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魔法と感覚
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ラハイアさんの講義を済ませた僕は、各団員に用意されている自室へと向かっていた。自室と言っても個室ではなく、3~4人程度の共同部屋である。
この部屋で生活しているのは、スコットニーさんとロージスさん、それからケリス・ピアソンさんと言う魔法使いの方だ。
僕は騎士団に入ってから初めて知ったのだが、どうやら騎士団には魔法使いを中心に編成されている、“魔法使隊《まほうしたい》”なる部隊が存在するとのこと。その隊は僕たちの様な騎士然とした集団ではなく、どちらかと言うと国所属の研究者に近い立ち位置らしい。
現場にもあまり赴かず魔道具の作成や点検など、裏方的な仕事が主となっている。その為、騎士団ほどのネームバリューはなく、専門職以外にはあまり聞き馴染みのない組織、と言われることも多々あるのだとか。
ただし、その実力は確かな様で、年に数度魔法使隊《まほうし隊》と騎士団の合同訓練では、騎士団の先鋭たちが、完膚なきまでに叩きのめされる事も多々あるらしい。
「戦場で使うような魔法って僕でも習得出来るのかなぁ?」
僕は魔法の才能は余りないが、強化魔法や日常で使うくらいの属性魔法は扱える。ただ攻撃として使えるかというと、属性魔法に関しては全くもって役に立たないだろう。
「強化魔法は先生に言われてからずっとやってるし、最近では剣にも纏《まと》える様になったから成長はしてると思うけど......属性魔法はなぁ」
まあ、素人の僕が使う属性魔法など、本職に比べたら水掛けの様な物だと重々承知している。それでも魔法で戦うのって......
「やっぱカッコいいし使える様になりたいな。一度ピアソンさんに教えてもらおうかな?」
「私に何を教えて欲しいって?」
「あっピアソンさん!!」
「やあ、ここに居るって事は訓練は終わったのかい?」
「まあ、そんな所です。それよりちょうど良かった。実は魔法に興味があって、部屋に戻ったらピアソンさんに、魔法の事を教えてもらおうかなと考えていたんです!!」
「なるほど。それなら図書室へ行きましょう。あそこには魔導書籍が沢山あるので、きっと初心者用の教材もあるはずです」
おお、図書室はあるのは知っていたが、魔法の本も置いてあるんだ。普通の本屋には魔法関連の本は売っていないのでちょっと意外に感じたが、よくよく考えてみたら魔法使隊が有るのだから、魔法の本がおてあっても不思議ではないか。
「それじゃあ、訓練用の道具を置いたら早速行きましょう!!」
「ええ、そうですね」
こうして僕たち二人は自室に道具だけ置くと、騎士団専用の図書室へと向かった。
◇
「うっへぇ......これ本当に図書室ですか? 確実に公共図書館と同じか、それ以上の広さがありますよ!!」
「まあ、国の情報は大体ここに保管されているからね。ほとんどが騎士団の調査記録や過去に発行された公文書、それから各機関の活動報告なども管理されているみたいだね」
「すごいなぁ。あれでも、下級騎士の僕たちが公文書とか見ても大丈夫なんですか?」
公文書って機密とかもいっぱいあるだろうから、僕みたいな入ったばかりの人が弄れちゃうとまずいんじゃないんだろうか。
「まあ、みられてまずい様な物はまずここにはないだろうから気にしなくてもいいと思うよ。それに此処にあるのは過去に公表されている物や、そもそも書店で出回っていた物の中で重要だと国に認められた物ばかりだから」
「へえ一般の人が書いた物もあるんですね。てっきり国で作ったすっごい本ばかりなのかと」
「すっごい......ってのはまあ、間違ってはいないと思うけどね。それよりも魔法が知りたいんだろう? じゃあ早く探さないといけないね。見ての通り数が数だから、見つけるのも一苦労なんだよ」
「え、そこは魔法でぱぱーっと見つけるんじゃないの?」
「君は魔法を何だと思ってるんだ......魔法を使うにはまず、紐付けされた情報が必要なんだよ。まず探したい本も決まっていないのに、魔法で呼び出すなんてできないよ」
「あっそうなんですね。というか紐付けされた情報?」
「そう、例えば感覚だね。属性魔法を使う時、その魔法に合った感覚を記憶から呼び覚まして魔力で再現する。これが属性魔法だ」
「なんか難しいこと言ってる......」
「もっと身近な魔法だと身体強化魔法だね。ロイ君は身体強化をする時、何を思って魔法を行使している?」
「うーん、余り考えたことなかったな。強いて言うなら、なんかこう、ブワッ!!ってなる感覚......かな?」
「まあ、感覚は人それぞれだから、色々感じ方はあると思う。でも属性魔法も大体それと同じなんだ」
「同じかなぁ?」
「僕の場合、強化魔法は魔力という鎧を着る感覚。火属性魔法は、ちょっと野蛮だけど、自分の体が薪の様に燃える感覚かな」
え、ピアソンさんって魔法使う度に、自傷行為してる感覚で使ってるってこと......?
「ピアソンさん怖い......」
「ええ!? いや、あくまでそういう感覚で使う場合もあるってだけだからね!? 別にいつでもそんな感覚ではないからね!!」
果たして本当だろうか。魔法を使う感覚で真っ先に自分の体が燃えるのを想像するって、だいぶ狂ってると思うんだけど。もしかして魔法使いってみんなこんな感じなの?
「なんか凄い誤解をされている気がする。とにかく!! そう言った情報の紐付けがなされていない状態での魔法行使は出来ない、って事だけわかればそれでいいから!! ほら、それよりも早く探すよ!!」
そういうとピアソンさんは、おそらく魔法関連の本が保管されているであろう場所へとまっすぐ歩いていった。
「ちょっと聞く相手間違ったかな?」
「此処からでも聞こえてるからね!?」
おっと、普通に聞こえていたらしい。まあでも、ピアソンさんはさっきの“感覚の話”を除けば、とても優しい人なので取り敢えず信用してもいい......のかな。
そんなことを考えながら僕は、少し不機嫌なピアソンさんの後をついて行った。
この部屋で生活しているのは、スコットニーさんとロージスさん、それからケリス・ピアソンさんと言う魔法使いの方だ。
僕は騎士団に入ってから初めて知ったのだが、どうやら騎士団には魔法使いを中心に編成されている、“魔法使隊《まほうしたい》”なる部隊が存在するとのこと。その隊は僕たちの様な騎士然とした集団ではなく、どちらかと言うと国所属の研究者に近い立ち位置らしい。
現場にもあまり赴かず魔道具の作成や点検など、裏方的な仕事が主となっている。その為、騎士団ほどのネームバリューはなく、専門職以外にはあまり聞き馴染みのない組織、と言われることも多々あるのだとか。
ただし、その実力は確かな様で、年に数度魔法使隊《まほうし隊》と騎士団の合同訓練では、騎士団の先鋭たちが、完膚なきまでに叩きのめされる事も多々あるらしい。
「戦場で使うような魔法って僕でも習得出来るのかなぁ?」
僕は魔法の才能は余りないが、強化魔法や日常で使うくらいの属性魔法は扱える。ただ攻撃として使えるかというと、属性魔法に関しては全くもって役に立たないだろう。
「強化魔法は先生に言われてからずっとやってるし、最近では剣にも纏《まと》える様になったから成長はしてると思うけど......属性魔法はなぁ」
まあ、素人の僕が使う属性魔法など、本職に比べたら水掛けの様な物だと重々承知している。それでも魔法で戦うのって......
「やっぱカッコいいし使える様になりたいな。一度ピアソンさんに教えてもらおうかな?」
「私に何を教えて欲しいって?」
「あっピアソンさん!!」
「やあ、ここに居るって事は訓練は終わったのかい?」
「まあ、そんな所です。それよりちょうど良かった。実は魔法に興味があって、部屋に戻ったらピアソンさんに、魔法の事を教えてもらおうかなと考えていたんです!!」
「なるほど。それなら図書室へ行きましょう。あそこには魔導書籍が沢山あるので、きっと初心者用の教材もあるはずです」
おお、図書室はあるのは知っていたが、魔法の本も置いてあるんだ。普通の本屋には魔法関連の本は売っていないのでちょっと意外に感じたが、よくよく考えてみたら魔法使隊が有るのだから、魔法の本がおてあっても不思議ではないか。
「それじゃあ、訓練用の道具を置いたら早速行きましょう!!」
「ええ、そうですね」
こうして僕たち二人は自室に道具だけ置くと、騎士団専用の図書室へと向かった。
◇
「うっへぇ......これ本当に図書室ですか? 確実に公共図書館と同じか、それ以上の広さがありますよ!!」
「まあ、国の情報は大体ここに保管されているからね。ほとんどが騎士団の調査記録や過去に発行された公文書、それから各機関の活動報告なども管理されているみたいだね」
「すごいなぁ。あれでも、下級騎士の僕たちが公文書とか見ても大丈夫なんですか?」
公文書って機密とかもいっぱいあるだろうから、僕みたいな入ったばかりの人が弄れちゃうとまずいんじゃないんだろうか。
「まあ、みられてまずい様な物はまずここにはないだろうから気にしなくてもいいと思うよ。それに此処にあるのは過去に公表されている物や、そもそも書店で出回っていた物の中で重要だと国に認められた物ばかりだから」
「へえ一般の人が書いた物もあるんですね。てっきり国で作ったすっごい本ばかりなのかと」
「すっごい......ってのはまあ、間違ってはいないと思うけどね。それよりも魔法が知りたいんだろう? じゃあ早く探さないといけないね。見ての通り数が数だから、見つけるのも一苦労なんだよ」
「え、そこは魔法でぱぱーっと見つけるんじゃないの?」
「君は魔法を何だと思ってるんだ......魔法を使うにはまず、紐付けされた情報が必要なんだよ。まず探したい本も決まっていないのに、魔法で呼び出すなんてできないよ」
「あっそうなんですね。というか紐付けされた情報?」
「そう、例えば感覚だね。属性魔法を使う時、その魔法に合った感覚を記憶から呼び覚まして魔力で再現する。これが属性魔法だ」
「なんか難しいこと言ってる......」
「もっと身近な魔法だと身体強化魔法だね。ロイ君は身体強化をする時、何を思って魔法を行使している?」
「うーん、余り考えたことなかったな。強いて言うなら、なんかこう、ブワッ!!ってなる感覚......かな?」
「まあ、感覚は人それぞれだから、色々感じ方はあると思う。でも属性魔法も大体それと同じなんだ」
「同じかなぁ?」
「僕の場合、強化魔法は魔力という鎧を着る感覚。火属性魔法は、ちょっと野蛮だけど、自分の体が薪の様に燃える感覚かな」
え、ピアソンさんって魔法使う度に、自傷行為してる感覚で使ってるってこと......?
「ピアソンさん怖い......」
「ええ!? いや、あくまでそういう感覚で使う場合もあるってだけだからね!? 別にいつでもそんな感覚ではないからね!!」
果たして本当だろうか。魔法を使う感覚で真っ先に自分の体が燃えるのを想像するって、だいぶ狂ってると思うんだけど。もしかして魔法使いってみんなこんな感じなの?
「なんか凄い誤解をされている気がする。とにかく!! そう言った情報の紐付けがなされていない状態での魔法行使は出来ない、って事だけわかればそれでいいから!! ほら、それよりも早く探すよ!!」
そういうとピアソンさんは、おそらく魔法関連の本が保管されているであろう場所へとまっすぐ歩いていった。
「ちょっと聞く相手間違ったかな?」
「此処からでも聞こえてるからね!?」
おっと、普通に聞こえていたらしい。まあでも、ピアソンさんはさっきの“感覚の話”を除けば、とても優しい人なので取り敢えず信用してもいい......のかな。
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