THIEF -シーフ-

追跡

8-10

「お主がやられるとはな」


 「誰もが言うセリフ、聞きあきた」



カッカッカとまた笑うと「それで？お前を追いかけまわしているべっぴんさんはどこにいる？」とガラスに手をついた。



 「べっぴん？笑わせないでくれ。レニーは、その路地にさっきまでいた。もう移動して違う場所にいる」


 目だけで辺りを見回し、レニーの所在を確認した。


 「やっぱりレニーだ」


 向かいのビルの屋上の隅に太陽の光に反射しているガラスのようなものが見えた。



 「双眼鏡か。残念ながらただの双眼鏡では、このガラスでは店内をのぞく事は出来んぞ」


 曲がっていた腰を伸ばすと「老人の恰好を真似しているのも辛いもんだな」肩を回し始めた。



 「十分老人だろうが」


 「そうだな。ウォルト。顧客は見つかったか？」


 「あ、えっと…ライト」


ウォルトはライトに顧客リストを渡した。