色々とごちゃ混ぜになったVRMMO

たこやき

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武器

7 ナイフ

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「え?貴方が?それに暗殺担当って?」
「ふむ、またギルドの者が手を加えていたか。まあ、暗殺と聞いてくるような輩はおるまいしな」
「あの・・・殺そうとしましたよね?」
「あれはただ試しただけだ。あの程度の殺気も感じ取れないようでは全く見込みが無いからな」
 ・・・過激な人だ。

<隠密>
「では、早速始めようか。ではまず、気配の消し方から」
「え・・・ちょ、「そこに座れ。」はい・・・」
 言われたとおりに腰を下ろすと、クリューゲルさんが話し始めた。
「気配を消す、つまり隠密とは自己の存在を忘れさせることである。周りの者にも、自分自身にもな。このように」
 そういうと、クリューゲルさんが消えた。いや、クリューゲルさんの姿が気にならなくなった。辛うじてクリューゲルさんを視界に捕らえている。
「見えるか?」
 虚空から響くかのようであった。
「はい、なんとか」
「では、これはどうだ?」
 すると、クリューゲルさんが音も立てずに何処かに移動したと知覚できた。
 どこだ?注意を凝らして辺りを見回す。
 なんとか発見することが出来た。
「なかなか筋がいいな」
 そう言うとクリューゲルさんが隠密を解いた。
「これは発動中少々精神力を必要とする。常用にはかなりの集中力が必要だ。その点でお前は高い評価を示した。早速やってみるか」
「いきなりですか?」
「時間は有限だ。さて、目を瞑り大きく吸って、吐く。これを十回繰り返してみろ」
 吸って、吐いてを十回繰り返すと頭がすっきりしてきた。
「そのまま、頭の中で、自分の姿が透明になった様子を想像してみろ」
 想像してみる。
「想像できたら、自分の周りで魔力が渦巻いているところを想像する」
 魔力が渦巻く。海流のようなイメージだろうか。
「そう、そうだ。驚いたな・・・そして、その渦がだんだんと収まっていく」
 渦がだんだん弱くなり、消える。
「そのイメージを保ったまま、ゆっくりと目を開けて」
 目を開けてみる。だが・・・
「何も変わってませんけど?」
「そのまま通りに出てみろ」
 通りに出てみる。
「何か変わったんですか?ってうわっ、危ない!」
 おばちゃんとぶつかりそうにそうになり、慌てて避ける。
「もどってこい。いやはや、こんな簡単にできるとは・・・」
 その後一時間程訓練し、発動までを十秒程で出来るようになった。

<ナイフの暗殺術>
「次はナイフの扱い方だ。ナイフは普通の武器と違い、刺す、斬るのではなく滑り込ませるといったイメージだ。骨の隙間にな」  
 恐ろしい話だ。
「ナイフは基本的に先の隠密と併用する。隠れて、殺る。古来より変わらない暗殺者の殺りかただ」
 クリューゲルさんがナイフをポン、と渡してきた。
「基本的な身の運び方を教える。ナイフには構え方というのは存在しない。そもそも、構えなければならない状況を作ってしまった時点で、暗殺者としては敗北している」
 クリューゲルさんが大体の動きを教えてくれた。
「違う!もっと自然な動きで!日常的な動作の延長線上に!」
「目線が甘い、見なくとも位置を把握出来るようにしろ!」
「変な力を入れるな!あくまで自然に!」
 三時間ほどで身の運び方の訓練は終了した。

<ナイフの投擲>
「次はナイフの投擲だ。回転して投げるやり方と回転させずに真っ直ぐとばすやり方がある。基本的に使うのは回転の方だ。」
 クリューゲルさんが投げナイフを三つ渡してきた。
「持った瞬間重心を把握できるように!」
「迅速に距離を見極め、投げる!回転速度を調整しろ!」
「しっかりと急所を狙え!」
 こちらは三十分ほどで終わった。

<昼飯>
「さてと、昼飯にするか」
 いつの間にか昼になっていた。
 クリューゲルさんがサンドウィッチをくれた。
「これはご自分で?」
「いや、妻に作ってもらった」
「奥さんは何をされているんですか?」
「狙撃手だ。ちなみに息子は薬師だ。主に毒薬のな」
 一家揃ってなにかと物騒だなオイ。

<ナイフでの戦闘術>
「ナイフで戦うといった状況は、暗殺者としては最も避けたいことだが最低限の護身術は必要だ。ナイフは、剣とまともに打ち合っては力負けする。なので、基本的に斬りかかってきた隙をついたり、背後に回り込んで戦うことになる。注意してほしいが、この動きは盗賊とは根本的に異なる」
 ナイフでの戦闘は、一風変わったものだった。
「打ち合おうとするな、避けろ、受け流せ!」
「投擲術を活用しろ!」
「どうしても受けるときは二本で!」
 二時間ほどで基本は終わった。

「さてと、基本的にはこれぐらいだな。注意してもらいたいが、これらの技は決して一般人に使わぬよう。そのときは、私が真っ先に殺しにいくことになる。では」
「はい。肝に銘じておきます。ありがとうございました」
「そういえば、名前は?」
「ハヤテです」
「ハヤテか。すまないね、名前は最後に聞く主義なんだ。いままでは、名前を聞いても意味のない者が多かったから」
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