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第一章
第14話 新クラン
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最後のクランは『這い寄る者たち』だ。もう名前からしてヤバい感じだけど、それでも三大クランの一角ということで一応訪れてみることにした。
這い寄る者たちの本部は獅子の牙や白銀騎士団と違って、街のかなり外れの方にあった。建物自体はそこそこ大きかったけど、お世辞にも立派とは言えず、ボロボロで壁には蔦がたくさん絡みついていた。中は昼でも薄暗く、どことなく陰鬱な雰囲気だった。
僕は例によって受付で見学の許可をもらうと、その辺で休憩している這い寄る者たち所属のぱっと見怪しそうな人たちに声をかける。
「……えっ、這い寄る者たちに興味があるって? そうなんだ。でも、特に話すことはないかな。雰囲気でだいたいどんな場所かわかるでしょ……?」
「……話すことはない。俺に話しかけるな……」
「ねぇ、君ぃ、ちょっと僕が作ったポーションの実験台にならない? ねぇ、ちょっと飲むだけでいいからさぁ?」
「私のかわいいスケルトンちゃん軍団でモンスターを蹂躙してやるんだぁ……」
……会話をしてみて僕は色々と察した。ここは奇人変人の集まりか何かかな? なんとなくだけど、他のクランで受け入れられなかった人がここに集結しているような気がした。一応、近くに訓練場があったので訓練場にも足を伸ばしてみる。
――訓練場にはほとんど人がいなかった。いる人も訓練というよりは何やら怪しげな召喚の儀式をしていたり、ただ笑いながらその辺を人形と一緒に歩いているだけだった。……訓練場というよりは遊戯場だなと僕は思った。
(ここは獅子の牙や白銀騎士団とはまた別の方向で尖りすぎている……。とてもじゃないけど馴染める気がしない……)
僕はそう思い、そそくさとそのまま這い寄る者たち本部を出た。
予想以上に三大クランが微妙だったので、僕は他のクランを検討することにした。三大クラン以外となると規模はぐっと落ちるけど、この際わがままは言っていられない。ただ、僕は三大クラン以外のクランの情報はほとんど持っていなかったので、そうしたクランの情報を得るためにとりあえず冒険者ギルドへと向かうことにした。
冒険者ギルドに向かって通りを歩いていると、僕はちょっとしたいざこざの現場に遭遇した。中年ぐらいの男と僕と同じぐらいの年に見える女の子が、建物の入り口の前で何やら口論をしていたのだ。女の子は眼鏡をかけていて、魔術師というか奇術師のような奇抜なローブを纏っていた。現代だと真っ先に中二病が疑われそうな格好だった。
「もううんざりだッ! セネリー、お前には今日限りでこのクランをやめてもらう!」
「ふん、ちょっと魔導具が暴発しただけだろっ! それぐらいでそんなに怒ることないじゃないか!」
「そんなに怒ることなんだよッ! お前の行動にはいい加減、他のメンバーも迷惑してる! クランマスターである俺の言うことも全然聞かないしな! そんなやつにこのクランにいる資格はない! さぁ、さっさと出て行け!」
「……後で後悔しても知らないからな!」
女の子はそう言うと颯爽と身をひるがえし、こちらの方に向かって歩いて来る。僕はなんとなく目を合わせないようにして女の子とすれ違った。女の子はちらっとこちらを見たけど、特に気に何もなく歩き去っていった。
……なんだったんだろう、さっきのは。僕は少し気になりつつも、振り返ることなくそのまま通りを歩いていった。
その後、僕は冒険者ギルドに到着し、多くの中小クランの情報が貼ってある掲示板をチェックし始めた。周りには僕と同じような新人風の冒険者がいて、同じように掲示板の張り紙をチェックしている。
……と、そのとき後ろから聞き覚えのある声がした。
「……クランを探してるんだ?」
僕が声の方に振り向くと、そこにはミサキが立っていた。
「あ、ミサキ! ……う、うん、そうだよ。どこかいいクランはないかと思ってさ」
「……三大クランはもう回った?」
「一応、回ったよ……。ただ、僕にはちょっと合わなくて……」
僕は少しゴニョゴニョしつつも正直に言った。
「そう……私も、同じ」
ミサキはうつむきがちにそう言った。僕は「あ、そうなんだ……」と返事をした。僕は少しその場に気まずい空気が流れたのを感じた。
「……提案があるんだけど」
ミサキはそう言ってこちらを上目がちに見る。
「な、何?」
「……新しいクラン、私たちで一緒に作らない?」
「……え、ええええ!?」
僕はミサキの言葉に驚き、思わず素っ頓狂な声を出した。
「クランは冒険者が最低3人いれば新しく作ることができるの。私、知らない人がたくさんいるところは苦手だけど、君は知ってるから安心だし……。あと誰か一人ぐらいなら耐えられるかなって」
ミサキはそう言った。……あー、そういうことか。確かにミサキってかなり人見知りしそうだし、そういう発想が出てもおかしくないかも……。
(うーん、新しいクランかぁ……。面白そうだとは思うけど、さすがに初心者がいきなり新しいクランを作るってのはどうだろう……)
僕は、正直ミサキの提案はかなり無理があると思った。最初はどこかのクランに所属して先輩冒険者から色々と教えてもらったほうが絶対効率がいいし、安心感がある。
「え、えっと、悪いんだけどさ、僕たちで新しいクランを作るのは正直無理が――」
「君が初めて私の前に現れた時、私は君を街まで案内してあげたよね。あのとき、もし私が君を放置していたら、君は今ごろ野垂れ死んでいたかもしれない」
「…………」
「ここで私の提案を受け入れないのは恩を仇で返すようなものだと思うんだけど」
「…………」
「君がそこまで恩知らずな人間だとは――」
「わ、わわ、わかったよっ!! 新しいクランを作ればいいんでしょ、作ればっ!!」
僕は耐えきれずにそう言ってしまった。ミサキは最初からそう言えばいいのにというような顔をして、笑みを浮かべながらこちらを見た。
這い寄る者たちの本部は獅子の牙や白銀騎士団と違って、街のかなり外れの方にあった。建物自体はそこそこ大きかったけど、お世辞にも立派とは言えず、ボロボロで壁には蔦がたくさん絡みついていた。中は昼でも薄暗く、どことなく陰鬱な雰囲気だった。
僕は例によって受付で見学の許可をもらうと、その辺で休憩している這い寄る者たち所属のぱっと見怪しそうな人たちに声をかける。
「……えっ、這い寄る者たちに興味があるって? そうなんだ。でも、特に話すことはないかな。雰囲気でだいたいどんな場所かわかるでしょ……?」
「……話すことはない。俺に話しかけるな……」
「ねぇ、君ぃ、ちょっと僕が作ったポーションの実験台にならない? ねぇ、ちょっと飲むだけでいいからさぁ?」
「私のかわいいスケルトンちゃん軍団でモンスターを蹂躙してやるんだぁ……」
……会話をしてみて僕は色々と察した。ここは奇人変人の集まりか何かかな? なんとなくだけど、他のクランで受け入れられなかった人がここに集結しているような気がした。一応、近くに訓練場があったので訓練場にも足を伸ばしてみる。
――訓練場にはほとんど人がいなかった。いる人も訓練というよりは何やら怪しげな召喚の儀式をしていたり、ただ笑いながらその辺を人形と一緒に歩いているだけだった。……訓練場というよりは遊戯場だなと僕は思った。
(ここは獅子の牙や白銀騎士団とはまた別の方向で尖りすぎている……。とてもじゃないけど馴染める気がしない……)
僕はそう思い、そそくさとそのまま這い寄る者たち本部を出た。
予想以上に三大クランが微妙だったので、僕は他のクランを検討することにした。三大クラン以外となると規模はぐっと落ちるけど、この際わがままは言っていられない。ただ、僕は三大クラン以外のクランの情報はほとんど持っていなかったので、そうしたクランの情報を得るためにとりあえず冒険者ギルドへと向かうことにした。
冒険者ギルドに向かって通りを歩いていると、僕はちょっとしたいざこざの現場に遭遇した。中年ぐらいの男と僕と同じぐらいの年に見える女の子が、建物の入り口の前で何やら口論をしていたのだ。女の子は眼鏡をかけていて、魔術師というか奇術師のような奇抜なローブを纏っていた。現代だと真っ先に中二病が疑われそうな格好だった。
「もううんざりだッ! セネリー、お前には今日限りでこのクランをやめてもらう!」
「ふん、ちょっと魔導具が暴発しただけだろっ! それぐらいでそんなに怒ることないじゃないか!」
「そんなに怒ることなんだよッ! お前の行動にはいい加減、他のメンバーも迷惑してる! クランマスターである俺の言うことも全然聞かないしな! そんなやつにこのクランにいる資格はない! さぁ、さっさと出て行け!」
「……後で後悔しても知らないからな!」
女の子はそう言うと颯爽と身をひるがえし、こちらの方に向かって歩いて来る。僕はなんとなく目を合わせないようにして女の子とすれ違った。女の子はちらっとこちらを見たけど、特に気に何もなく歩き去っていった。
……なんだったんだろう、さっきのは。僕は少し気になりつつも、振り返ることなくそのまま通りを歩いていった。
その後、僕は冒険者ギルドに到着し、多くの中小クランの情報が貼ってある掲示板をチェックし始めた。周りには僕と同じような新人風の冒険者がいて、同じように掲示板の張り紙をチェックしている。
……と、そのとき後ろから聞き覚えのある声がした。
「……クランを探してるんだ?」
僕が声の方に振り向くと、そこにはミサキが立っていた。
「あ、ミサキ! ……う、うん、そうだよ。どこかいいクランはないかと思ってさ」
「……三大クランはもう回った?」
「一応、回ったよ……。ただ、僕にはちょっと合わなくて……」
僕は少しゴニョゴニョしつつも正直に言った。
「そう……私も、同じ」
ミサキはうつむきがちにそう言った。僕は「あ、そうなんだ……」と返事をした。僕は少しその場に気まずい空気が流れたのを感じた。
「……提案があるんだけど」
ミサキはそう言ってこちらを上目がちに見る。
「な、何?」
「……新しいクラン、私たちで一緒に作らない?」
「……え、ええええ!?」
僕はミサキの言葉に驚き、思わず素っ頓狂な声を出した。
「クランは冒険者が最低3人いれば新しく作ることができるの。私、知らない人がたくさんいるところは苦手だけど、君は知ってるから安心だし……。あと誰か一人ぐらいなら耐えられるかなって」
ミサキはそう言った。……あー、そういうことか。確かにミサキってかなり人見知りしそうだし、そういう発想が出てもおかしくないかも……。
(うーん、新しいクランかぁ……。面白そうだとは思うけど、さすがに初心者がいきなり新しいクランを作るってのはどうだろう……)
僕は、正直ミサキの提案はかなり無理があると思った。最初はどこかのクランに所属して先輩冒険者から色々と教えてもらったほうが絶対効率がいいし、安心感がある。
「え、えっと、悪いんだけどさ、僕たちで新しいクランを作るのは正直無理が――」
「君が初めて私の前に現れた時、私は君を街まで案内してあげたよね。あのとき、もし私が君を放置していたら、君は今ごろ野垂れ死んでいたかもしれない」
「…………」
「ここで私の提案を受け入れないのは恩を仇で返すようなものだと思うんだけど」
「…………」
「君がそこまで恩知らずな人間だとは――」
「わ、わわ、わかったよっ!! 新しいクランを作ればいいんでしょ、作ればっ!!」
僕は耐えきれずにそう言ってしまった。ミサキは最初からそう言えばいいのにというような顔をして、笑みを浮かべながらこちらを見た。
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