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俺は今窮地きゅうちにたたされている。
 路地裏で男にさかられ、キスされようとしている。
 「離‥‥せ‥‥よっ」と拒んでも相手はびくともしない。徐々に相手の顔が近づいてくる。
 (気持ち悪い‥‥)そう思ったとき、相手が「ぐぁっ‥‥」と声を荒げ、俺を助けた男の後方に吹っ飛んだ。
「大丈夫か?」
「っ‥‥」
男の差し出された手にビクリと肩を揺らすと、男はジーッと俺を見てきた。俺は俯いていた顔を更に下げる。
そして、男は思い出したように「お前、宗助じゃないかぁ?」と尋ねられ、俺は俯いていた顔をバッとあげた。

 「やっぱりな~!!その顔は宗助じゃないか!」
「浅黄‥‥さん。」どうやら、俺を助けてくれたのは俺の師匠である浅黄さんだった。
 「んで、何で此処にいんだ?」と尋ねられ、俺は「場所を変えて話しましょう!」と路地裏から浅黄さんを連れ出し、近くの茶屋に入った。
 

「は~い。団子お待ち!」と元気よく茶屋の娘さんである千歳ちとせが声をかけてきた。
 俺は「ありがとう~!千歳の作る団子は相変わらず美味いな~」と言って見せると、千歳は頬を赤くして「ありがとう」と言い店奥へ戻った。
 
「宗助も懲りね~なぁ。」
「俺は女と酒にしか興味がないだけだ‥」と団子を頬張りながら言う。
 (男色には一切興味ないけどな!)と心の中で呟く。
そして、忘れかけていた時に先程の話を浅黄さんに掘り返されてしまった。
 「んで、何で宗助あの時、路地裏なんかにいたんだ?」
「‥‥‥‥‥さぁ」
  「さぁ?って宗助、言葉にご「あーー、なんか絡まれた。」
 「‥‥‥‥‥」
そこから、浅黄さんは黙り込んでしまった。
(‥‥‥?)
不思議に思った俺は「浅黄さん‥‥?」と声をかけた。
 「ん?なんだ?」といつもの笑顔で聞いてくる浅黄さん。
 「もう、俺の話しは終わったから次、浅黄さんの番!」と俺は唐突に攻めた。
 「俺は、別に何もないぞ?」と笑顔で言ってきたので(嘘だ‥)と思った。

 そして、他愛もない話をしながら過ごしていると、いつの間にか夕方になっていた。
 「お‥‥‥っと、いけねぇ。もう夕方か。」
今日はいつになく時間が過ぎ去るのが早いなと感じた。
 「んじゃ、俺はこのまま帰るけど宗助はどうするんだ?」
 「じゃぁ、俺も帰るわ」と椅子から立ち上がる。
「おう、家まで少し送っていくぞ。」と言われ俺は浅黄さんの言葉に甘えた。
 「ありがと‥‥」と礼を言うと浅黄さんは「買い物ついでだ」と笑顔で返してきた。
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