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契約と疑惑
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「それでは順番に水晶へ手を乗せて下さい」
討伐隊へと志願した5人(1名不在)は、騎士団員の指示に従い従属契約をしていく。先にサラとダレンの契約が終了すると、ロイの出番になる。
初めての契約にロイは、少し緊張したお面持ちで騎士団員が待機しているテーブルに近づくと、用意されていた椅子へ腰をかける。ロイが着席したことを確認した騎士団員は、テーブルの中心に設置された水晶に手をかざしながら指示を出す。
「水晶に手をかざして下さい」
騎士団員は事務的に短い指示を出すと、ロイは水晶へ腕を伸ばす。すると水晶の中心から、水色の淡い光が放たれる。
「それでは契約の内容を説明します。まず前提として当契約は、内容の遂行状況に関わらず、一定期間経過後に自動で終了します」
「一定期間ですか?」
ロイの疑問に騎士団員は静かに頷くと、説明を再開する。
「我々は今回の作戦で虎牙の剣鬼を必ず捕えるつもりではあるが、万が一それが叶わずギルドマンだけが残ってしまった場合、契約の破棄が困難になってしまいます。それに契約が続く限り、あなた方には討伐の義務が課されてしまう。不要な犠牲者を増やさない為にも期間の設定が必須なのです」
「なるほど......」
「因みに期間は2週間とします」
騎士団員の説明に納得したのかロイは、一度頷くと騎士団員が説明を再開した。
「契約内容の説明を再開します。1つ目......当契約は虎牙の剣鬼の完全な無力化または、生命活動の停止をもって完遂とする」
「捕まえるか殺害するかって事でいいんですよね?」
「ええ、その解釈で間違いありません。2つ目......虎牙の剣鬼討伐の作戦行動中は、騎士団員の指示を最優先とする。また生死に直面した場合その限りではない事とする」
「もし騎士様に前線へ向かえと言われたら、逆らってはいけないってことですか?」
「そこについては、次で説明をします。3つ目......これが最後です。騎士団員はギルドマンへの危険度の高い行動は強制できず、ギルドマンの人命を最優先とする。ただし止むおえない場合は、互いの同意を条件に可とする」
ここまでの契約内容をまとめるとこうなる。
1. 目標の達成状況に関わらず、2週間で契約は終了となる
2. 虎牙の剣鬼を捕縛or殺害で、依頼内容を完遂した事とし契約が終了となる
3. 重症者以外は騎士団の命令を、出来る限り守らなければならない。
4. 騎士団はギルドマンへ、危険度の高い命令を極力してはならない。同意があれば命令可能。
まとめるとこんな感じである。内容を頭の中でまとめて考えるロイは、少し引っかかる部分がある気がしたがそれが何かはわからない。
「これが契約の内容です。もし本当に志願するにであれば、水晶へ手をかざしたまま、同意することを名前と共に宣言して下さい」
ロイは騎士団に促され宣言を行う。
「......ロイ・カルウェズはこの契約に同意します!!」
ロイが宣言をすると、淡い水色の光を放っていた水晶が、赤色へと変化する。
「......これで契約は完了です。ではロイ・カルウェズさん。これは私の私情ではありますが、決して無茶をすることはおやめ下さいね?」
「......これって契約ではないんですよね? それならちょっと、約束しかねます。ごめんなさい」
騎士団員は暫くの間黙ってロイの目を見つめるが、その思いが変わる事がないと察すると、溜息を吐きながら頷く。
「あなたの覚悟はわかりました。ですがこれは貴方を心配することだけではないのです。無茶をした結果、仲間に致命的な迷惑をかける場合があります。それだけは忘れない様にお願いします」
「はい。わかりました」
ロイはそう短く返事すると、席を立ち3人が待つ場所へ戻って行った。それに入れ替わる様に今度はウィルが来て椅子に座る。
「それではこちらの水晶に手をかざして下さい」
「ああ、わかった」
・
・
・
数分後ウィルの契約も滞りなく済むと、3人の元へ戻ってきた。それを確認したアルベルトは、また異様に響く大声で志願者を募る。
その声に反応した数人が契約をする為に、テーブルへと向かってゆくのが見える。どうやらロイ達の様子を見て、考えを改めた者達が数人いる様だ。
「戻った」
すでに先ほどまで酒を飲んでいた席で雑談を始めていた3人に、ウィルは短く挨拶をして席に着く。
「おかえりなさい。ウィルさんはさっきの契約内容についてどう思った?」
サラは戻ってきたばかりのウィルへ契約内容に関しての質問をする。ウィルは食べかけだった乾燥肉を、一口噛み千切り水で胃へ流し込むと一息ついた。
「......妙に騎士団側の利益が少なく感じた」
「やっぱりそうよねぇ?」
すでに酔いが覚めたサラは、酒を頼んで空になったコップを弄りながら呟く。
「王国主導の契約にしては、私たちへの制約が少ないのよね。戦闘の命令だってあれなら拒否できちゃうし、一体何が目的なのかしらね」
そう言いながら手元に新しい酒が運ばれてくると、グイッっと酒を煽る様に飲んだ。
「サラあまり飲みすぎないでね」
「わかってるわよ。それよりも下手をしたら数日中には、討伐隊の募集も打ち切られると思うし、明日は準備しなきゃね」
そう言うとサラは、コップに残った酒を飲飲み干し席を立った。それに続く様にダレンも立ち上がると、ウィルとロイに別れの挨拶をする。
「それじゃあ、俺たちは一旦宿へ戻りますね。ロイ君もちゃんと体を休めなければダメだよ?」
ふと時計の針を見ると、既に陽が落ちてかなりの時間が経っていることがわかる。
「そうだな。オレたちも一度戻って休むとしよう」
「はい先生。サラさん、ダレンさんおやすみなさい!! デビットさんが目覚めたらよろしく伝えて下さい!!」
ロイが元気よく別れを告げると二人は笑顔で手を振りギルドを後にした。そして二人を見送ったウィルとロイは、テーブルに置かれた残りの乾燥肉を咥えながら席を立つ。
「ふぇんふぇい、ひょうは...いて!?」
「行儀が悪い。咥えながら喋るな」
ロイの口元から乾燥肉を引き抜くと、ウィルはそれを咥えて食べ始める。その光景にロイはジト目で抗議する。
「先生、絶対お肉が食べたかっただけですよね......?」
「......」
「ああっ!! 食べてるからって無視してますね!?」
ロイはどうにか乾燥肉を取り返そうとするが、身長差があるウィルがロイの頭を押さえているせいで届かない。最終的に諦めたロイであったが、トボトボ歩きながら恨み言を吐く。
「先生、食べ物の恨みは怖いですよ......ムグッ!?」
「はぁ......お前は静かに出来ないのか?」
ロイは観念した様に乾燥肉を半分に裂くと、ロイの口に突っ込む。最初は驚いていたものの、すぐにロイは幸せそうな表情をしながら肉の味を堪能しだした。
ウィルは再度溜め息を吐くと、ロイ同様に肉の味を噛み締めながら帰路についた。
討伐隊へと志願した5人(1名不在)は、騎士団員の指示に従い従属契約をしていく。先にサラとダレンの契約が終了すると、ロイの出番になる。
初めての契約にロイは、少し緊張したお面持ちで騎士団員が待機しているテーブルに近づくと、用意されていた椅子へ腰をかける。ロイが着席したことを確認した騎士団員は、テーブルの中心に設置された水晶に手をかざしながら指示を出す。
「水晶に手をかざして下さい」
騎士団員は事務的に短い指示を出すと、ロイは水晶へ腕を伸ばす。すると水晶の中心から、水色の淡い光が放たれる。
「それでは契約の内容を説明します。まず前提として当契約は、内容の遂行状況に関わらず、一定期間経過後に自動で終了します」
「一定期間ですか?」
ロイの疑問に騎士団員は静かに頷くと、説明を再開する。
「我々は今回の作戦で虎牙の剣鬼を必ず捕えるつもりではあるが、万が一それが叶わずギルドマンだけが残ってしまった場合、契約の破棄が困難になってしまいます。それに契約が続く限り、あなた方には討伐の義務が課されてしまう。不要な犠牲者を増やさない為にも期間の設定が必須なのです」
「なるほど......」
「因みに期間は2週間とします」
騎士団員の説明に納得したのかロイは、一度頷くと騎士団員が説明を再開した。
「契約内容の説明を再開します。1つ目......当契約は虎牙の剣鬼の完全な無力化または、生命活動の停止をもって完遂とする」
「捕まえるか殺害するかって事でいいんですよね?」
「ええ、その解釈で間違いありません。2つ目......虎牙の剣鬼討伐の作戦行動中は、騎士団員の指示を最優先とする。また生死に直面した場合その限りではない事とする」
「もし騎士様に前線へ向かえと言われたら、逆らってはいけないってことですか?」
「そこについては、次で説明をします。3つ目......これが最後です。騎士団員はギルドマンへの危険度の高い行動は強制できず、ギルドマンの人命を最優先とする。ただし止むおえない場合は、互いの同意を条件に可とする」
ここまでの契約内容をまとめるとこうなる。
1. 目標の達成状況に関わらず、2週間で契約は終了となる
2. 虎牙の剣鬼を捕縛or殺害で、依頼内容を完遂した事とし契約が終了となる
3. 重症者以外は騎士団の命令を、出来る限り守らなければならない。
4. 騎士団はギルドマンへ、危険度の高い命令を極力してはならない。同意があれば命令可能。
まとめるとこんな感じである。内容を頭の中でまとめて考えるロイは、少し引っかかる部分がある気がしたがそれが何かはわからない。
「これが契約の内容です。もし本当に志願するにであれば、水晶へ手をかざしたまま、同意することを名前と共に宣言して下さい」
ロイは騎士団に促され宣言を行う。
「......ロイ・カルウェズはこの契約に同意します!!」
ロイが宣言をすると、淡い水色の光を放っていた水晶が、赤色へと変化する。
「......これで契約は完了です。ではロイ・カルウェズさん。これは私の私情ではありますが、決して無茶をすることはおやめ下さいね?」
「......これって契約ではないんですよね? それならちょっと、約束しかねます。ごめんなさい」
騎士団員は暫くの間黙ってロイの目を見つめるが、その思いが変わる事がないと察すると、溜息を吐きながら頷く。
「あなたの覚悟はわかりました。ですがこれは貴方を心配することだけではないのです。無茶をした結果、仲間に致命的な迷惑をかける場合があります。それだけは忘れない様にお願いします」
「はい。わかりました」
ロイはそう短く返事すると、席を立ち3人が待つ場所へ戻って行った。それに入れ替わる様に今度はウィルが来て椅子に座る。
「それではこちらの水晶に手をかざして下さい」
「ああ、わかった」
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数分後ウィルの契約も滞りなく済むと、3人の元へ戻ってきた。それを確認したアルベルトは、また異様に響く大声で志願者を募る。
その声に反応した数人が契約をする為に、テーブルへと向かってゆくのが見える。どうやらロイ達の様子を見て、考えを改めた者達が数人いる様だ。
「戻った」
すでに先ほどまで酒を飲んでいた席で雑談を始めていた3人に、ウィルは短く挨拶をして席に着く。
「おかえりなさい。ウィルさんはさっきの契約内容についてどう思った?」
サラは戻ってきたばかりのウィルへ契約内容に関しての質問をする。ウィルは食べかけだった乾燥肉を、一口噛み千切り水で胃へ流し込むと一息ついた。
「......妙に騎士団側の利益が少なく感じた」
「やっぱりそうよねぇ?」
すでに酔いが覚めたサラは、酒を頼んで空になったコップを弄りながら呟く。
「王国主導の契約にしては、私たちへの制約が少ないのよね。戦闘の命令だってあれなら拒否できちゃうし、一体何が目的なのかしらね」
そう言いながら手元に新しい酒が運ばれてくると、グイッっと酒を煽る様に飲んだ。
「サラあまり飲みすぎないでね」
「わかってるわよ。それよりも下手をしたら数日中には、討伐隊の募集も打ち切られると思うし、明日は準備しなきゃね」
そう言うとサラは、コップに残った酒を飲飲み干し席を立った。それに続く様にダレンも立ち上がると、ウィルとロイに別れの挨拶をする。
「それじゃあ、俺たちは一旦宿へ戻りますね。ロイ君もちゃんと体を休めなければダメだよ?」
ふと時計の針を見ると、既に陽が落ちてかなりの時間が経っていることがわかる。
「そうだな。オレたちも一度戻って休むとしよう」
「はい先生。サラさん、ダレンさんおやすみなさい!! デビットさんが目覚めたらよろしく伝えて下さい!!」
ロイが元気よく別れを告げると二人は笑顔で手を振りギルドを後にした。そして二人を見送ったウィルとロイは、テーブルに置かれた残りの乾燥肉を咥えながら席を立つ。
「ふぇんふぇい、ひょうは...いて!?」
「行儀が悪い。咥えながら喋るな」
ロイの口元から乾燥肉を引き抜くと、ウィルはそれを咥えて食べ始める。その光景にロイはジト目で抗議する。
「先生、絶対お肉が食べたかっただけですよね......?」
「......」
「ああっ!! 食べてるからって無視してますね!?」
ロイはどうにか乾燥肉を取り返そうとするが、身長差があるウィルがロイの頭を押さえているせいで届かない。最終的に諦めたロイであったが、トボトボ歩きながら恨み言を吐く。
「先生、食べ物の恨みは怖いですよ......ムグッ!?」
「はぁ......お前は静かに出来ないのか?」
ロイは観念した様に乾燥肉を半分に裂くと、ロイの口に突っ込む。最初は驚いていたものの、すぐにロイは幸せそうな表情をしながら肉の味を堪能しだした。
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