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7. 最終話 最低で最高の言葉
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「昔を思い出してるんだろうなって思った。そん時はなんかお前が遠くに感じる」
下を向きフッと笑うと「そうだな。今完全に忍の事思いだしてた。忍に言われた言葉全部覚えてるんだよ。忘れない、忘れちゃいけないんだよ」
「どう言う意味だよ」
「ん?そのまんまだよ?」
今日一番の優しい表情に思わずドキッとしてしまった。
「でもさ、結局その束の間の幸せって言うか、出会いもさ自分で壊しちゃったんだよ。親しくなればなるほど、距離感が分からなくなってきたのは事実で、付き合ってもないのに、キスしたり触ったりしてさ。まぁ店に来てたからそれなりのサービスはしてたんだけど。店長やら他の従業員に白い目で見られるようになってきてからは、店で会うのはやめにしてた。それがダメだったのかな……」
煙草はいつの間にか短くなって殆ど灰状態になってしまっている。
「忍が真顔でさ好きだって言ってくれたんだよ。俺すごく嬉しかった。俺にお前の面倒を見てくれって言われたことも嬉しかった」
「え?」
「教師になるなら、社会科の先生になれって言われた。先生になれたら、お前の通う学校に言ってくれって言われて─────」
有栖川の声は段々と小さくなっていく。
「どういう意味だよ。故意に俺に近づいたって事?」
眉をあげ誤魔化そうとするのを止めると、有栖川は「俺は忍との約束を守っただけ」と言った。
「顔、声、仕草、表情。どれをとっても忍にしか見えなくてお前を見た時、狂いそうになったよ。他の生徒がいるのに、抱きしめてそのまま教室を飛び出したかった。それを抑えておくのが大変で大変で……」
今までの行動が抑えていたとはとても思えないんだけど、あの時、初めて有栖川が教壇に立った時の事を思い出した。
こいつは、俺の事をじっと見てた。
他の生徒の名前を赴任してきたばかりなのに覚えていたのは、俺の名前を知っているのをカモフラージュするためだったのかも、なんて勝手な想像をしてしまった。
「倫太郎?」
名前を呼ばれ黙って有栖川の目を見ると「俺は、これからもお前と一緒にいたい。今はこんな状況だけど、忍の事もこれから少しずつ話していきたい」そう言われ嫌だ、とは言えなかった。
下を向きフッと笑うと「そうだな。今完全に忍の事思いだしてた。忍に言われた言葉全部覚えてるんだよ。忘れない、忘れちゃいけないんだよ」
「どう言う意味だよ」
「ん?そのまんまだよ?」
今日一番の優しい表情に思わずドキッとしてしまった。
「でもさ、結局その束の間の幸せって言うか、出会いもさ自分で壊しちゃったんだよ。親しくなればなるほど、距離感が分からなくなってきたのは事実で、付き合ってもないのに、キスしたり触ったりしてさ。まぁ店に来てたからそれなりのサービスはしてたんだけど。店長やら他の従業員に白い目で見られるようになってきてからは、店で会うのはやめにしてた。それがダメだったのかな……」
煙草はいつの間にか短くなって殆ど灰状態になってしまっている。
「忍が真顔でさ好きだって言ってくれたんだよ。俺すごく嬉しかった。俺にお前の面倒を見てくれって言われたことも嬉しかった」
「え?」
「教師になるなら、社会科の先生になれって言われた。先生になれたら、お前の通う学校に言ってくれって言われて─────」
有栖川の声は段々と小さくなっていく。
「どういう意味だよ。故意に俺に近づいたって事?」
眉をあげ誤魔化そうとするのを止めると、有栖川は「俺は忍との約束を守っただけ」と言った。
「顔、声、仕草、表情。どれをとっても忍にしか見えなくてお前を見た時、狂いそうになったよ。他の生徒がいるのに、抱きしめてそのまま教室を飛び出したかった。それを抑えておくのが大変で大変で……」
今までの行動が抑えていたとはとても思えないんだけど、あの時、初めて有栖川が教壇に立った時の事を思い出した。
こいつは、俺の事をじっと見てた。
他の生徒の名前を赴任してきたばかりなのに覚えていたのは、俺の名前を知っているのをカモフラージュするためだったのかも、なんて勝手な想像をしてしまった。
「倫太郎?」
名前を呼ばれ黙って有栖川の目を見ると「俺は、これからもお前と一緒にいたい。今はこんな状況だけど、忍の事もこれから少しずつ話していきたい」そう言われ嫌だ、とは言えなかった。
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