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第13話(前篇):困惑のあとに
しおりを挟む■第13話(前篇):困惑のあとに
――金曜日の夜
幸尋が20時半前にバイトから帰ってきた。
今夜は貰ってきた巻き寿司やフライものを夕ごはんにした。
ふたりで取り合うようにガツガツ食べた。
フライものは、アジフライ・ハムエッグに、
蓮根・さつまいもの天ぷら。
巻き寿司はたまたま幸尋が巻いたものだった。
見た目はこれといって違いは無いが、
巻き慣れている彼には分かる違いがあった。
「ね、ね?これボクが巻いたやつだよ?」
「ふ~ん・・・」
アカネの反応は薄かった。
それを見て、幸尋はちょっぴりガッカリした。
――2時間後
お風呂にも入って、まったりした時間を過した。
眠くなってきたから、そろそろ寝ようと言って寝たはずだった。
布団に入っていた幸尋は、ふとあることが気になり始めた。
するとだんだんムカムカしてきて寝ている場合ではなくなった。
とことこ歩いていって、「アカネの巣」をノックした。
・・・すぐに言い合いになった。
「不公平だろ!」
「テメーの自爆だろーが!」
ひとりエッチの決定的証拠をアカネに知られてしまったのが、
今になって、どうにも納得できなくなってしまった。
彼にとってはとんでもない恥辱だった。
「アカネがしてるところも見せろよ!」
このさい、お互いに「おあいこ」にしようという魂胆である。
「はぁあああ?するか!バカ!!」
「じゃ、おま●こ見せてよ」
カンタンには引き下がらなかった。
今度は要求レヴェルをいっこ下げてみた。
「ふざけんな!見せるか!」
いつになく目が真剣になっていて、
アカネがいくら断っても引き下がらなかった。
――10分後
「・・・ちょっとだけだからな!
見たらすぐ帰れよ」
幸尋の目の前で、アカネは立ったまま
ジャージをずり下げた。
メロン色のパンツを穿いていた。
こんなときに奇遇である。
それもずり下げた。
「そんなんじゃ見えないだろ?もっと足開いてよ」
「あーもー!!」
今度はガバッと股を開いた。
幸尋は思わず彼女の足元にしゃがみこむ。
目の前に初めてのものが露になっている。
「これがアカネのおま●こ・・・すごい・・・」
「・・・っ!じっくり見るなぁっ!!」
「せっかくなんだから、じっくり見たいよ」
幸尋は食い入るように見つめた。
腹からのなだらかなラインが股間に吸い込まれるような造形。
へそのやや下にはゆるやかに丘が盛り上がっている。
そこには黒い茂みがあって、素肌とは対照的だった。
そして、何よりもすぐ下の深みが目を引いた。
「お、おいっ!触んなぁっ!」
思わず手が伸びた。
もっとしっかり見たくて、
茂みを掻き分けた。
目の前に、女の子の不思議な深みがあった。
それは奥へと誘う禁断の門のようで、
その縁には細やかに織りなすヒダがある。
色味は肌桃がベースであるが、
深みに近づくほど黒味がかっている。
くにっ・・・
深みを左右に押し広げると、
濃い桃色の秘肉がさらに奥へと続いていた。
もうそこはアカネのナカだった。
見たことのない彼女の奥。
「・・・ひくひくしてる」
「実況するなぁっ!」
「アカネ・・・」
思わず幸尋は顔を見上げた。
いきなり視線が合う。
虚空の一瞬が過ぎる。
アカネが微かに震えて目を反らした。
「・・・あ、ありがと・・・アカネ」
もう少しで衝動に押し切られるところだった。
ガクガクしながら立ち上がった。
「・・・うぅん・・・」
アカネが小さな声で返事した。
幸尋は肩で息をしていた。
呼吸の荒さは彼女にも伝わっているだろう。
・・・彼は後ずさりして「アカネの巣」を出ていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――土曜日の朝
昨夜はなかなか眠れなくて、
朝起きると9時半だった。
身の回りのことを済ませると、
ようやくアカネが起きてきた。
「なぁ・・・ホットケーキ食べたい・・・」
朝から面倒なリクエストが来た。
かと言って、昨夜のことがあるし、
無碍に断るワケにもいかなかった。
――30分後
「ホットケーキって、たまに無性に食べたくなるよな」
アカネはテーブルで頬杖をついて、
ニコニコしていた。
・・・じゅ~・・・
幸尋はキッチンでフライパンを注意深く見つめている。
背後で話すアカネのことなど、構ってはいられない。
ちょうどホットケーキミックスの生地を
フライパンに垂らしたところだった。
おたまで慎重に生地を円形に延ばしていく。
ガスコンロの左右両方使って、ホットケーキを焼くのは
これが初めてだった。
アカネだけが先に食べるのはおもしろくない。
幸い、フライパンは大きいのと小さいのを持っていたので、
ホットケーキぐらいなら、どちらでも同じ大きさのものが焼けた。
目の前で少しずつ生地に火が通り、
ほんのり香ばしい匂いが漂ってくる。
ちょっと懐かしくなってくる。
アカネの言うことはもっともだった。
幸尋自身、ホットケーキを作るのは久しぶりだった。
ゆっくりフライ返しで、生地の周りをつんつんする。
生地が焦げてフライパンにくっつかないように。
だんだん生地が膨らんでくる。
ぷつぷつと表面から小さな気泡が抜けていく。
「ユッキーが料理する姿って何かいいよな・・・」
「調子のいいこと言ってんじゃねぇよ」
「何か最近、ユッキーってあたしに似てきたよなぁ
その言い方なんか、前はぜんぜん言わなかったっしょ?」
幸尋は「えっ」と思った。
アカネが言っているのは、最初の頃のことだろうか。
あの頃どんな風に喋っていたのかもう分からなくなっていた。
・・・ぱふぅっ
ホットケーキを裏返す。
まずは右側の大きなフライパン、
次に左側の小さいフライパン。
するりと裏返ると、こんがりきつね色になっていた。
1枚焼き終わると、予め温めておいた皿に載せておく。
そしてすぐに、2枚目を焼き始めた。
「アカネ、バターとシロップ出しといてよ」
「おっけぇ~」
バターといってもマーガリン50%入ったもの。
純正のバターは高くてもったいない。
それに滅多に使わない。
シロップといってもメープルタイプシロップ。
純正のメープルシロップは高くて買えない。
いや、買おうとしたことすらない。
「でけたよ」
「うぇーい!」
・・・コトン・・・
ふたりの目の前に湯気がのぼっていく。
ちょっとだけ厚めのホットケーキ。
ふんわり甘くやさしい香りが漂う。
胸いっぱいに吸い込むのも楽しみのひとつ。
久々とはいえ、2枚重ねはまぁまぁの出来だった。
カフェのように完璧な形ではないけれど。
アカネはさっそくシロップをかけ始めた。
こぽこぽ・・・こっぽこぽ・・・
「アカネ・・・」
みなまでは言わなかった。
シロップかけ過ぎなのである。
幸尋はふんわりした生地の食感を楽しみたかった。
彼女の趣向がよく分からない。
・・・にゅるぅ・・・
幸尋はチューブタイプのバターを
生地の真ん中に搾る。
ゆっくり回しつつ、ぷにゅっと
押し当てるように終える。
じわりと小さな塊がゆっくり溶けていく。
キラキラしながら垂れいく。
バターが溶けゆくのを
バターの好きなようにさせる。
「ひひっ♪その顔w」
アカネがうれしそうに言う。
バターが溶けゆく様子を見守るのは
幸尋にとって儀式である。
今回、それをアカネに凝視されていたようだ。
「見るな・・・大事なんだぞ、バター見るの」
ちょっと恥ずかしくなる。
どんな顔をしていたのか、アカネは言ってくれなかった。
アカネはシロップでびたびたになった生地に
さらにバターを搾っている。
それをナイフで生地になすり付けた。
一見乱雑に見えるが、延びたバターにもワイルドな趣きがある。
彼女の楽しみ方はヘヴィであった。
ふたりはホットケーキに合わせて紅茶を選んだ。
これだけはふたり同じ趣向だった。
フツーのティーパックの紅茶だったが、
紅茶の香りはホットケーキの香りと相性がいい。
・・・カチャ・・・
ふたりはフォークとナイフを使って、食べ始めた。
こればかりはおおげさに畏まってしまう。
・・・もぐもぐ・・・
「んふぅ~」
ふんわりした小麦感・・・
香ばしい甘さ・・・
ほわほわの生地が口で解けていく。
かすかにカリッとした表面、
柔らかい弾力のあるボディ。
いつまでも味わっていたい
じんわり幸せなホットケーキ。
幸尋は最初の2口、3口、バター風味で生地を楽しむ。
焼きたて生地の魅力を余すことなく味わえる。
合間に紅茶を飲む。
今度はすっきりした香りとかすかな苦みが広がり、
熱いものが喉を駆け抜けていく。
「よし、今だっ!」
それから、ようやくシロップを少し垂らす。
・・・カチャ・・・
ぱくっ
今度はしっかりした甘さが
口にじんわり広がっていく。
本物のメープルシロップではないが、
それでも、かすかなカラメルの風味が
生地の小麦感とよくマッチしている。
その甘味は舌をくすぐるようだった。
「ユッキー、楽しみすぎw」
「アカネだって幸せそうな顔してるだろw」
ホットケーキを食べると、知らないうちに
穏やかな気持ちになってしまう。
ホットケーキの魔法かもしれない。
(つづく)
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