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「な……んで、一之助が……」と驚きながら俺は、尋ねた。
一之助は「江戸の町は危ないな」と苦笑交じりに言った。そして、一之助に手を差し出された俺は、一之助の手を掴み立ち上がった。
「せっかく湯屋に行ったのに、意味なかったな」と笑いながら話しかける一之助に俺は、あぁ。と返事をした。
「俺、菊さんのとこに馬を返しに行ってくるよ」と言う一之助に俺は、「一人で大丈夫か?」と尋ねた。
俺の尋ねに一之助は満面の笑みで「あぁ!!この馬は温厚だからな!さっき暴れたのは何かに驚いたんだろう!」と言うと、一之助は商人に紐を借り、馬の首に紐をかけると来た道を戻っていった。
俺は、一之助と馬の影がなくなるまで呆然と立っていた。そして、江戸の町にはまた賑わいが戻った。
「………………。」
上の空で歩いていると、いつの間にか家に着いていた。俺は、玄関の扉を開けると木の棒で扉を固定した。
家の中へはいると、ひんやりと冷たい空気が頬に触れる。「寒いな……」と呟き、身震いをすると俺は、居間へ行き羽織を着た。
先程までの、記憶を思い返す。
もしあの時、一之助が来なかったら怪我だけじゃすまかっただろう。想像をするだけでもゾッとした。
「もう想像するのはやめよう……」
これ以上のことは考えたくなかった。
俺は、火鉢に火をつけると暖をとった。
「…………。」
ボーッと火鉢を見ていると、誰かが俺の家の扉をドンドンと叩く音がした。
「…………」
元々出る気などなかった俺は、その場を動かずただただ火鉢を見ていた。
だが、扉を叩く音は、一向に止まない。ドンドンドンドンドンと次第に扉を激しく叩く。
俺は、あまりのしつこさにその場から立ち上がり、玄関の扉を固定していた棒をとると、扉を勢いよく開けた。
「誰だよ?」
不機嫌気味に言い扉を開けると、貸本屋の玄さんが立っていた。
「やぁ、宗介くん。」と嗄れた声で俺の名前を呼ぶ。
「玄さんか……。外は寒いから中に入って、」と玄さんを招き入れた。そして俺は、玄さんにどんな本があるかを聞いた。
「面白い本や人情本、春画、衆道の本を揃えているぞ」と自慢げに本を差し出してきた玄さんに俺は、とりあえず面白い本を借りる事にした。
「宗介くん、春画はいいのかい?」と玄さんは冗談交じりで言ってきた。
「興奮するのか?」と冗談交じりに言うと玄さんは「勿論じゃないか!」と言い、春画を渡して来た。
「え…………ちょ、……」と戸惑っていると、玄さんは「お代はまけとくよ」と言ってきた。
そして、お代をはらい終えた俺は、玄さんを玄関から見送ったあと春画と面白い本を抱えて、火鉢の所へと行く。
「春画、初めて見るな……」
昔、浅黄さんが隠し持っていたがそんなに面白いのか?と思いながら、表紙をめくる。
一之助は「江戸の町は危ないな」と苦笑交じりに言った。そして、一之助に手を差し出された俺は、一之助の手を掴み立ち上がった。
「せっかく湯屋に行ったのに、意味なかったな」と笑いながら話しかける一之助に俺は、あぁ。と返事をした。
「俺、菊さんのとこに馬を返しに行ってくるよ」と言う一之助に俺は、「一人で大丈夫か?」と尋ねた。
俺の尋ねに一之助は満面の笑みで「あぁ!!この馬は温厚だからな!さっき暴れたのは何かに驚いたんだろう!」と言うと、一之助は商人に紐を借り、馬の首に紐をかけると来た道を戻っていった。
俺は、一之助と馬の影がなくなるまで呆然と立っていた。そして、江戸の町にはまた賑わいが戻った。
「………………。」
上の空で歩いていると、いつの間にか家に着いていた。俺は、玄関の扉を開けると木の棒で扉を固定した。
家の中へはいると、ひんやりと冷たい空気が頬に触れる。「寒いな……」と呟き、身震いをすると俺は、居間へ行き羽織を着た。
先程までの、記憶を思い返す。
もしあの時、一之助が来なかったら怪我だけじゃすまかっただろう。想像をするだけでもゾッとした。
「もう想像するのはやめよう……」
これ以上のことは考えたくなかった。
俺は、火鉢に火をつけると暖をとった。
「…………。」
ボーッと火鉢を見ていると、誰かが俺の家の扉をドンドンと叩く音がした。
「…………」
元々出る気などなかった俺は、その場を動かずただただ火鉢を見ていた。
だが、扉を叩く音は、一向に止まない。ドンドンドンドンドンと次第に扉を激しく叩く。
俺は、あまりのしつこさにその場から立ち上がり、玄関の扉を固定していた棒をとると、扉を勢いよく開けた。
「誰だよ?」
不機嫌気味に言い扉を開けると、貸本屋の玄さんが立っていた。
「やぁ、宗介くん。」と嗄れた声で俺の名前を呼ぶ。
「玄さんか……。外は寒いから中に入って、」と玄さんを招き入れた。そして俺は、玄さんにどんな本があるかを聞いた。
「面白い本や人情本、春画、衆道の本を揃えているぞ」と自慢げに本を差し出してきた玄さんに俺は、とりあえず面白い本を借りる事にした。
「宗介くん、春画はいいのかい?」と玄さんは冗談交じりで言ってきた。
「興奮するのか?」と冗談交じりに言うと玄さんは「勿論じゃないか!」と言い、春画を渡して来た。
「え…………ちょ、……」と戸惑っていると、玄さんは「お代はまけとくよ」と言ってきた。
そして、お代をはらい終えた俺は、玄さんを玄関から見送ったあと春画と面白い本を抱えて、火鉢の所へと行く。
「春画、初めて見るな……」
昔、浅黄さんが隠し持っていたがそんなに面白いのか?と思いながら、表紙をめくる。
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