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異変は再び
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「ちょっ…先生これすごいヒリヒリします!!」
ロイの抗議も虚しくウィルは黙々と傷口に軟膏を塗っていく。その度にヒリヒリと痛む傷口にロイは悶えていた。
「それはアズナ草の軟膏です。傷口は少しヒリつくとは思いますが効果は折り紙付きですよ」
「アズナ草か。確か龍脈に生えている薬草だったか?」
「よくご存知ですね。王国ではあまり流通していない物なのでご存知ないかと思っていましたが」
「むかし法国へいったことがあるのでな。そのときに商人たちが重宝していると聞いた」
ウィルの話を聞きなるほどとレヴィルは納得した。対してロイは得体のしれない薬をからだに塗られ、尚且つなんとか我慢できるくらいの微妙な痛みを持続的に受けているせいで話の内容をまったく理解できないでいた。
「えーと?つまり傷には効くってことでいいんですよね?イテテ…」
「ええ、私達もよく使いますので間違いなく効きますよ。それは保証します!!」
そう言いながらレヴィルは悶えるロイの背中をさする。しかしそこは先程の魔法で傷を負った箇所であり、手でさすった瞬間ロイの背中に電流が流れたような痛みが走る。
「あっ、レヴィルさんそこ傷が…イテテテッ!?」
「ああっ!?ご、ごめんなさい!!」
「…なにをやっているんだお前らは?」
二人の真面目なのか巫山戯ているのか判断に困る対応を見てウィルは呆れながらため息を吐く。
三人が戯れていると馬車の先頭で頭領らしき男を制圧していたロバートがやってくる。
「お疲れ様です。まさかお二人が加勢してくれるとは思いもしませんでした。お陰で楽ができました」
相変わらずの胡散臭い笑顔で人話しかけてくきたのは、いまいる騎士団のリーダーを務めるロバートであった。
「それで何故襲われたんだ?」
単刀直入に聞くウィルの発言にロイも疑問が浮かぶ。そもそも今回移動しているルートは賊を避けて迂回しているルートだった筈で、遭遇する可能性は限りなく低いはずである。
「もしかして僕たちを狙って来たとか?」
「それがですね…どうやら彼らは我々がここを通ることを知っていたようです。」
その発言にロイとレヴィルは驚く。
「それじゃあやっぱり!?」
「いえ、狙ったのは我々ではなく元々ここらを通る予定だった別の馬車だったようです」
ロバートはそう言いながら開拓村で見せてきた資料をもう一度渡してくる。
「これは先日見せてもらった手配書の一覧ですよね?」
ロイの質問にロバートは静かに頷く。
「彼らが狙っていた馬車は、他に隊が捕まえた彼らの仲間を乗せた馬車だったようです。つまり我々がここを偶々通ったことで、彼らは目的の馬車と勘違いし襲いかかってきたようです」
「なーんだ。じゃあ心配のし過ぎですね」
「ええ、でもあそこの男。そしてレヴィルが殺した男。そしてそこの魔法使いは指名手配中の賊をでした。結局捕縛できたのは一人だけでしたがね」
「え…」
「レヴィルさん。指名手配の顔と名前くらいは覚えておいて下さいね」
「は、はい!!申し訳ありません!!」
レヴィルがロバートに勢いよく頭を下げている光景にロイは…
「人ってあんなにスピーディに頭を下げれるんですね?先生はアレってできますか」
そんな的はずれな事を考えながらウィルへ質問していた。しかし問に対して答えが返ってこない事を不審に思ったロイはウィルの方を見る。
他の二人も異変に気がついたのか周囲を見渡すが何も見えない。いや…異常なほど何も感じないのである。
林道であれば本来聴こえるはずの動物の鳴き声や虫のさざめきすら聞こえない。
辺りは不気味なほどの静寂がウィル達のいる世界を支配していた。
「先生どうしました?」
「…ロイ。剣を抜いて周囲を警戒しろ」
その異変を一番に察知したウィルは真剣な表情でロイに指示を出す。
「…何かが来る」
そういうのと同時に木々の隙間から人より一回りほどの大きさの影が飛び出す。
そしてそれ見た賊の頭領、ジョン•コールマンは声高らかに叫ぶ。
「来たぞ!!我らが守護者!! 我らの仲間を連れ去った不遜な態度の騎士団共を蹴散らしてくれ!!」
そして大きな黒い影がコールマンのそばに着地する。そしてその姿を見た全員が戦慄する。
「これは…参りましたね…」
ロバートは先程までの笑顔が完全に消え失せ、その聡明な頭脳で現状を打壊する術を探す…
「な、何でこいつが!?」「おいおい嘘だろ!?」
他の騎士団員はその状況を上手く飲み込めずに固まり…
「せ、先生…こいつはまさか…」
「ああ…こいつは」
悪い予感が頭をよぎる中ロイが恐る恐るウィルへと質問する。その悪い予感が当たらないでくれと必死に祈りつつ…
しかし現実は非情だ。その祈りはウィルの発言によって粉々に打ち砕かれる。
「獣人種…それも俺等が戦った産まれたての個体とはまるで格が違う。正真正銘の化け物だ」
ロイの抗議も虚しくウィルは黙々と傷口に軟膏を塗っていく。その度にヒリヒリと痛む傷口にロイは悶えていた。
「それはアズナ草の軟膏です。傷口は少しヒリつくとは思いますが効果は折り紙付きですよ」
「アズナ草か。確か龍脈に生えている薬草だったか?」
「よくご存知ですね。王国ではあまり流通していない物なのでご存知ないかと思っていましたが」
「むかし法国へいったことがあるのでな。そのときに商人たちが重宝していると聞いた」
ウィルの話を聞きなるほどとレヴィルは納得した。対してロイは得体のしれない薬をからだに塗られ、尚且つなんとか我慢できるくらいの微妙な痛みを持続的に受けているせいで話の内容をまったく理解できないでいた。
「えーと?つまり傷には効くってことでいいんですよね?イテテ…」
「ええ、私達もよく使いますので間違いなく効きますよ。それは保証します!!」
そう言いながらレヴィルは悶えるロイの背中をさする。しかしそこは先程の魔法で傷を負った箇所であり、手でさすった瞬間ロイの背中に電流が流れたような痛みが走る。
「あっ、レヴィルさんそこ傷が…イテテテッ!?」
「ああっ!?ご、ごめんなさい!!」
「…なにをやっているんだお前らは?」
二人の真面目なのか巫山戯ているのか判断に困る対応を見てウィルは呆れながらため息を吐く。
三人が戯れていると馬車の先頭で頭領らしき男を制圧していたロバートがやってくる。
「お疲れ様です。まさかお二人が加勢してくれるとは思いもしませんでした。お陰で楽ができました」
相変わらずの胡散臭い笑顔で人話しかけてくきたのは、いまいる騎士団のリーダーを務めるロバートであった。
「それで何故襲われたんだ?」
単刀直入に聞くウィルの発言にロイも疑問が浮かぶ。そもそも今回移動しているルートは賊を避けて迂回しているルートだった筈で、遭遇する可能性は限りなく低いはずである。
「もしかして僕たちを狙って来たとか?」
「それがですね…どうやら彼らは我々がここを通ることを知っていたようです。」
その発言にロイとレヴィルは驚く。
「それじゃあやっぱり!?」
「いえ、狙ったのは我々ではなく元々ここらを通る予定だった別の馬車だったようです」
ロバートはそう言いながら開拓村で見せてきた資料をもう一度渡してくる。
「これは先日見せてもらった手配書の一覧ですよね?」
ロイの質問にロバートは静かに頷く。
「彼らが狙っていた馬車は、他に隊が捕まえた彼らの仲間を乗せた馬車だったようです。つまり我々がここを偶々通ったことで、彼らは目的の馬車と勘違いし襲いかかってきたようです」
「なーんだ。じゃあ心配のし過ぎですね」
「ええ、でもあそこの男。そしてレヴィルが殺した男。そしてそこの魔法使いは指名手配中の賊をでした。結局捕縛できたのは一人だけでしたがね」
「え…」
「レヴィルさん。指名手配の顔と名前くらいは覚えておいて下さいね」
「は、はい!!申し訳ありません!!」
レヴィルがロバートに勢いよく頭を下げている光景にロイは…
「人ってあんなにスピーディに頭を下げれるんですね?先生はアレってできますか」
そんな的はずれな事を考えながらウィルへ質問していた。しかし問に対して答えが返ってこない事を不審に思ったロイはウィルの方を見る。
他の二人も異変に気がついたのか周囲を見渡すが何も見えない。いや…異常なほど何も感じないのである。
林道であれば本来聴こえるはずの動物の鳴き声や虫のさざめきすら聞こえない。
辺りは不気味なほどの静寂がウィル達のいる世界を支配していた。
「先生どうしました?」
「…ロイ。剣を抜いて周囲を警戒しろ」
その異変を一番に察知したウィルは真剣な表情でロイに指示を出す。
「…何かが来る」
そういうのと同時に木々の隙間から人より一回りほどの大きさの影が飛び出す。
そしてそれ見た賊の頭領、ジョン•コールマンは声高らかに叫ぶ。
「来たぞ!!我らが守護者!! 我らの仲間を連れ去った不遜な態度の騎士団共を蹴散らしてくれ!!」
そして大きな黒い影がコールマンのそばに着地する。そしてその姿を見た全員が戦慄する。
「これは…参りましたね…」
ロバートは先程までの笑顔が完全に消え失せ、その聡明な頭脳で現状を打壊する術を探す…
「な、何でこいつが!?」「おいおい嘘だろ!?」
他の騎士団員はその状況を上手く飲み込めずに固まり…
「せ、先生…こいつはまさか…」
「ああ…こいつは」
悪い予感が頭をよぎる中ロイが恐る恐るウィルへと質問する。その悪い予感が当たらないでくれと必死に祈りつつ…
しかし現実は非情だ。その祈りはウィルの発言によって粉々に打ち砕かれる。
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