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019 この日常を夢見ていた
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最近私は、県内で一番大きな書店の近くに住むという夢を叶えることができた。それからというもの何も用がない日は書店に行きたくなる。だが、この辺りの地域では、「弁当忘れても傘忘れるな」という格言が昔からあるほど、よく雨が降る。近いといっても書店までは徒歩で25分かかる。
5月のある日、窓の外を見るとお日様が雲からのぞいていた。雲はいくつが浮かんでいる。晴れだけど曇りに近い天気かな?と思った。
持病を抱えている私は、天気だけじゃなく体調も考えて外出しなければならない。迷ったが、まず中間地点にあるコンビニへ行って、それ以降も歩けそうだったら書店も行こうと行動に移した。
玄関を出ると、私の住むアパートの周りに新築の家がいくつも建っている。最近売り出されていた家たちだ。何軒か売れたようで、車が停めてあり、洗濯物も干してある。私もこういう家を買えたら良かったのかな、いやアパートでも十分だ。と横目で見ながら通り過ぎていく。
大通りに出ると、ヤキトリ屋と個人病院が並んでいる。病院のおしゃれな建物の横の花壇にはチューリップがたくさん植えられていて、ピンクや黄色や白など色とりどりでとても可愛らしい。こことは反対側の歩道にはログハウス調のチマッとした小さな建物がある。ここは少し前までカフェをやっていて、出窓から店員さんが顔を出していて、そこから持ち帰り用のチーズケーキを買うことができた。現在は、商売を辞めてしまったようで閉まっている。それをいつも残念に思いながら通り過ぎている。
前を見るとトラックが歩道に止まっていて、三角コーンが車を通せんぼしていた。工事中らしい。徒歩ならなんとか通れるみたいで、トラックのせいで狭くなった歩道を、私は体を小さくしてやっとこさ歩いた。
オレンジ色の壁のカレー屋を通り過ぎると、やっとコンビニに着いた。コンビニで、香典返しにもらったカタログギフトのハガキを投函して、ペットボトルの水を買いながら本屋まで行くかどうするか考えていた。冷蔵庫でキンキンに冷やされた水を飲むと、生き返るような気持ちになって、もうちょっと頑張ってみようと思った。
すぐに横断歩道がある。信号待ちをしながら、「ここからまだ15分はかかるよな」とまた迷う気持ちが出てくる。そのとき、青になった信号に背中を押される気持ちで歩き出すことができた。
そこからは、ただひたすらまっすぐ歩いていく。歩道は県庁のすぐ近くということもあって、とても綺麗に広く整えられている。自転車で通る人もランニングをしている人にとっても良いコースである。横には深い川が流れていて、ここに帽子を風に飛ばされてしまっては大変なことになるな、大変というか帽子なんか諦めないといけなくなるなと不安になり、被っている帽子を手で押さえて深く被り直した。
しばらく歩いてきて横断歩道に差し掛かる。あと少しだ。この辺りで毎回息切れするので、いつも水を飲むことにしている。ごくごくと飲んでから、そのまま5分歩くと円柱の形をした3階建ての大きな建物が見えた。書店にやっと着いたのだ。そのとき、ポツポツと霧雨のような雨が降ってきたのが、汗をかいた肌に当たって心地よかった。
※この作品は大学の文芸コースに在籍中、文芸特講1という課題で提出した作品でした。
5月のある日、窓の外を見るとお日様が雲からのぞいていた。雲はいくつが浮かんでいる。晴れだけど曇りに近い天気かな?と思った。
持病を抱えている私は、天気だけじゃなく体調も考えて外出しなければならない。迷ったが、まず中間地点にあるコンビニへ行って、それ以降も歩けそうだったら書店も行こうと行動に移した。
玄関を出ると、私の住むアパートの周りに新築の家がいくつも建っている。最近売り出されていた家たちだ。何軒か売れたようで、車が停めてあり、洗濯物も干してある。私もこういう家を買えたら良かったのかな、いやアパートでも十分だ。と横目で見ながら通り過ぎていく。
大通りに出ると、ヤキトリ屋と個人病院が並んでいる。病院のおしゃれな建物の横の花壇にはチューリップがたくさん植えられていて、ピンクや黄色や白など色とりどりでとても可愛らしい。こことは反対側の歩道にはログハウス調のチマッとした小さな建物がある。ここは少し前までカフェをやっていて、出窓から店員さんが顔を出していて、そこから持ち帰り用のチーズケーキを買うことができた。現在は、商売を辞めてしまったようで閉まっている。それをいつも残念に思いながら通り過ぎている。
前を見るとトラックが歩道に止まっていて、三角コーンが車を通せんぼしていた。工事中らしい。徒歩ならなんとか通れるみたいで、トラックのせいで狭くなった歩道を、私は体を小さくしてやっとこさ歩いた。
オレンジ色の壁のカレー屋を通り過ぎると、やっとコンビニに着いた。コンビニで、香典返しにもらったカタログギフトのハガキを投函して、ペットボトルの水を買いながら本屋まで行くかどうするか考えていた。冷蔵庫でキンキンに冷やされた水を飲むと、生き返るような気持ちになって、もうちょっと頑張ってみようと思った。
すぐに横断歩道がある。信号待ちをしながら、「ここからまだ15分はかかるよな」とまた迷う気持ちが出てくる。そのとき、青になった信号に背中を押される気持ちで歩き出すことができた。
そこからは、ただひたすらまっすぐ歩いていく。歩道は県庁のすぐ近くということもあって、とても綺麗に広く整えられている。自転車で通る人もランニングをしている人にとっても良いコースである。横には深い川が流れていて、ここに帽子を風に飛ばされてしまっては大変なことになるな、大変というか帽子なんか諦めないといけなくなるなと不安になり、被っている帽子を手で押さえて深く被り直した。
しばらく歩いてきて横断歩道に差し掛かる。あと少しだ。この辺りで毎回息切れするので、いつも水を飲むことにしている。ごくごくと飲んでから、そのまま5分歩くと円柱の形をした3階建ての大きな建物が見えた。書店にやっと着いたのだ。そのとき、ポツポツと霧雨のような雨が降ってきたのが、汗をかいた肌に当たって心地よかった。
※この作品は大学の文芸コースに在籍中、文芸特講1という課題で提出した作品でした。
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