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「ん…。」
俺は、熱の苦しさで目を覚ました。
顔から首だけを動かし、周囲を見回すが、家の中はシンと静まり返っている。
「……」
浅黄さんが来たと思ったが俺の夢か…。
俺は、上体を起こし外の空気を吸いに行こうと立ち上がるが、足に上手く力が入らずよろけてしまった。
「……。」
俺は、柱に掴まり立ち上がる。
そして羽織りを着ると、ゆっくりと縁側へ行く。
ガラガラー
縁側の戸を開けると、空が暗く、月が酷く明るかった。
それに今は冬の季節。風がひんやりと冷たかった。
俺は、縁側の戸を開けたままその場に座り込み、月を眺めた。
「ゴホッゴホッ…」
鳴り止まぬ咳を片手で抑えながら、少し身震いをした。
そして、「……喜介…」と気付かぬうちに口が喜介の名を呼んでいた。
俺は、慌てて口を抑えた。
「……熱でおかしくなったんだ…きっと、…そうだ」と俺は、自分に言い聞かせた。
喜介は今頃、吉原で遊女と戯れているんだろうな…。と独りで想像をした。
その事を考える度に俺の胸は、ズキズキと張り裂けそうに痛み出す。
「まるで、俺がアイツの事を、好きみたいじゃねーか…。」と嘲笑いながら、俺は胸を抑えた。
そしてー
熱に苛まれていた俺の身体は治り始め、数日後には完全に治っていた。
「もうあんなに、苦しい風邪は引きたくねーな…」と苦笑気味に呟いた。
「……熱も治った事だし、久々に湯屋でも行くか」
一人で行くのは流石に、抵抗があった為、浅黄さんを誘おうと思い外へ出た。
戸を開けて外へ出ると、風が強く吹いている。
「涼しいが…寒いな…」と身を縮め身震いをした。
俺は、浅黄さんがいる道場へと足を運んだ。
「…今日も、稽古か…?」と呟きながら、道場の門を潜り縁側へ行った。
縁側へ行く途中、騒がしく、楽しそうな声が聞こえてきた。
「賑やかだな…」と呟き、早足で縁側へ行くと、浅黄さんと一之介……それに喜介がいた。
俺は、足を止めた。
「………。」
喜介は、浅黄さんと一之介と一緒に話している。
3人とも楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
「……帰るか…。」
そう自分でも驚くほど小さな声で呟いた。
引き返そうとした時、草履が地面と擦れ、音を立てた。
浅黄さん達は音に反応したのか、俺の方へ近付いてきた。
「お、宗介!風邪は治ったのか?」と話しかけてきた浅黄さん。
浅黄さんの声は大きく、一之介や喜介の所まで聞こえた。
「宗介!?」と立ち上がる一之介。
「宗介さん!」と俺の顔を見た瞬間、安堵した様子の喜介。
「ッ……。」
今、喜介には会いたくなかった…。
「宗介ぇぇぇぇ!!!」とこちらに走ってきて、俺に抱きつく一之介。
「お…おぅ」と返事をし、一之介の頭を撫でる俺。
「宗介風邪を引いたと浅黄さんから聞いたが風邪は大丈夫なのか!?!?」と俺を見上げる一之介。
「あぁ、大丈夫だ。」と言い、一之介に微笑む。
すると、一之介は俺の様子に安堵して俺の着物に顔をうずめた。
俺は、熱の苦しさで目を覚ました。
顔から首だけを動かし、周囲を見回すが、家の中はシンと静まり返っている。
「……」
浅黄さんが来たと思ったが俺の夢か…。
俺は、上体を起こし外の空気を吸いに行こうと立ち上がるが、足に上手く力が入らずよろけてしまった。
「……。」
俺は、柱に掴まり立ち上がる。
そして羽織りを着ると、ゆっくりと縁側へ行く。
ガラガラー
縁側の戸を開けると、空が暗く、月が酷く明るかった。
それに今は冬の季節。風がひんやりと冷たかった。
俺は、縁側の戸を開けたままその場に座り込み、月を眺めた。
「ゴホッゴホッ…」
鳴り止まぬ咳を片手で抑えながら、少し身震いをした。
そして、「……喜介…」と気付かぬうちに口が喜介の名を呼んでいた。
俺は、慌てて口を抑えた。
「……熱でおかしくなったんだ…きっと、…そうだ」と俺は、自分に言い聞かせた。
喜介は今頃、吉原で遊女と戯れているんだろうな…。と独りで想像をした。
その事を考える度に俺の胸は、ズキズキと張り裂けそうに痛み出す。
「まるで、俺がアイツの事を、好きみたいじゃねーか…。」と嘲笑いながら、俺は胸を抑えた。
そしてー
熱に苛まれていた俺の身体は治り始め、数日後には完全に治っていた。
「もうあんなに、苦しい風邪は引きたくねーな…」と苦笑気味に呟いた。
「……熱も治った事だし、久々に湯屋でも行くか」
一人で行くのは流石に、抵抗があった為、浅黄さんを誘おうと思い外へ出た。
戸を開けて外へ出ると、風が強く吹いている。
「涼しいが…寒いな…」と身を縮め身震いをした。
俺は、浅黄さんがいる道場へと足を運んだ。
「…今日も、稽古か…?」と呟きながら、道場の門を潜り縁側へ行った。
縁側へ行く途中、騒がしく、楽しそうな声が聞こえてきた。
「賑やかだな…」と呟き、早足で縁側へ行くと、浅黄さんと一之介……それに喜介がいた。
俺は、足を止めた。
「………。」
喜介は、浅黄さんと一之介と一緒に話している。
3人とも楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
「……帰るか…。」
そう自分でも驚くほど小さな声で呟いた。
引き返そうとした時、草履が地面と擦れ、音を立てた。
浅黄さん達は音に反応したのか、俺の方へ近付いてきた。
「お、宗介!風邪は治ったのか?」と話しかけてきた浅黄さん。
浅黄さんの声は大きく、一之介や喜介の所まで聞こえた。
「宗介!?」と立ち上がる一之介。
「宗介さん!」と俺の顔を見た瞬間、安堵した様子の喜介。
「ッ……。」
今、喜介には会いたくなかった…。
「宗介ぇぇぇぇ!!!」とこちらに走ってきて、俺に抱きつく一之介。
「お…おぅ」と返事をし、一之介の頭を撫でる俺。
「宗介風邪を引いたと浅黄さんから聞いたが風邪は大丈夫なのか!?!?」と俺を見上げる一之介。
「あぁ、大丈夫だ。」と言い、一之介に微笑む。
すると、一之介は俺の様子に安堵して俺の着物に顔をうずめた。
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