14 / 40
第一章
第14話 新クラン
しおりを挟む
最後のクランは『這い寄る者たち』だ。もう名前からしてヤバい感じだけど、それでも三大クランの一角ということで一応訪れてみることにした。
這い寄る者たちの本部は獅子の牙や白銀騎士団と違って、街のかなり外れの方にあった。建物自体はそこそこ大きかったけど、お世辞にも立派とは言えず、ボロボロで壁には蔦がたくさん絡みついていた。中は昼でも薄暗く、どことなく陰鬱な雰囲気だった。
僕は例によって受付で見学の許可をもらうと、その辺で休憩している這い寄る者たち所属のぱっと見怪しそうな人たちに声をかける。
「……えっ、這い寄る者たちに興味があるって? そうなんだ。でも、特に話すことはないかな。雰囲気でだいたいどんな場所かわかるでしょ……?」
「……話すことはない。俺に話しかけるな……」
「ねぇ、君ぃ、ちょっと僕が作ったポーションの実験台にならない? ねぇ、ちょっと飲むだけでいいからさぁ?」
「私のかわいいスケルトンちゃん軍団でモンスターを蹂躙してやるんだぁ……」
……会話をしてみて僕は色々と察した。ここは奇人変人の集まりか何かかな? なんとなくだけど、他のクランで受け入れられなかった人がここに集結しているような気がした。一応、近くに訓練場があったので訓練場にも足を伸ばしてみる。
――訓練場にはほとんど人がいなかった。いる人も訓練というよりは何やら怪しげな召喚の儀式をしていたり、ただ笑いながらその辺を人形と一緒に歩いているだけだった。……訓練場というよりは遊戯場だなと僕は思った。
(ここは獅子の牙や白銀騎士団とはまた別の方向で尖りすぎている……。とてもじゃないけど馴染める気がしない……)
僕はそう思い、そそくさとそのまま這い寄る者たち本部を出た。
予想以上に三大クランが微妙だったので、僕は他のクランを検討することにした。三大クラン以外となると規模はぐっと落ちるけど、この際わがままは言っていられない。ただ、僕は三大クラン以外のクランの情報はほとんど持っていなかったので、そうしたクランの情報を得るためにとりあえず冒険者ギルドへと向かうことにした。
冒険者ギルドに向かって通りを歩いていると、僕はちょっとしたいざこざの現場に遭遇した。中年ぐらいの男と僕と同じぐらいの年に見える女の子が、建物の入り口の前で何やら口論をしていたのだ。女の子は眼鏡をかけていて、魔術師というか奇術師のような奇抜なローブを纏っていた。現代だと真っ先に中二病が疑われそうな格好だった。
「もううんざりだッ! セネリー、お前には今日限りでこのクランをやめてもらう!」
「ふん、ちょっと魔導具が暴発しただけだろっ! それぐらいでそんなに怒ることないじゃないか!」
「そんなに怒ることなんだよッ! お前の行動にはいい加減、他のメンバーも迷惑してる! クランマスターである俺の言うことも全然聞かないしな! そんなやつにこのクランにいる資格はない! さぁ、さっさと出て行け!」
「……後で後悔しても知らないからな!」
女の子はそう言うと颯爽と身をひるがえし、こちらの方に向かって歩いて来る。僕はなんとなく目を合わせないようにして女の子とすれ違った。女の子はちらっとこちらを見たけど、特に気に何もなく歩き去っていった。
……なんだったんだろう、さっきのは。僕は少し気になりつつも、振り返ることなくそのまま通りを歩いていった。
その後、僕は冒険者ギルドに到着し、多くの中小クランの情報が貼ってある掲示板をチェックし始めた。周りには僕と同じような新人風の冒険者がいて、同じように掲示板の張り紙をチェックしている。
……と、そのとき後ろから聞き覚えのある声がした。
「……クランを探してるんだ?」
僕が声の方に振り向くと、そこにはミサキが立っていた。
「あ、ミサキ! ……う、うん、そうだよ。どこかいいクランはないかと思ってさ」
「……三大クランはもう回った?」
「一応、回ったよ……。ただ、僕にはちょっと合わなくて……」
僕は少しゴニョゴニョしつつも正直に言った。
「そう……私も、同じ」
ミサキはうつむきがちにそう言った。僕は「あ、そうなんだ……」と返事をした。僕は少しその場に気まずい空気が流れたのを感じた。
「……提案があるんだけど」
ミサキはそう言ってこちらを上目がちに見る。
「な、何?」
「……新しいクラン、私たちで一緒に作らない?」
「……え、ええええ!?」
僕はミサキの言葉に驚き、思わず素っ頓狂な声を出した。
「クランは冒険者が最低3人いれば新しく作ることができるの。私、知らない人がたくさんいるところは苦手だけど、君は知ってるから安心だし……。あと誰か一人ぐらいなら耐えられるかなって」
ミサキはそう言った。……あー、そういうことか。確かにミサキってかなり人見知りしそうだし、そういう発想が出てもおかしくないかも……。
(うーん、新しいクランかぁ……。面白そうだとは思うけど、さすがに初心者がいきなり新しいクランを作るってのはどうだろう……)
僕は、正直ミサキの提案はかなり無理があると思った。最初はどこかのクランに所属して先輩冒険者から色々と教えてもらったほうが絶対効率がいいし、安心感がある。
「え、えっと、悪いんだけどさ、僕たちで新しいクランを作るのは正直無理が――」
「君が初めて私の前に現れた時、私は君を街まで案内してあげたよね。あのとき、もし私が君を放置していたら、君は今ごろ野垂れ死んでいたかもしれない」
「…………」
「ここで私の提案を受け入れないのは恩を仇で返すようなものだと思うんだけど」
「…………」
「君がそこまで恩知らずな人間だとは――」
「わ、わわ、わかったよっ!! 新しいクランを作ればいいんでしょ、作ればっ!!」
僕は耐えきれずにそう言ってしまった。ミサキは最初からそう言えばいいのにというような顔をして、笑みを浮かべながらこちらを見た。
這い寄る者たちの本部は獅子の牙や白銀騎士団と違って、街のかなり外れの方にあった。建物自体はそこそこ大きかったけど、お世辞にも立派とは言えず、ボロボロで壁には蔦がたくさん絡みついていた。中は昼でも薄暗く、どことなく陰鬱な雰囲気だった。
僕は例によって受付で見学の許可をもらうと、その辺で休憩している這い寄る者たち所属のぱっと見怪しそうな人たちに声をかける。
「……えっ、這い寄る者たちに興味があるって? そうなんだ。でも、特に話すことはないかな。雰囲気でだいたいどんな場所かわかるでしょ……?」
「……話すことはない。俺に話しかけるな……」
「ねぇ、君ぃ、ちょっと僕が作ったポーションの実験台にならない? ねぇ、ちょっと飲むだけでいいからさぁ?」
「私のかわいいスケルトンちゃん軍団でモンスターを蹂躙してやるんだぁ……」
……会話をしてみて僕は色々と察した。ここは奇人変人の集まりか何かかな? なんとなくだけど、他のクランで受け入れられなかった人がここに集結しているような気がした。一応、近くに訓練場があったので訓練場にも足を伸ばしてみる。
――訓練場にはほとんど人がいなかった。いる人も訓練というよりは何やら怪しげな召喚の儀式をしていたり、ただ笑いながらその辺を人形と一緒に歩いているだけだった。……訓練場というよりは遊戯場だなと僕は思った。
(ここは獅子の牙や白銀騎士団とはまた別の方向で尖りすぎている……。とてもじゃないけど馴染める気がしない……)
僕はそう思い、そそくさとそのまま這い寄る者たち本部を出た。
予想以上に三大クランが微妙だったので、僕は他のクランを検討することにした。三大クラン以外となると規模はぐっと落ちるけど、この際わがままは言っていられない。ただ、僕は三大クラン以外のクランの情報はほとんど持っていなかったので、そうしたクランの情報を得るためにとりあえず冒険者ギルドへと向かうことにした。
冒険者ギルドに向かって通りを歩いていると、僕はちょっとしたいざこざの現場に遭遇した。中年ぐらいの男と僕と同じぐらいの年に見える女の子が、建物の入り口の前で何やら口論をしていたのだ。女の子は眼鏡をかけていて、魔術師というか奇術師のような奇抜なローブを纏っていた。現代だと真っ先に中二病が疑われそうな格好だった。
「もううんざりだッ! セネリー、お前には今日限りでこのクランをやめてもらう!」
「ふん、ちょっと魔導具が暴発しただけだろっ! それぐらいでそんなに怒ることないじゃないか!」
「そんなに怒ることなんだよッ! お前の行動にはいい加減、他のメンバーも迷惑してる! クランマスターである俺の言うことも全然聞かないしな! そんなやつにこのクランにいる資格はない! さぁ、さっさと出て行け!」
「……後で後悔しても知らないからな!」
女の子はそう言うと颯爽と身をひるがえし、こちらの方に向かって歩いて来る。僕はなんとなく目を合わせないようにして女の子とすれ違った。女の子はちらっとこちらを見たけど、特に気に何もなく歩き去っていった。
……なんだったんだろう、さっきのは。僕は少し気になりつつも、振り返ることなくそのまま通りを歩いていった。
その後、僕は冒険者ギルドに到着し、多くの中小クランの情報が貼ってある掲示板をチェックし始めた。周りには僕と同じような新人風の冒険者がいて、同じように掲示板の張り紙をチェックしている。
……と、そのとき後ろから聞き覚えのある声がした。
「……クランを探してるんだ?」
僕が声の方に振り向くと、そこにはミサキが立っていた。
「あ、ミサキ! ……う、うん、そうだよ。どこかいいクランはないかと思ってさ」
「……三大クランはもう回った?」
「一応、回ったよ……。ただ、僕にはちょっと合わなくて……」
僕は少しゴニョゴニョしつつも正直に言った。
「そう……私も、同じ」
ミサキはうつむきがちにそう言った。僕は「あ、そうなんだ……」と返事をした。僕は少しその場に気まずい空気が流れたのを感じた。
「……提案があるんだけど」
ミサキはそう言ってこちらを上目がちに見る。
「な、何?」
「……新しいクラン、私たちで一緒に作らない?」
「……え、ええええ!?」
僕はミサキの言葉に驚き、思わず素っ頓狂な声を出した。
「クランは冒険者が最低3人いれば新しく作ることができるの。私、知らない人がたくさんいるところは苦手だけど、君は知ってるから安心だし……。あと誰か一人ぐらいなら耐えられるかなって」
ミサキはそう言った。……あー、そういうことか。確かにミサキってかなり人見知りしそうだし、そういう発想が出てもおかしくないかも……。
(うーん、新しいクランかぁ……。面白そうだとは思うけど、さすがに初心者がいきなり新しいクランを作るってのはどうだろう……)
僕は、正直ミサキの提案はかなり無理があると思った。最初はどこかのクランに所属して先輩冒険者から色々と教えてもらったほうが絶対効率がいいし、安心感がある。
「え、えっと、悪いんだけどさ、僕たちで新しいクランを作るのは正直無理が――」
「君が初めて私の前に現れた時、私は君を街まで案内してあげたよね。あのとき、もし私が君を放置していたら、君は今ごろ野垂れ死んでいたかもしれない」
「…………」
「ここで私の提案を受け入れないのは恩を仇で返すようなものだと思うんだけど」
「…………」
「君がそこまで恩知らずな人間だとは――」
「わ、わわ、わかったよっ!! 新しいクランを作ればいいんでしょ、作ればっ!!」
僕は耐えきれずにそう言ってしまった。ミサキは最初からそう言えばいいのにというような顔をして、笑みを浮かべながらこちらを見た。
59
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

賢者の幼馴染との中を引き裂かれた無職の少年、真の力をひた隠し、スローライフ? を楽しみます!
織侍紗(@'ω'@)ん?
ファンタジー
ルーチェ村に住む少年アインス。幼い頃両親を亡くしたアインスは幼馴染の少女プラムやその家族たちと仲良く過ごしていた。そして今年で十二歳になるアインスはプラムと共に近くの町にある学園へと通うことになる。
そこではまず初めにこの世界に生きる全ての存在が持つ職位というものを調べるのだが、そこでアインスはこの世界に存在するはずのない無職であるということがわかる。またプラムは賢者だということがわかったため、王都の学園へと離れ離れになってしまう。
その夜、アインスは自身に前世があることを思い出す。アインスは前世で嫌な上司に手柄を奪われ、リストラされたあげく無職となって死んだところを、女神のノリと嫌がらせで無職にさせられた転生者だった。
そして妖精と呼ばれる存在より、自身のことを聞かされる。それは、無職と言うのはこの世界に存在しない職位の為、この世界がアインスに気づくことが出来ない。だから、転生者に対しての調整機構が働かない、という状況だった。
アインスは聞き流す程度でしか話を聞いていなかったが、その力は軽く天災級の魔法を繰り出し、時の流れが遅くなってしまうくらいの亜光速で動き回り、貴重な魔導具を呼吸をするように簡単に創り出すことが出来るほどであった。ただ、争いやその力の希少性が公になることを極端に嫌ったアインスは、そのチート過ぎる能力を全力にバレない方向に使うのである。
これはそんな彼が前世の知識と無職の圧倒的な力を使いながら、仲間たちとスローライフを楽しむ物語である。
以前、掲載していた作品をリメイクしての再掲載です。ちょっと書きたくなったのでちまちま書いていきます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

身体強化って、何気にチートじゃないですか!?
ルーグイウル
ファンタジー
病弱で寝たきりの少年「立原隆人」はある日他界する。そんな彼の意志に残ったのは『もっと強い体が欲しい』。
そんな彼の意志と強靭な魂は世界の壁を越え異世界へとたどり着く。でも目覚めたのは真っ暗なダンジョンの奥地で…?
これは異世界で新たな肉体を得た立原隆人-リュートがパワーレベリングして得たぶっ飛んだレベルとチートっぽいスキルをひっさげアヴァロンを王道ルートまっしぐら、テンプレート通りに謳歌する物語。
初投稿作品です。つたない文章だと思いますが温かい目で見ていただけたらと思います。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる