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数分間、浅黄さんは俺の事を男に語っていた。
 そして、浅黄さんから全て話を聞いた男は目をキラキラさせながら、こっちに向かって走ってきた。
「宗助さんは凄いですね!!強いんですね!!」
「弱いんだけど……」
に見えて実はあるんですね!!」

カチンッ
 俺はその言葉に腹を立てた。
だが我慢する。

俺は笑顔で問いかける。 
「喜介くん?それはどういう意味かな?」
「なんていうか、道場に来た時の身なりからして貧弱そうだなと思ったんです。」
「喜介くんは鍛えてるの?」
「はい!!鍛えてないと風邪にかかりやすくなると教えられてきたので!」
「そうかい。でも、鍛えすぎて逆に頭を悪くしない様程々に頑張ってね?」と嫌味を加えて言うと、男は満面の笑みで「はい!」と返事をした。

俺は、正直男の笑顔にイラッときた。

「浅黄さん」俺は浅黄さんの名前を呼んだ。
「ん?どうした?」と俺と男の会話を笑顔で聞いていた浅黄さんは微笑みながら返事をした。
「今から飲みに付き合ってくれないか?」
「あぁ!いいが、稽古はいいのか?」
「……する気分じゃなくなった。」というと浅黄さんは俺の言葉の意味を察したのか「分かった。」と笑顔で頷いてくれた。

「すぐ片付け始めるから縁側で待っててくれ!」と言われたので俺は「分かった。」と返事をした。
 そして、縁側で道場の庭をボーッと眺めていると隣に誰かが座ってきた。
「先程は失礼な事を言ってすいませんでした。」と思わぬ言葉が飛んできたので俺は驚き横をバッと向いた。
「……反省…してんだ。」
「してましたよ。と言われるのが嫌なんですか?」
「……嫌だ。」と子供みたいに頬を膨らませると隣から笑い声が聞こえてきた。

「………。なんで笑ったの?」
「プッ……なんか…ククッ…子供みたいだなと思い…フククッ…まして…」
「……。」
「すいませんでしたー」と冗談交じりに謝ってきた。
「……お前、俺を見た目で判断したんだろ?」
「喜介って呼んでくださいよ…。
 ……まぁ、確かに見た目で判断してました。」
「……俺だって筋肉ぐらい人並みにあるよ…。」
「そうですか……ハハッ」とまた笑い出す喜介。
「やっぱ喜介嫌いだわ…」俺がそう言うと喜介は驚いた。
「えええぇ!?でも僕は宗助さん好きですよ?」
「やめろ。俺は男色に興味がねーんだ。」
「それは、今だけですよ…。」と喜介が俯きながら何かを呟いたが、俺はうまく聞き取れず「え?」と聞き返した。
「っ…なんでもないですよ!!」と手首をブンブンと左右に振る。
「これから、浅黄さんと何処に行くんですか?」
「飲みに行こうと思ってる。」
「何処の食事屋ですか?」
ていうところだが?」
「そうなんですか!」と納得している。
「………。」俺は、俯いて黙っている喜介の顎をクイッとあげる。
あまりの至近距離に喜介は、顔が真っ赤になった。
 「……やっぱりな。」
「え?」
「…一緒に行きたいんだろ?飲みに…」
「え?……ど、どうして…」
「喜介、お前の顔に書いてあった。」と冗談交じりに言えば喜介はその言葉を信じてしまい、両手で顔を覆い隠した。
 
 俺は不覚にも、可愛いな…と思い、喜介の頭をクシャクシャに撫でた。

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