29 / 356
2.遡る事、一年前……
2-16
しおりを挟む***
社会科の準備室の扉を引いて、前を歩いていた有栖川は、真っ先に窓の方へ向かって行った。
窓の向こうには一際目を引く緑生い茂る古い大きな桜の木が一本あった。
『ったく、ここはいつも湿気臭いんだよ』そう言いながら窓を開けると、モワッとする空気が流れ込んできた。
俺はその一連の動作を重たい荷物を抱えたまま眺めていた。正直腕が引きちぎれそうだった。
そんなことはどうでもいいから、早くどこかに置いてこの場を立ち去りたい。
『これ、どこ置きますか』
しびれを切らし質問すれば、やっと俺の存在に気が付き『あ、適当にどーぞ?』と言われた。
あたりを見回し空いてる机の上に置いて大きくため息をつきながら、腕をさすった。
(まじ腕パンパン)
用が済んだら教室に戻りたいんだけど、呑気に煙草に手を伸ばした有栖川。
(煙草吸うのか。何か……いいな……)
それを横目で見ていると『あ?まだいんの?』
(はぁぁっ!!?ありがとうとか、お礼の一つないのかよ!!!)
心の怒りは爆発しまくり、つい勢い余って『失礼しました!!!』と大きな声を出してしまった。
踵を返すも怒りは収まるどころか込み上げてくるばかり。
(あぁ!ちきしょう!なんか期待して損した!)
『あぁっもぅっ!!』
イラッとしてつい大声をあげてしまった。
怒りに任せドアノブに手をかけた────
トン
ん?
扉に手をかけられ、開けられない。
黒い影が頭にかかる。
『冗談』
耳元で甘い声が囁かれた。
勢いよく振り返り『な!!なんっすか!!?』
0
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる