31 / 74
知らない天井だ
しおりを挟む
目を覚ますとまず初めに目に入ったのは、見知らぬ天井だった。
「ここは…」
ウィルは妙に気怠い身体を起こしながら、周囲を確認する。どうやら今いるのは宿屋のようだ。それも普段ウィルが利用するような安宿ではなく、それなりの身分の者たちが泊まるような高級宿。
「一体どうなっている。確かオレは魔族に吹き飛ばされて…」
そう呟くと突然頭が痛み始める。まるで何かに殴られたような鈍い痛みが襲い、その痛みにウィルは頭を抑える。
頭を抑えれていると部屋の扉が開き、騒がしい声が聞こえてきた。
「あっ!?先生起きたんですか!?」
そう叫びながら部屋に入ってきたロイにウィルは手を向けて制止する。
「…余り大きな声を出すな」
「す、すみません」
ロイはとっさに口抑えて小さな声で謝る。
「…オレはどれくらい眠っていた?」
「えーと、大体5日間くらいですかね」
どうやらあの魔族に吹き飛ばされて、5日間も眠っていたようだ。ウィルは先程から感じている気怠さに納得した。
「そうか…それでロイ」
「はい、なんですか?」
「どうやってこんないい部屋をとったんだ? 流石にここまでいい部屋を取れるほどの金はなかったはずだが」
「それが…僕たちがあの魔族に襲われた後にロバートさんが…」
ロイはここ5日間で起こった出来事を説明した。
•
•
•
「つまりロバート達が目覚めたあとオレたちに治癒魔法をかけて助けたと」
「はい。それからは先生が眠っている2日間で今いる目的地前の…嵐が直撃したという村に行ったんです」
「そうか。それでここはその村なのか?」
「いえ、ここはグラズバの街です。あの街には結局大した被害はなかったようだったので、軽く調べた後に直ぐ村を後にしました」
「それでこの街についたら、ルークさんの知り合いがやっている宿屋があるらしく、そこに宿泊出来るよう手配してもらいました」
「それがこの宿屋ということか。やはり騎士団は金があるな」
「そうですよね。ここのご飯すごい美味しんですよ!! 知ってました?ブナハ茸って毒を抜けばすごい美味しいんですよ!!」
初めて宿泊する高級宿にロイはテンションが上がっていた。そんなロイの話を聞きながらウィルは、自分の体に起きている変化について考えを巡らしていた。
(…体が思うように動かない。飢餓による倦怠感とは別物の違和感。一体俺の体はどうしてしまったんだ?)
ウィルの異変に気がついたのか、ロイは慌てて体調を確認してくる。
「先生もしかしてまだ体調が悪いんですか!? 何か薬とか持ってきたほうがいいですかね。
ここには医療施設もありますので、もう一度医者に見てもらったほうが…」
心配するロイは慌ただしくウィルの周りを動き回る。
「…いや、体調は悪くない。逆に体調は良好だ。ただ少し体に倦怠感があるくらいだ。もう少し休めば良くなるだろう」
「そうですか...あまり無理はしないでくださいよ? 僕の武器選び手伝ってほしいんですから!!」
ロイはさも当たり前の様に武器をウィルに選んでもらおうとしていた。その様子にウィルはため息を吐きながら説教を始める。
「言っておくが、使う武器は自分で選ぶものだ。他人に頼るようではいずれ大きな失敗をすることになるぞ。オレが休んでいる間にいくつか武器を試してこい」
「はーい…フフフッ」
「なんだ。何かおかしな事でも言ったか?」
「いえ、先生すっかり元通りですね?」
ロイは少し嬉しそうに笑うが、当のウィルは困惑した顔を浮かべていた。
「まだ元通りではない。だがすぐ動けるようになるから、治ったら次にお前の修行を付ける場所に連れて行く」
「やった!!どこで修行ですか!? でもここにそんな修行できそうなスペースはなさそうですけど…?」
ロイはコロコロと表情を替えながらウィルの発言に反応する。
「なんだまだこの街をちゃんとみていないのか?」
「ええ、実は僕もさっきまで騎士団の皆さんに訓練をしてもらってたので…それにどうせ周るなら先生と一緒がいいかなーて」
「はぁ...修行に真面目なのは良いがたまには息抜きも大切だ。気を張り詰めすぎるとなにかが起こった時に疲労で上手く動けなくなる。何事も極端なのはいかん」
「わかりました!! それで先生、修行の場所って?」
「本当にわかっているのか…? まあ良い、この街の修業場所と言ったらもちろん…」
「…ヘルメの闘技場だ」
「ここは…」
ウィルは妙に気怠い身体を起こしながら、周囲を確認する。どうやら今いるのは宿屋のようだ。それも普段ウィルが利用するような安宿ではなく、それなりの身分の者たちが泊まるような高級宿。
「一体どうなっている。確かオレは魔族に吹き飛ばされて…」
そう呟くと突然頭が痛み始める。まるで何かに殴られたような鈍い痛みが襲い、その痛みにウィルは頭を抑える。
頭を抑えれていると部屋の扉が開き、騒がしい声が聞こえてきた。
「あっ!?先生起きたんですか!?」
そう叫びながら部屋に入ってきたロイにウィルは手を向けて制止する。
「…余り大きな声を出すな」
「す、すみません」
ロイはとっさに口抑えて小さな声で謝る。
「…オレはどれくらい眠っていた?」
「えーと、大体5日間くらいですかね」
どうやらあの魔族に吹き飛ばされて、5日間も眠っていたようだ。ウィルは先程から感じている気怠さに納得した。
「そうか…それでロイ」
「はい、なんですか?」
「どうやってこんないい部屋をとったんだ? 流石にここまでいい部屋を取れるほどの金はなかったはずだが」
「それが…僕たちがあの魔族に襲われた後にロバートさんが…」
ロイはここ5日間で起こった出来事を説明した。
•
•
•
「つまりロバート達が目覚めたあとオレたちに治癒魔法をかけて助けたと」
「はい。それからは先生が眠っている2日間で今いる目的地前の…嵐が直撃したという村に行ったんです」
「そうか。それでここはその村なのか?」
「いえ、ここはグラズバの街です。あの街には結局大した被害はなかったようだったので、軽く調べた後に直ぐ村を後にしました」
「それでこの街についたら、ルークさんの知り合いがやっている宿屋があるらしく、そこに宿泊出来るよう手配してもらいました」
「それがこの宿屋ということか。やはり騎士団は金があるな」
「そうですよね。ここのご飯すごい美味しんですよ!! 知ってました?ブナハ茸って毒を抜けばすごい美味しいんですよ!!」
初めて宿泊する高級宿にロイはテンションが上がっていた。そんなロイの話を聞きながらウィルは、自分の体に起きている変化について考えを巡らしていた。
(…体が思うように動かない。飢餓による倦怠感とは別物の違和感。一体俺の体はどうしてしまったんだ?)
ウィルの異変に気がついたのか、ロイは慌てて体調を確認してくる。
「先生もしかしてまだ体調が悪いんですか!? 何か薬とか持ってきたほうがいいですかね。
ここには医療施設もありますので、もう一度医者に見てもらったほうが…」
心配するロイは慌ただしくウィルの周りを動き回る。
「…いや、体調は悪くない。逆に体調は良好だ。ただ少し体に倦怠感があるくらいだ。もう少し休めば良くなるだろう」
「そうですか...あまり無理はしないでくださいよ? 僕の武器選び手伝ってほしいんですから!!」
ロイはさも当たり前の様に武器をウィルに選んでもらおうとしていた。その様子にウィルはため息を吐きながら説教を始める。
「言っておくが、使う武器は自分で選ぶものだ。他人に頼るようではいずれ大きな失敗をすることになるぞ。オレが休んでいる間にいくつか武器を試してこい」
「はーい…フフフッ」
「なんだ。何かおかしな事でも言ったか?」
「いえ、先生すっかり元通りですね?」
ロイは少し嬉しそうに笑うが、当のウィルは困惑した顔を浮かべていた。
「まだ元通りではない。だがすぐ動けるようになるから、治ったら次にお前の修行を付ける場所に連れて行く」
「やった!!どこで修行ですか!? でもここにそんな修行できそうなスペースはなさそうですけど…?」
ロイはコロコロと表情を替えながらウィルの発言に反応する。
「なんだまだこの街をちゃんとみていないのか?」
「ええ、実は僕もさっきまで騎士団の皆さんに訓練をしてもらってたので…それにどうせ周るなら先生と一緒がいいかなーて」
「はぁ...修行に真面目なのは良いがたまには息抜きも大切だ。気を張り詰めすぎるとなにかが起こった時に疲労で上手く動けなくなる。何事も極端なのはいかん」
「わかりました!! それで先生、修行の場所って?」
「本当にわかっているのか…? まあ良い、この街の修業場所と言ったらもちろん…」
「…ヘルメの闘技場だ」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~
ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。
いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。
テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。
そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。
『強制フラグを、立てますか?』
その言葉自体を知らないわけじゃない。
だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ?
聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。
混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。
しかも、ちょっとだけ違うセリフで。
『強制フラグを立てますよ? いいですね?』
その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。
「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」
今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。
結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。
『強制フラグを立てました』
その声と、ほぼ同時に。
高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、
女子高生と禁断の恋愛?
しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。
いやいや。俺、そんなセリフ言わないし!
甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって!
俺のイメージが崩れる一方なんだけど!
……でも、この娘、いい子なんだよな。
っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか?
「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」
このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい?
誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる