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第一章
第2話 レベルアップの実
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――気がつくと僕は何やら庭園のようなところに立っていた。穏やかな陽光がとても眩しく感じる。周りには緑の瑞々しい木々が生えていて、小鳥が楽しそうにさえずっている。
(ここが、異世界……? なんだか思ってたのと少し違うような……)
雰囲気的には異世界というよりも、楽園とか聖域と言った感じの場所だった。その辺に妖精がいても不思議じゃない気がする。
――ふと、胸のあたりに違和感を覚えたので、胸ポケットを探ってみると、そこにはじゃらじゃらと硬貨が入った小さな袋があった。中を開けてみると、見慣れない銀貨や金貨のようなものがたくさん入っている。これが女神の人が言っていた異世界でのお金だろうか。
さらに自分の着ている服を見てみると、今まで着ていた現代風の服とは全然違う中世っぽい感じの服になっていた。……多分、現代風の服装だと色々とまずいので、きっと女神の人が変えてくれたんだろう。こういうところは意外と親切なんだなと僕は思った。
僕はお金の入った袋をポケットに戻し、とりあえず周りをよく観察してみた。すると、近くに小道があって、それは奥へと続いていた。
(この道をたどっていけば何かあるかも……?)
僕はそう考え、道なりに進むことにした。
……少し歩くと、他の木々とは違う特徴をした大きな樹木が目に入った。枝にはさくらんぼのような赤い実が付いている。実は鮮やかでつやがあって、とてもおいしそうだった。
僕は少し空腹を感じていたこともあったので、その実を食べてみることにした。周りには誰もいないし、ちょっとぐらいならいいだろう。
僕は手を伸ばして実を取り、恐る恐る口に含んでみる。
(!!……すごくおいしい!!)
正直言って、今まで食べてきたどの果物よりもおいしく感じた。それは言葉では言い表せないほどで、果物でこれほどの幸福感を覚えたことはないと言えるほどだった。僕はその美味に耐えきれず、次々と実を取って食べた。
(異世界の果実ってすごいなぁ。これが毎日食べられるなら、もうそれだけで幸せいっぱいなんじゃないだろうか)
僕は赤い実をまじまじと見ながらそう思った。
その後、十分に実を食べてお腹もいっぱいになったところで僕はまた道を歩き出した。さっきの実の効果かわからないけど、なんだか体中に活力が溢れている感じがした。身体も心なしか軽くなったような気がする。
しばらく歩くと、僕は大きな祭壇がある広場のような場所へと出た。祭壇の上では一人の神官のような格好をした女の人が何やら祈りをささげていた。
(あ、人がいる……)
異世界に来て初めての人との遭遇だった。現状、この世界についてわかっていることは何もないので、僕はこの世界について色々と聞くために女の人のもとへと近づいていった。すると、足音で気づいたのか、彼女はこちらの方へと顔を向けた。
「!! 何者です!!」
彼女はかなり驚いた顔をしてそう叫んだ。
「あ、あの、僕は色々あってここに飛ばされてきた者で特に怪しい者ではないです!」
僕はそう言って、敵意がないことを伝えるためにとりあえず両手を軽く上げる。
「……人間、か? ……ここは禁断の聖域。人間が足を踏み入れていい場所ではありません。どうやってこの場所に入ってきたのですか? 今すぐ立ち去りなさい!」
そう言って彼女はこちらを睨む。僕は頑張って彼女に事情を説明しようとした。
「え、えっと、ここに来たのは女神の人に飛ばされたせいで……その、どうやって来たのかはわからないんです! あの、ここってもう異世界ですよね?」
自分でも何を言ってるのかよくわからないと思ったけど、うまく言葉が出てこなかった。
「……女神? 異世界? 何を言っているのか全く意味がわかりません。しかし、あなたがここから出ていく方法がわからないというのであれば、私が教えてあげましょう」
彼女はそう言ってそばに置いてあった杖を手に取り、こちらに向ける。そして彼女は何やら呪文を唱え始めた。あ、これは問答無用ってやつだと僕は思った。
「あ、ちょっ、待っ――」
そう言いかけたのもつかの間、僕はまたしても光に包まれ、目の前が真っ白になったのだった。
(ここが、異世界……? なんだか思ってたのと少し違うような……)
雰囲気的には異世界というよりも、楽園とか聖域と言った感じの場所だった。その辺に妖精がいても不思議じゃない気がする。
――ふと、胸のあたりに違和感を覚えたので、胸ポケットを探ってみると、そこにはじゃらじゃらと硬貨が入った小さな袋があった。中を開けてみると、見慣れない銀貨や金貨のようなものがたくさん入っている。これが女神の人が言っていた異世界でのお金だろうか。
さらに自分の着ている服を見てみると、今まで着ていた現代風の服とは全然違う中世っぽい感じの服になっていた。……多分、現代風の服装だと色々とまずいので、きっと女神の人が変えてくれたんだろう。こういうところは意外と親切なんだなと僕は思った。
僕はお金の入った袋をポケットに戻し、とりあえず周りをよく観察してみた。すると、近くに小道があって、それは奥へと続いていた。
(この道をたどっていけば何かあるかも……?)
僕はそう考え、道なりに進むことにした。
……少し歩くと、他の木々とは違う特徴をした大きな樹木が目に入った。枝にはさくらんぼのような赤い実が付いている。実は鮮やかでつやがあって、とてもおいしそうだった。
僕は少し空腹を感じていたこともあったので、その実を食べてみることにした。周りには誰もいないし、ちょっとぐらいならいいだろう。
僕は手を伸ばして実を取り、恐る恐る口に含んでみる。
(!!……すごくおいしい!!)
正直言って、今まで食べてきたどの果物よりもおいしく感じた。それは言葉では言い表せないほどで、果物でこれほどの幸福感を覚えたことはないと言えるほどだった。僕はその美味に耐えきれず、次々と実を取って食べた。
(異世界の果実ってすごいなぁ。これが毎日食べられるなら、もうそれだけで幸せいっぱいなんじゃないだろうか)
僕は赤い実をまじまじと見ながらそう思った。
その後、十分に実を食べてお腹もいっぱいになったところで僕はまた道を歩き出した。さっきの実の効果かわからないけど、なんだか体中に活力が溢れている感じがした。身体も心なしか軽くなったような気がする。
しばらく歩くと、僕は大きな祭壇がある広場のような場所へと出た。祭壇の上では一人の神官のような格好をした女の人が何やら祈りをささげていた。
(あ、人がいる……)
異世界に来て初めての人との遭遇だった。現状、この世界についてわかっていることは何もないので、僕はこの世界について色々と聞くために女の人のもとへと近づいていった。すると、足音で気づいたのか、彼女はこちらの方へと顔を向けた。
「!! 何者です!!」
彼女はかなり驚いた顔をしてそう叫んだ。
「あ、あの、僕は色々あってここに飛ばされてきた者で特に怪しい者ではないです!」
僕はそう言って、敵意がないことを伝えるためにとりあえず両手を軽く上げる。
「……人間、か? ……ここは禁断の聖域。人間が足を踏み入れていい場所ではありません。どうやってこの場所に入ってきたのですか? 今すぐ立ち去りなさい!」
そう言って彼女はこちらを睨む。僕は頑張って彼女に事情を説明しようとした。
「え、えっと、ここに来たのは女神の人に飛ばされたせいで……その、どうやって来たのかはわからないんです! あの、ここってもう異世界ですよね?」
自分でも何を言ってるのかよくわからないと思ったけど、うまく言葉が出てこなかった。
「……女神? 異世界? 何を言っているのか全く意味がわかりません。しかし、あなたがここから出ていく方法がわからないというのであれば、私が教えてあげましょう」
彼女はそう言ってそばに置いてあった杖を手に取り、こちらに向ける。そして彼女は何やら呪文を唱え始めた。あ、これは問答無用ってやつだと僕は思った。
「あ、ちょっ、待っ――」
そう言いかけたのもつかの間、僕はまたしても光に包まれ、目の前が真っ白になったのだった。
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