたけど、そこで処理して魔石にした。今まで僕たちのために戦ってくれた火吹きイタチたちを倒すのにはかなり心が傷んだけど、連れて帰るわけにもいかないし、こうするしかなかった。
(【魅了攻撃】は便利だけど、ちょっと後味がよくないかもね……)
僕は、このスキルの利用は今後はできるだけ控えようと思った。
それから僕たちはダンジョンの入り口に向かって来た道を戻った。
「……【索敵】に反応あり。入り口に誰かいる」
ダンジョンの入口付近まで来ると、ミサキがそう言った。人が四人ほどいるらしい。
「僕たちと同じ冒険者かな?」
「……多分」
ダンジョン内で他の冒険者と遭遇するのは時々あることなので僕は特に気にしなかった。僕たちはそのまま入り口へと向かっていく。そして入り口の階段が見える開けた場所まで来ると、そこには見慣れない光景が広がっていた。
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