THIEF -シーフ-

SIVA

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疑念

9-19

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「同じものを、ルパンも持ってるのよね」



 「だったら?」


 「どうして私に渡したの」



 「だから言ってるでしょう。僕は兄を犯人だとは思ってないって。そもそも、あなたずっと兄を追ってるんでしょう?今まで兄が、人を殺したところを見たことがありますか?」



ダンに言われ、持っている資料に視線を落とした。




 「それは…」



 「だから、あなたにもその資料を渡した…それでは僕はここで…」



 片手を上げて振り返ることなくダンは去って行った。




 「あ」


 何かを思い出したかのように、立ち止まりレニーの方を見た。



 「あなたのこと社長には、僕からうまく言っておきますから、心配しないでくださいね」



 見透かされていた。




 「似た者兄弟ってことね」


ダンには聞こえないような声でつぶやいた。 


ダンはうつむき加減で足早に歩いていた。



 時折後ろを振り返りながら、額に汗を滲ませている。


 「僕にこんな役回りをさせて…」



 『まぁそう固いこと言うなって』


 「兄さん…」



ダンは、耳に手を当てた。



 「話、聞いていたんだろ?」


 『ま、大体な。それで…あの女がどう出るか…』



 「彼女は兄さんの味方になってくれるはずだ」



ダンは歩幅を緩め、歯を食いしばった。




 『どうした』


 声が近くで聞こえ、振り返ると穏やかな表情をしたライトが立っていた。



 「今、兄さんをぶん殴りたい気分だ」



ライトは、フッと笑った。


 「殴るか?」


ダンの目が一瞬殺気を帯びた。


 次の瞬間には、ライトの顎にダンの拳がぶつかった。



 肩の力が抜けたダンは、耳につけていたインカムを外しながらライトに渡した。
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