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第一話【静かに過ごしたかった……】
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「き、菊ちゃん、おま、たせ」
俺の声に菊ちゃんはにっこりとほほ笑み振り返る。
俺の後ろからひょっこり顔を出した恭平は「あぁそうだそうだ。あんたに見せたくてデリバリィのイケメンも連れてきたんだったぁ。どぉぞぉ」そう意味深げに玄関に向かって声をかけた。
ワクワクしている菊ちゃん。その表情が見ながらほくそ笑んでいる恭平。何なんだこの状況は……。
「はぁ……」
俺はもうため息しか出ない。
そんな俺の心情はさて置かれ、恭平の後ろから足音が聞こえ、道を開けた。
「こ、こんばんは……」
申し訳なさげな声を聞いた途端、ワクワクキラキラしていた菊ちゃんの目が怯えていくのが分かった。
「ど、どどど……どう、どうして、ここに……」
「憲治、こんな所にいたのかよ……うちに帰ろう?」
「い、いやよ!あっちいって!」
フンっと鼻を鳴らし背中を向けた菊ちゃんに歩み寄る海月さん。
「なぁ、痴話げんかならよそでやってくんない?」
ほとほと面倒臭げな恭平に向かって「アリスちゃん!?一体どう言う事?どうして海月がここにいるのよっ!」ギーギー叫ぶ菊ちゃん。
「憲治が悪いんだからな」
人差し指を菊ちゃんに向ける恭平。
「なんであたしが悪いのよっ!わたしは何にも悪くないわよっ!」
「お前、勝手に家飛び出してきたんだろ?」
「……ちが─────「違わない。お前海月とちゃんと話をしたのか?一方的に怒って相手の話も聞かずに家を飛び出して来たんじゃないのか?」
菊ちゃんはその場に座り込み、正座をして叱られている子供のように、大きな体身は小さく丸まり表情は完全に曇っている。
海月さんと俺はそれをただ黙って見守ることしか出来なかった。
「でも─────「憲治は何時も人の話を最後まで聞かないよな」
「それはっ─────「俺と話をしてる時だってそうだったよな?」
「その─────「海月はちゃんと話したかったんじゃないのか?」
「え?お、俺は……」
何か言い返そうとする菊ちゃんの言葉を尽く遮るようにかぶせてくる恭平の突然のフリに戸惑う海月さん。
生徒を叱る先生みたいだ。いや、実際教師なんだよな……忘れかけてた。
「恭平。そのくらいにしてやれよ。これは菊ちゃんと海月さんの問題だろ?」
「俺は、倫太郎との二人きりの年末を邪魔されて怒ってるんだっ!」
こちらもこちらで子供のような口ぶりで頬を膨らませている。
それが少しばかり可愛い……何て不謹慎な事を考えてしまった。
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