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そして、一之助は俺から顔を離し、周りに聞こえる様に大袈裟に話し出す。
「それにしても、江戸の町は寒いなぁ~」と、俺に話を振ってきた。
「あ…あぁ。」と動揺が隠せない俺に、一之助は口パクで「繋げろ」と言ってきた。それで俺は、納得し話題を考えて話し始めた。
「一之助も、大坂の方はどうだったんだ?」と伝えると、一之助は「江戸ほどではないが大坂も寒かったな~」と笑いながら話す。
「無事に帰って来れて良かったな」と一之助に微笑むと、満面の笑みで「あぁ!!」と返された。
話を終えたあと、温かい湯に浸かる俺と一之助。
「温かいなー」と気持ち良さそうに言う一之助。
「あぁ。外の寒さが吹き飛びそうだ。」と気持ちよさげにそう言うと、一之助は俺の肩に頭をコテンと預けた。
「一之助……?…どうしたんだ?」
「いゃ……気分は良くなったかぁ?」と先程の出来事の話をする。
「あぁ。一之助のおかげで助かったよ…。ありがとうな」と言うと、一之助は嬉しそうに「そうかそうかぁー」と微笑んだ。
「一之助には、助けられてばかりだな」と苦笑交じりに一之助に聞こえない様呟いた。
そして、しばらく温まったあと俺は立ち上がり一之助に「もう上がるな」と言うと扉を開け、出る。
一之助の「もう出るのか!?」と言う声に俺は頷いた。
脱衣の所へ行くと、布で身体を適当に拭くと、浴衣を着た。男たちの視線はあったものの、気を強く持った。全部着終えると俺は、足早に湯屋を出た。
「……っ!?」
湯屋を出て家へ帰ろうとしていた時、喜介と浅黄さんの姿が見えた。二人とも湯屋へ行く所だろう。
俺は、気づかれない様細い路地へ身を隠した。
幸いにも、浅黄さんと喜介には見つからなかった。
ホッと胸をなで下ろすと、俺は路地を出て走って家に帰る。
「ハァハァハァ……ハァ」俺は、ものの数分で息切れになった。家まではまだある。後ろを振り返るが、町人や商人が歩いているだけだった。俺は、走った時に乱れた浴衣に目もくれず家に帰る。
「…………」
足早に歩いていると、何だか後ろが騒がしくなり始める。
後ろが気になり、振り向くと馬が勢いよく走ってきていた。このままではぶつかると思い、俺は端に避けた。だが、混乱中の町人にぶつかってしまい、俺は前に出てしまった。
「……っ!」急いで立ち上がろうとしたが、もう目の前に馬がいた。
……死ぬ!と思い目を瞑った時、馬が止まった。
「大丈夫か!?宗介!!」と声が上から降ってきた。
「…………ぇ……?」と思い、見上げるとそこには焦った様子の一之助がいた。
「……な……んで、」
一之助は、俺の前に立ちはだかって馬を止めていた。そして、草を食べさせていた。
「怪我はないか!?」
「あぁ、」
「馬は…………、菊さんのところか」と言っている一之助に俺は、驚きを隠せなかった。
「それにしても、江戸の町は寒いなぁ~」と、俺に話を振ってきた。
「あ…あぁ。」と動揺が隠せない俺に、一之助は口パクで「繋げろ」と言ってきた。それで俺は、納得し話題を考えて話し始めた。
「一之助も、大坂の方はどうだったんだ?」と伝えると、一之助は「江戸ほどではないが大坂も寒かったな~」と笑いながら話す。
「無事に帰って来れて良かったな」と一之助に微笑むと、満面の笑みで「あぁ!!」と返された。
話を終えたあと、温かい湯に浸かる俺と一之助。
「温かいなー」と気持ち良さそうに言う一之助。
「あぁ。外の寒さが吹き飛びそうだ。」と気持ちよさげにそう言うと、一之助は俺の肩に頭をコテンと預けた。
「一之助……?…どうしたんだ?」
「いゃ……気分は良くなったかぁ?」と先程の出来事の話をする。
「あぁ。一之助のおかげで助かったよ…。ありがとうな」と言うと、一之助は嬉しそうに「そうかそうかぁー」と微笑んだ。
「一之助には、助けられてばかりだな」と苦笑交じりに一之助に聞こえない様呟いた。
そして、しばらく温まったあと俺は立ち上がり一之助に「もう上がるな」と言うと扉を開け、出る。
一之助の「もう出るのか!?」と言う声に俺は頷いた。
脱衣の所へ行くと、布で身体を適当に拭くと、浴衣を着た。男たちの視線はあったものの、気を強く持った。全部着終えると俺は、足早に湯屋を出た。
「……っ!?」
湯屋を出て家へ帰ろうとしていた時、喜介と浅黄さんの姿が見えた。二人とも湯屋へ行く所だろう。
俺は、気づかれない様細い路地へ身を隠した。
幸いにも、浅黄さんと喜介には見つからなかった。
ホッと胸をなで下ろすと、俺は路地を出て走って家に帰る。
「ハァハァハァ……ハァ」俺は、ものの数分で息切れになった。家まではまだある。後ろを振り返るが、町人や商人が歩いているだけだった。俺は、走った時に乱れた浴衣に目もくれず家に帰る。
「…………」
足早に歩いていると、何だか後ろが騒がしくなり始める。
後ろが気になり、振り向くと馬が勢いよく走ってきていた。このままではぶつかると思い、俺は端に避けた。だが、混乱中の町人にぶつかってしまい、俺は前に出てしまった。
「……っ!」急いで立ち上がろうとしたが、もう目の前に馬がいた。
……死ぬ!と思い目を瞑った時、馬が止まった。
「大丈夫か!?宗介!!」と声が上から降ってきた。
「…………ぇ……?」と思い、見上げるとそこには焦った様子の一之助がいた。
「……な……んで、」
一之助は、俺の前に立ちはだかって馬を止めていた。そして、草を食べさせていた。
「怪我はないか!?」
「あぁ、」
「馬は…………、菊さんのところか」と言っている一之助に俺は、驚きを隠せなかった。
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