上 下
14 / 39

13

しおりを挟む
縁側で陽にあたり、俺はボーッと道場の庭を眺めた。
 殺風景な庭は、雑草しか生えていない。
「………。」
ソッと片手で頬をつねる。
「夢じゃ…ねーんだな…。」とボソリと呟く。
喜介は何であんな世辞を言ったのか、重苦しい空気を断ち切る為についた嘘なのか、嫌味なのか、考えれば考えるほど悪い方向に持っていってしまう。
「はぁ……」少し肩を落とし溜息をつく。

するとー

バシンッ

背後から木刀が俺の頭に振ってきた。
「痛ってぇぇ…!!」と涙目で頭を抑えながら、俺は後ろを振り返った。
「よぉ!元気は出たか?」と呑気に挨拶をしてくる。
「浅黄さん…」
「隣いいか?」と浅黄さんは尋ねてきた。
「………あぁ。」と未だにズキズキする頭を抑えながら、俺は道場の庭に目を戻した。
「そんなに痛かったか?」とヘラヘラしながら聞いてくる浅黄さんに俺は無視をした。
「ハハハッ!悪い悪い!」と浅黄さんは笑いながら謝った。
「面白くねー…」
「すまんすまん」と少し笑みを零しながら、俺の頭をわしゃわしゃと優しく撫でた。
「嬉しくない…」
「そうか??これで少しは頭の痛みも治まると思ったんだがな~」と言ってくる浅黄さん。
「……。」独り言の様に言っている浅黄さんを無視し、俺はまた庭に目を戻した。
そして、ふと後ろを振り返る。
「なぁ、浅黄さん…」
「ん?どうした?」
「喜介は?」
「あぁ、なんか…汗かいたから湯屋に行ってくると言っていたが…」
「そうか…」
「今日、飲みに行くんだろ?」と聞いてきた浅黄さん。
「あぁ…なんで浅黄さんが知ってるんだ?」
「喜介が嬉しそうに、俺に言ってきたからよー。」
「嬉しそうに…?」
「あぁ。とっても嬉しそうだったぞ!」
「なんでだ?」
「さぁ…?俺は、あんな喜介初めて見たな~」と腕を組みながら思い返している浅黄さん。
 なんで、俺と飲みに行くのがそんなに嬉しいんだ?という疑問が俺の中で膨れ上がった。
「宗助」と、浅黄さんに呼ばれ俺は返事をした。
「なんだ?」
「宗助も、汗かいてんだろ?湯屋に行ってきたらどうだ?」
「汗はかいたが、拭けば問題ないだろ。飲みに行くだけなんだから…。」
「じゃー、喜介に言っとかないとなー」
「??…何をだ?」
「宗助は酒癖が悪いから気を付けるんだぞ…ってな!」
「そこまで、酷くはねーよ!」と浅黄さんに強く反論した。
「嘘だよ嘘だよ。」と無邪気な笑顔で浅黄さんは言ってきた。
「酷くは…ねーけど、記憶がなくなる程度だ…。」と素直に話した。
「そうかそうか~」と浅黄さんは腕を組んだまま、胡座をかき、うんうんと納得した様に頷いていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

ガテンの処理事情

BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。 ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。

処理中です...