「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太

文字の大きさ
上 下
2 / 40
第一章

第2話 レベルアップの実

しおりを挟む
――気がつくと僕は何やら庭園のようなところに立っていた。穏やかな陽光がとても眩しく感じる。周りには緑の瑞々しい木々が生えていて、小鳥が楽しそうにさえずっている。

(ここが、異世界……? なんだか思ってたのと少し違うような……)

 雰囲気的には異世界というよりも、楽園とか聖域と言った感じの場所だった。その辺に妖精がいても不思議じゃない気がする。

――ふと、胸のあたりに違和感を覚えたので、胸ポケットを探ってみると、そこにはじゃらじゃらと硬貨が入った小さな袋があった。中を開けてみると、見慣れない銀貨や金貨のようなものがたくさん入っている。これが女神の人が言っていた異世界でのお金だろうか。

 さらに自分の着ている服を見てみると、今まで着ていた現代風の服とは全然違う中世っぽい感じの服になっていた。……多分、現代風の服装だと色々とまずいので、きっと女神の人が変えてくれたんだろう。こういうところは意外と親切なんだなと僕は思った。

 僕はお金の入った袋をポケットに戻し、とりあえず周りをよく観察してみた。すると、近くに小道があって、それは奥へと続いていた。

(この道をたどっていけば何かあるかも……?)

 僕はそう考え、道なりに進むことにした。


……少し歩くと、他の木々とは違う特徴をした大きな樹木が目に入った。枝にはさくらんぼのような赤い実が付いている。実は鮮やかでつやがあって、とてもおいしそうだった。

 僕は少し空腹を感じていたこともあったので、その実を食べてみることにした。周りには誰もいないし、ちょっとぐらいならいいだろう。

 僕は手を伸ばして実を取り、恐る恐る口に含んでみる。

(!!……すごくおいしい!!)

 正直言って、今まで食べてきたどの果物よりもおいしく感じた。それは言葉では言い表せないほどで、果物でこれほどの幸福感を覚えたことはないと言えるほどだった。僕はその美味に耐えきれず、次々と実を取って食べた。

(異世界の果実ってすごいなぁ。これが毎日食べられるなら、もうそれだけで幸せいっぱいなんじゃないだろうか)

 僕は赤い実をまじまじと見ながらそう思った。


 その後、十分に実を食べてお腹もいっぱいになったところで僕はまた道を歩き出した。さっきの実の効果かわからないけど、なんだか体中に活力が溢れている感じがした。身体も心なしか軽くなったような気がする。

 しばらく歩くと、僕は大きな祭壇がある広場のような場所へと出た。祭壇の上では一人の神官のような格好をした女の人が何やら祈りをささげていた。

(あ、人がいる……)

 異世界に来て初めての人との遭遇だった。現状、この世界についてわかっていることは何もないので、僕はこの世界について色々と聞くために女の人のもとへと近づいていった。すると、足音で気づいたのか、彼女はこちらの方へと顔を向けた。

「!! 何者です!!」

 彼女はかなり驚いた顔をしてそう叫んだ。

「あ、あの、僕は色々あってここに飛ばされてきた者で特に怪しい者ではないです!」

 僕はそう言って、敵意がないことを伝えるためにとりあえず両手を軽く上げる。

「……人間、か? ……ここは禁断の聖域。人間が足を踏み入れていい場所ではありません。どうやってこの場所に入ってきたのですか? 今すぐ立ち去りなさい!」

 そう言って彼女はこちらを睨む。僕は頑張って彼女に事情を説明しようとした。

「え、えっと、ここに来たのは女神の人に飛ばされたせいで……その、どうやって来たのかはわからないんです! あの、ここってもう異世界ですよね?」

 自分でも何を言ってるのかよくわからないと思ったけど、うまく言葉が出てこなかった。

「……女神? 異世界? 何を言っているのか全く意味がわかりません。しかし、あなたがここから出ていく方法がわからないというのであれば、私が教えてあげましょう」

 彼女はそう言ってそばに置いてあった杖を手に取り、こちらに向ける。そして彼女は何やら呪文を唱え始めた。あ、これは問答無用ってやつだと僕は思った。

「あ、ちょっ、待っ――」

 そう言いかけたのもつかの間、僕はまたしても光に包まれ、目の前が真っ白になったのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...