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高潔な鬼畜は後悔の底
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ロイを斬り伏せた男はロイを一瞥すると、まだ息があることに気がつく。そして何の躊躇もなく、ロイの背中へ剣を突き立てようとした。
だがその行動は突如として飛来してきた、金属によって狙いをずらされ、地面に突き刺さる結果となった。
「魔力破弾《マナバースト》ッ!!」
「チッ」
男は即座に剣を地面から引き抜き構えをとるが、それと同時にジョンが謎の男に向け魔法を発動した。男は剣と相性の悪い魔法を使われたことによって、一度後ろへ下がるり賞賛の言葉を口にする。
「流石は王国騎士団。たとえ一人になろうとも、冷静さを欠かない」
その言葉の節々には、ジョンを煽るような嘲りの感情が篭っており、ジョンの心を逆撫でした。
「ジョン判断を見誤るな。まずはロイを頼む」
一人で仲間の仇を取ろうとするジョンを、ウィルは落ち着かせる様に静止する。その言葉にジョンは、ハッとした表情を浮かべ謝罪をする。
「ウィルさんすみません。冷静さを欠いていました」
「かまわん。とにかくロイを少し頼む。オレは遠距離攻撃の手段があまり無い、だから代わりにお前が援護してくれ」
ウィルはどさくさで回収した、重症のロイをジョンに渡すと剣を構える。そしてジョンは、ウィルの作戦を聞くと静かに頷いた。
「ウィルさん...おそらくあの男が...」
「砂煙で未だ全容は掴めんが、あいつが今回の標的で間違い無いだろう」
ウィルとジョンの二人は、先ほどの男が下がった場所を注視する。次第に舞い上がった砂煙が晴れ、男の姿が露わとなった。
「お前は......!?」
その姿を視認したウィルは目を大きく開き、驚愕の表情を浮かべた。
「久しぶりだなウィル。お前が道場から逃げて、5年は経ったか?」
目の前に佇む男......ウィルはその男に見覚えがあった。いや、見覚えがあるどころかその男は......
「レジナルド......!?」
その男はウィルと同じく道場で修行を共にした、虎牙流師範ホリスの実子であるレジナルドであった。
「ウィルさん、あの男と知り合いですか?」
「......ああ」
ウィルは未だ混乱する頭をフル回転させ、なぜレジナルドがこの様な愚行をしたのか考える。だが考えても考えても、その答えは出てこない。
「はは、何故俺がこんな事をしているのか、不思議でならない様だな?」
ウィルの姿を眺めていたレジナルドは、眉を顰めた。
「すべてはお前のせいだウィル」
「オレのせい?」
「久しぶりに会ったんだ、ゆっくり話そうじゃ無いか。だがその前に......」
二人の視界に映るレジナルドの姿がブレた。すると突然ウィルとジョンの至る箇所に、軽い切り傷が生まれ二人は一瞬怯む。
「グガッ!?」
怯んだ事で生まれた死角を利用し、レジナルドはジョンへ近づくと背中を大きく斬った。そしてジョンはロイに覆い被さる様にうつ伏せで倒れてしまった。
ピクリとも動かないところを見るに、どうやら絶命している様である。
「コレで邪魔なやつは全員消えたな」
レジナルドは剣を振るって血を落とすと、腰の鞘に剣をしまう。
「レジナルド。何故この様な事を......」
「はは、まだわからないか? その様子だと道場が襲撃されて、俺達以外が皆殺しにされた事も知らない様だな?」
「道場が......襲撃だと? それに皆殺しとはどういう......」
ウィルの疑問はさらに深まった。襲撃はまだわかる。ごく稀だが道場へ挑みにくるものもいたから、だが皆殺しにされるとはどういうことか。
ウィルは師範のホリスや自分ほどでは無いにしろ、同門生は素人にやられるほど柔ではないと知っていた。だが目の前にいるレジナルドの表情を読むに、嘘をついている様には見受けられない。
「俺を疑っている様だが、コレは揺るぎない事実だ」
「一体何故その様なことに......」
「言っただろう。全てお前のせいだ」
未だ事態が飲み込めず困惑したウィルを見て、レジナルドは次第に苛立ちの感情が湧き上がってくる。
「お前が親父《ホリス》を殺したあの日。俺らはすぐにお前を探した。あるものは憤慨しお前を殺すと言い、またある者は何か理由があるのでは無いかと言った」
レジナルドは腰に差した剣の柄頭を、等間隔で軽く叩く姿......この癖にウィルは、師範《ホリス》の面影を感じる。
「だが結局お前を見つける事は叶わず、同門生も諦め始めたある時だ。未だお前を探し帰ってきていなかった者が突然、多くの人達を引き連れ道場に戻ってきた」
「......それからどうなった」
「さっき言った通りだ。襲撃に遭いながらも俺は同門生のお陰で、いのちからがら生き延びることが出来た」
「それはわかった。だが何故この様な事をしたんだ。お前はこの様な、愚かな行為をする男ではなかったはずだ」
ウィルはレジナルドの目をまっすぐ見ながら諭す。だがそれを聞いたレジナルドは、視線を少し下げながら自嘲気味に笑う。
「さあ、どうしてこうなってしまったのだろうな。もしかしたら俺は、お前を恨んでいるのかもしれん」
レジナルドはポツポツと、コレまでの鬱憤を晴らす様に言葉を落とす。
「初めはただ、お前に親父《ホリス》を殺した真相を、聞きたかっただけだった。だがお前を探すうちに、世界を渡り歩いて強者と戦い力をつけ......名声を得る。そんな俺とは真逆の環境にいるお前に、どこかで嫉妬していたのかもしれない」
そう話すレジナルドが柄頭を叩く、スピードと力が不安定になっていく。コレも同じだとどうしてか急に冷めた頭で、ウィルは冷静に分析する。
「ある種の嫌がらせの様なものだった。だがお前の真似をしていくうちに、嫌でもお前と俺の違いがわかってしまった。お前は自らの誇りと生の為に戦う。だが俺は......」
レジナルドはとうとう視線を地面に向け、黙り込んでしまった。そこには自らの不甲斐なさへの羞恥や後悔が感じ取れる。あるいは怒りか。
なんとお労しい。あの高潔な精神の持ち主は、今や殺しと罪悪によって壊れかけてしまっている。だがウィルは知っている。この男がその程度で折れる男では無いと......
ウィルは剣を抜き、レジナルドへ強い視線を向けた。
あの時、師範《ホリス》に向けた様に。
あの時、豪傑《ユーゴ》に向けた様に。
あの時、剣聖《コハク》に向けた様に。
あの時、化物《魔族》に向けた様に。
「それがどうしたというのだ。お前はそんな安い男では無いだろう? 俺は知っている。お前が道場で血反吐を吐きながらも、目標に到達するまでは、決して歩を止めない強さがあると。そして今お前はその目標へと到達したのだ」
レジナルドは前方から感じる、白刃を思わせる冷たい視線に目を合わせた。その目はまるで死人の様に濁り、今や何を映しているのかさえわからないその“眼”を見た。
「ああ、やっぱりお前《ウィル》は......」
「さあ、オレがそうであった様に、鬼《オレ》を討ってみせろ。それでお前の後悔が晴れるのならば」
レジナルドは鞘にしまった剣を抜き、もう片方の手で、近くに落ちていた......自らの剣より幾分か短いロイの剣を拾う。
そして両の腕を大きく広げ、足を交差する様に前後へ出す。他の剣術には存在しない独特な構え。もちろんこの構えをウィルは知っている。そしてこの男が呼ばれる異名も。
「虎牙流“舞《まい》”」
技を唱える“舞鬼《まいおに》”が......美しく高潔な剣技を振るう。まるで扇ぎ舞い散る、木の葉の様な緩やかな動きで。
対する“剣鬼”はただ静かに剣を構え、来るべき衝撃に正面から備える。頼りない筈の細身の剣が、鬼によって堅牢な要塞を思わせる圧を放つ。
「「いざ尋常に」」
この言葉を合図に、二匹の鬼は剣を交えた。
だがその行動は突如として飛来してきた、金属によって狙いをずらされ、地面に突き刺さる結果となった。
「魔力破弾《マナバースト》ッ!!」
「チッ」
男は即座に剣を地面から引き抜き構えをとるが、それと同時にジョンが謎の男に向け魔法を発動した。男は剣と相性の悪い魔法を使われたことによって、一度後ろへ下がるり賞賛の言葉を口にする。
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「ウィルさんすみません。冷静さを欠いていました」
「かまわん。とにかくロイを少し頼む。オレは遠距離攻撃の手段があまり無い、だから代わりにお前が援護してくれ」
ウィルはどさくさで回収した、重症のロイをジョンに渡すと剣を構える。そしてジョンは、ウィルの作戦を聞くと静かに頷いた。
「ウィルさん...おそらくあの男が...」
「砂煙で未だ全容は掴めんが、あいつが今回の標的で間違い無いだろう」
ウィルとジョンの二人は、先ほどの男が下がった場所を注視する。次第に舞い上がった砂煙が晴れ、男の姿が露わとなった。
「お前は......!?」
その姿を視認したウィルは目を大きく開き、驚愕の表情を浮かべた。
「久しぶりだなウィル。お前が道場から逃げて、5年は経ったか?」
目の前に佇む男......ウィルはその男に見覚えがあった。いや、見覚えがあるどころかその男は......
「レジナルド......!?」
その男はウィルと同じく道場で修行を共にした、虎牙流師範ホリスの実子であるレジナルドであった。
「ウィルさん、あの男と知り合いですか?」
「......ああ」
ウィルは未だ混乱する頭をフル回転させ、なぜレジナルドがこの様な愚行をしたのか考える。だが考えても考えても、その答えは出てこない。
「はは、何故俺がこんな事をしているのか、不思議でならない様だな?」
ウィルの姿を眺めていたレジナルドは、眉を顰めた。
「すべてはお前のせいだウィル」
「オレのせい?」
「久しぶりに会ったんだ、ゆっくり話そうじゃ無いか。だがその前に......」
二人の視界に映るレジナルドの姿がブレた。すると突然ウィルとジョンの至る箇所に、軽い切り傷が生まれ二人は一瞬怯む。
「グガッ!?」
怯んだ事で生まれた死角を利用し、レジナルドはジョンへ近づくと背中を大きく斬った。そしてジョンはロイに覆い被さる様にうつ伏せで倒れてしまった。
ピクリとも動かないところを見るに、どうやら絶命している様である。
「コレで邪魔なやつは全員消えたな」
レジナルドは剣を振るって血を落とすと、腰の鞘に剣をしまう。
「レジナルド。何故この様な事を......」
「はは、まだわからないか? その様子だと道場が襲撃されて、俺達以外が皆殺しにされた事も知らない様だな?」
「道場が......襲撃だと? それに皆殺しとはどういう......」
ウィルの疑問はさらに深まった。襲撃はまだわかる。ごく稀だが道場へ挑みにくるものもいたから、だが皆殺しにされるとはどういうことか。
ウィルは師範のホリスや自分ほどでは無いにしろ、同門生は素人にやられるほど柔ではないと知っていた。だが目の前にいるレジナルドの表情を読むに、嘘をついている様には見受けられない。
「俺を疑っている様だが、コレは揺るぎない事実だ」
「一体何故その様なことに......」
「言っただろう。全てお前のせいだ」
未だ事態が飲み込めず困惑したウィルを見て、レジナルドは次第に苛立ちの感情が湧き上がってくる。
「お前が親父《ホリス》を殺したあの日。俺らはすぐにお前を探した。あるものは憤慨しお前を殺すと言い、またある者は何か理由があるのでは無いかと言った」
レジナルドは腰に差した剣の柄頭を、等間隔で軽く叩く姿......この癖にウィルは、師範《ホリス》の面影を感じる。
「だが結局お前を見つける事は叶わず、同門生も諦め始めたある時だ。未だお前を探し帰ってきていなかった者が突然、多くの人達を引き連れ道場に戻ってきた」
「......それからどうなった」
「さっき言った通りだ。襲撃に遭いながらも俺は同門生のお陰で、いのちからがら生き延びることが出来た」
「それはわかった。だが何故この様な事をしたんだ。お前はこの様な、愚かな行為をする男ではなかったはずだ」
ウィルはレジナルドの目をまっすぐ見ながら諭す。だがそれを聞いたレジナルドは、視線を少し下げながら自嘲気味に笑う。
「さあ、どうしてこうなってしまったのだろうな。もしかしたら俺は、お前を恨んでいるのかもしれん」
レジナルドはポツポツと、コレまでの鬱憤を晴らす様に言葉を落とす。
「初めはただ、お前に親父《ホリス》を殺した真相を、聞きたかっただけだった。だがお前を探すうちに、世界を渡り歩いて強者と戦い力をつけ......名声を得る。そんな俺とは真逆の環境にいるお前に、どこかで嫉妬していたのかもしれない」
そう話すレジナルドが柄頭を叩く、スピードと力が不安定になっていく。コレも同じだとどうしてか急に冷めた頭で、ウィルは冷静に分析する。
「ある種の嫌がらせの様なものだった。だがお前の真似をしていくうちに、嫌でもお前と俺の違いがわかってしまった。お前は自らの誇りと生の為に戦う。だが俺は......」
レジナルドはとうとう視線を地面に向け、黙り込んでしまった。そこには自らの不甲斐なさへの羞恥や後悔が感じ取れる。あるいは怒りか。
なんとお労しい。あの高潔な精神の持ち主は、今や殺しと罪悪によって壊れかけてしまっている。だがウィルは知っている。この男がその程度で折れる男では無いと......
ウィルは剣を抜き、レジナルドへ強い視線を向けた。
あの時、師範《ホリス》に向けた様に。
あの時、豪傑《ユーゴ》に向けた様に。
あの時、剣聖《コハク》に向けた様に。
あの時、化物《魔族》に向けた様に。
「それがどうしたというのだ。お前はそんな安い男では無いだろう? 俺は知っている。お前が道場で血反吐を吐きながらも、目標に到達するまでは、決して歩を止めない強さがあると。そして今お前はその目標へと到達したのだ」
レジナルドは前方から感じる、白刃を思わせる冷たい視線に目を合わせた。その目はまるで死人の様に濁り、今や何を映しているのかさえわからないその“眼”を見た。
「ああ、やっぱりお前《ウィル》は......」
「さあ、オレがそうであった様に、鬼《オレ》を討ってみせろ。それでお前の後悔が晴れるのならば」
レジナルドは鞘にしまった剣を抜き、もう片方の手で、近くに落ちていた......自らの剣より幾分か短いロイの剣を拾う。
そして両の腕を大きく広げ、足を交差する様に前後へ出す。他の剣術には存在しない独特な構え。もちろんこの構えをウィルは知っている。そしてこの男が呼ばれる異名も。
「虎牙流“舞《まい》”」
技を唱える“舞鬼《まいおに》”が......美しく高潔な剣技を振るう。まるで扇ぎ舞い散る、木の葉の様な緩やかな動きで。
対する“剣鬼”はただ静かに剣を構え、来るべき衝撃に正面から備える。頼りない筈の細身の剣が、鬼によって堅牢な要塞を思わせる圧を放つ。
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