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殺陣
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「全員配置につけ!!周囲に隠れている賊にも警戒!!」
マーカスが大声で馬車の周囲で護衛している騎士団員に命令する。その命令を聞くやいなや騎士団員は先程までのおおらかな雰囲気から一転、騎士団前とした雰囲気へと変化する。
「流石王国騎士団だな?一筋縄じゃいかないか。ならば…」
そう言いながら馬車の正面に立つ賊の頭領らしき男が何やら笛の様な物を取り出す。
そして頭領らしき男は笛を吹く動作をするが、音は聞こえずマーカスや他の騎士団も困惑する。
「壊れているようだな。それでその笛を吹くとどうなるんだ」
マーカスの問いに男は不敵な笑みを浮かべながら大声で叫ぶ。
「へへへ…それはこの後のお楽しみだぜ。さあ、お前ら派手に暴れろ!!」
男の号令を皮切りに周囲に隠れていた賊の仲間達が一斉にすがたを表す。
「完全に囲まれましたね。それにあの男は指名手配されているジョン•コールマンですよね」
「んー正直面倒くさいんだけど…目の前に現れたからには、捕まえるしか無いだろうね」
マーカスは若干怠そうに答えるが、質問をしたルークはため息を吐きながら激励する。
「まったく貴方は…さあ、シャキシャキ働きますよ!!」
「いやぁ…ルークは本当に騎士団の鑑ですねぇ。仕方ない久しぶりにちゃんと働きましょうか」
「さっきからごちゃごちゃ言ってるが、聞こえてるからな!? 舐めやがって…!!」
ジョン•コールマンと呼ばれた男は二人の会話にいらだちを覚え、叫びながら剣を向けてくる。
「さあ、王国騎士団三番隊副隊長の本気。得と味わって下さい!!」
•
•
•
「レヴィルさん!!僕も一緒に戦います!!」
「えっロイ様!?危ないですので馬車の中にお戻り下さい!!」
馬車の中から本来守るべき対象のロイが意気揚々と出てきたことにレヴィルは驚愕する。しかしそんなレヴィルに苦笑いしながら…
「先生に戦ってこいと追い出されちゃって…なんの戦果もなしに戻ったら、お尻蹴られちゃいますから一緒に戦わせて下さい!!」
「お、お尻を蹴られる…わ、わかりました。ですが無理は絶対しないようにしてください!! ロイ様は我々の護衛対象なのですから…」
「はい!!でも僕も足を引っ張るつもりはありませんので!!」
ロイは澄んだ目でレヴィルを真っ直ぐに見つめ宣誓する。そんなロイにレヴィルは確か何か覚悟を感じた。
「…覚悟を決めた貴方を止めるのは無粋というものですね。では我々はそこの5人を仕留めます」
「言っといてなんですが…数は不利ですね。作戦とかあります?」
ロイの質問にレヴィルは笑みを浮かべる。
「そんなモノはありません。即興で行きましょう!!」
「…レヴィルさんって意外と天才肌なんだ」
「?」
ロイの発言にいまいちピンとこないレヴィルだったが、そんな二人を待っていた賊はとうとうしびれを切らす。
「てめぇらさっきから無視しやがって…おいお前ら行くぞ!!」
「「おお!!」」
賊は一斉にレヴィルとロイに襲いかかってくる。
「うぇ!? なんで僕に4人も突っ込んで来るんですか!?」
「ロイ様!! そういうことか…!!」
レヴィルは一人の賊を相手取る。普段であればすぐに片付け加勢できるのだが、今回の敵は今までとは違い確かな実力を持っていた。
「私を足止めして護衛対象を抹殺するつもりですね!!」
「今更気づいてももう遅い!!そのガキを殺してからお前を全員で叩く!!」
レヴィルは内心焦りながらも賊の攻撃を的確にガードし反撃をする。しかし賊は深追いはせず足止めだけを狙った戦法を取っていた。
(このままではロイさんがマズイ!!)
レヴィルが焦る一方でロイはと言うと…
「ちょっと!?子供相手に4人は大人げないじゃん!?」
「はっ!!ガキだろうが騎士団に護衛されてるってことは相当金を持ってるんだろ!!殺して俺達が貰ってやるぜ!!」
そういいながら賊が正面から二人左右に別れながら詰めてくる。
(右が上段…左が袈裟懸け…)
発言の焦り方とは裏腹にロイは冷静に相手の動きを見極める。そしてロイの予想通り右の賊は上段に切りかかっている。
(左に避けるのはマズイ。一旦距離を取って…)
そこまで考えてロイはウィルとの稽古で言われたことを思い出す。
『お前は少し消極的すぎるな』
(何やってるんだよ俺…それじゃあ前と同じだろ!!)
思考を巡らせる最中も相手は着実に近づいてくる。このまま動かなければ、後ほんの数瞬で相手の凶刃は確実にロイの頭を真っ二つにするだろう。
(クソ! なるようになれだ!!)
ロイは迫りくる賊にあえて近づく。急に迫ってきた賊は驚きはするものの、すぐに我に返り間合いに入ったロイの頭目掛けて剣を振り下ろす。
しかしその剣はロイに当たることはなく空を切る。
「なにっ!?」
「まずは一人目だ!!」
ロイの頭目掛けて全力で振り下ろした賊は、ロイの攻撃に反応出来ず両の腕を切り落とされた。
「がアァァああ!?」
男は切られた腕を見ながらあまりの激痛からうずくまってしまう。
そしてその背後からべつの賊が詰めてきていた。ロイはその賊を視認すると徐ろに、うずくまった男の顎を強化魔法をかけた足で蹴り上げる。
「ぐげっ!?」 「おわっ!?」
うずくまっていた男は後ろの男のところまで吹っ飛び衝突する。そしてその光景を見て左にいた賊が一瞬固まったのをロイは見逃さなかった。
「隙ありだああ!!」
ロイはすぐにその男に突進する。男は剣で反撃しようとするも、強化魔法をかけた足で高速突進してきたロイに突き飛ばされる。
「クソッ!?」 「これで二人目!!」
ロイは賊の胸に剣を突き刺す。
賊の口から「ドプッ」と音を立て血が流れ出る。その光景にロイは確実に致命傷となった事を察し次の賊に目を向ける。
(なんだ…この人たちあんまり強くない?)
ロイは先日の激闘と比べ、何処か拍子抜けした戦いに困惑する。しかし今はそんな事を考えている暇など無いとすぐに気持ちを切り替える。
「なんなんだこのガキ!?」
「どうやらただのボンボンじゃねえみたいだな。おい、オレに合わせろ!!」
そう言いながら賊は手をこちらに向けてくる。ロイは瞬時にそれが魔法発動時の構えだと気がつく。
「炎撃珠!!」
男は魔法を唱えると手のひらから人の頭部と同じくらいの大きさがある火の玉を作り出しロイ目掛けて発射する。それと同時にもう一人の賊が右側から詰めてくる。
(魔法を使えるなんて聞いてないぞ…!!)
「ガキがくたばれ!!」
万事休す。しかしその火の玉がロイに触れる事はなく道半ばで破裂する。
「なんだ!?」
ロイは周囲を見渡そうとするが、聞き覚えのある声でそれを静止される。
「ロイ様!!よそ見は禁物です!!」
「もう遅い!!」
意識を右から迫る賊に戻そうとするロイだったが、それよりも先に賊の剣がロイに迫る…
「な…!?」
しかしこの剣も先程の腕を切られた男同様に空を切る。
「戦場では利用できるものは何でも使え…ですよ!!」
ロイは空振った男の腕もろとも腹部を深々と切り裂く。切られた男の腹部からは、ズリュ…と腸が垂れ下がり、恥部付近から血と汚物の混ざった液体が足を伝って垂れている。
「これで三人目」
そう言い最後の賊を探そうとしたその時、先程の魔法を放った族の声と同時にロイの背後から強烈な破裂音が鳴る。
どうやら回り込まれていたらしい。
「炎柱!!」
「あっっt!?」
それと同時にレヴィルが相対していた賊を斬り伏せ、ロイの加勢に行こうとする。
「ロイ様!?」
言葉にならない激痛が一瞬だけロイの背中に広がる。しかしこの程度の激痛ではロイ心はまだ折れない。すぐに後ろにいる敵を視認するが…
「え…」
敵を視認したロイとレヴィルの思考が一瞬だけ完全に停止する。それは…後ろに立って不意をついてきた筈の敵が、既に頭部が無くなり膝を地面に付きうなだれていたからだ。
そしてその後ろには無機質な…まるでそこらに転がっている死人のような【眼】をした鬼が立っていた。
「せ…先生…」
「及第点だな。」
ロイとレヴィルはその言葉に気がつくと既にウィルの目がいつも通りになっていた。
「他もどうやら決着がついたらしい」
ウィルが馬車の正面方向を見やると、うつ伏せに倒れながら喚き散らす賊の頭領らしき男がルークに捕縛されていた。
「ロイ背中を見せてみろ」
「は、はい」
ウィルはロイの服をまくり傷口を確認する。
「軽度の火傷はあるが大事には至っていないな。あんた確かレヴィル…だったか?」
「ひゃい…!?何でしょうか!?」
突然話を振られたレヴィルは心臓が跳ね上がり声が裏返ってしまう。
「軟膏かなにか持ってないか?」
「えっと…後ろの馬車の荷台にいくつかあります」
「そうか。使っても構わないか?」
「もちろんお使いいただいた構いません」
「そうか。では探してくる」
「は、はい…」
本来は場所のわかるレヴィルが行くべきなのだが、完全に頭からその事が抜けていた。それだけレヴィルにとって衝撃的な光景であった。
(なんて恐ろしいほどの技のキレ…でも)
「綺麗でしょ?先生の技」
「はい…えっ!?」
無意識に返事をしたレヴィルは頬を少し赤くし慌てて口を塞ぐ。
「も…申し訳ありません!!私ったら…でもどうして私が考えてることが?」
「僕も先生に技を初めて見た時に思いましたもん」
そう言いながらロイは初めてあったときの何処迄もマイペースで不思議と惹かれる姿…それでいて何よりも恐ろしいその姿を思い出しながら、馬車の荷台に消えていくウィルを眺めていた。
(ロイ様…もしかしてソッチの気が…!?)
そしてちょっと…いや、だいぶズレた勘違いをしているレヴィルなのであった。
マーカスが大声で馬車の周囲で護衛している騎士団員に命令する。その命令を聞くやいなや騎士団員は先程までのおおらかな雰囲気から一転、騎士団前とした雰囲気へと変化する。
「流石王国騎士団だな?一筋縄じゃいかないか。ならば…」
そう言いながら馬車の正面に立つ賊の頭領らしき男が何やら笛の様な物を取り出す。
そして頭領らしき男は笛を吹く動作をするが、音は聞こえずマーカスや他の騎士団も困惑する。
「壊れているようだな。それでその笛を吹くとどうなるんだ」
マーカスの問いに男は不敵な笑みを浮かべながら大声で叫ぶ。
「へへへ…それはこの後のお楽しみだぜ。さあ、お前ら派手に暴れろ!!」
男の号令を皮切りに周囲に隠れていた賊の仲間達が一斉にすがたを表す。
「完全に囲まれましたね。それにあの男は指名手配されているジョン•コールマンですよね」
「んー正直面倒くさいんだけど…目の前に現れたからには、捕まえるしか無いだろうね」
マーカスは若干怠そうに答えるが、質問をしたルークはため息を吐きながら激励する。
「まったく貴方は…さあ、シャキシャキ働きますよ!!」
「いやぁ…ルークは本当に騎士団の鑑ですねぇ。仕方ない久しぶりにちゃんと働きましょうか」
「さっきからごちゃごちゃ言ってるが、聞こえてるからな!? 舐めやがって…!!」
ジョン•コールマンと呼ばれた男は二人の会話にいらだちを覚え、叫びながら剣を向けてくる。
「さあ、王国騎士団三番隊副隊長の本気。得と味わって下さい!!」
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「レヴィルさん!!僕も一緒に戦います!!」
「えっロイ様!?危ないですので馬車の中にお戻り下さい!!」
馬車の中から本来守るべき対象のロイが意気揚々と出てきたことにレヴィルは驚愕する。しかしそんなレヴィルに苦笑いしながら…
「先生に戦ってこいと追い出されちゃって…なんの戦果もなしに戻ったら、お尻蹴られちゃいますから一緒に戦わせて下さい!!」
「お、お尻を蹴られる…わ、わかりました。ですが無理は絶対しないようにしてください!! ロイ様は我々の護衛対象なのですから…」
「はい!!でも僕も足を引っ張るつもりはありませんので!!」
ロイは澄んだ目でレヴィルを真っ直ぐに見つめ宣誓する。そんなロイにレヴィルは確か何か覚悟を感じた。
「…覚悟を決めた貴方を止めるのは無粋というものですね。では我々はそこの5人を仕留めます」
「言っといてなんですが…数は不利ですね。作戦とかあります?」
ロイの質問にレヴィルは笑みを浮かべる。
「そんなモノはありません。即興で行きましょう!!」
「…レヴィルさんって意外と天才肌なんだ」
「?」
ロイの発言にいまいちピンとこないレヴィルだったが、そんな二人を待っていた賊はとうとうしびれを切らす。
「てめぇらさっきから無視しやがって…おいお前ら行くぞ!!」
「「おお!!」」
賊は一斉にレヴィルとロイに襲いかかってくる。
「うぇ!? なんで僕に4人も突っ込んで来るんですか!?」
「ロイ様!! そういうことか…!!」
レヴィルは一人の賊を相手取る。普段であればすぐに片付け加勢できるのだが、今回の敵は今までとは違い確かな実力を持っていた。
「私を足止めして護衛対象を抹殺するつもりですね!!」
「今更気づいてももう遅い!!そのガキを殺してからお前を全員で叩く!!」
レヴィルは内心焦りながらも賊の攻撃を的確にガードし反撃をする。しかし賊は深追いはせず足止めだけを狙った戦法を取っていた。
(このままではロイさんがマズイ!!)
レヴィルが焦る一方でロイはと言うと…
「ちょっと!?子供相手に4人は大人げないじゃん!?」
「はっ!!ガキだろうが騎士団に護衛されてるってことは相当金を持ってるんだろ!!殺して俺達が貰ってやるぜ!!」
そういいながら賊が正面から二人左右に別れながら詰めてくる。
(右が上段…左が袈裟懸け…)
発言の焦り方とは裏腹にロイは冷静に相手の動きを見極める。そしてロイの予想通り右の賊は上段に切りかかっている。
(左に避けるのはマズイ。一旦距離を取って…)
そこまで考えてロイはウィルとの稽古で言われたことを思い出す。
『お前は少し消極的すぎるな』
(何やってるんだよ俺…それじゃあ前と同じだろ!!)
思考を巡らせる最中も相手は着実に近づいてくる。このまま動かなければ、後ほんの数瞬で相手の凶刃は確実にロイの頭を真っ二つにするだろう。
(クソ! なるようになれだ!!)
ロイは迫りくる賊にあえて近づく。急に迫ってきた賊は驚きはするものの、すぐに我に返り間合いに入ったロイの頭目掛けて剣を振り下ろす。
しかしその剣はロイに当たることはなく空を切る。
「なにっ!?」
「まずは一人目だ!!」
ロイの頭目掛けて全力で振り下ろした賊は、ロイの攻撃に反応出来ず両の腕を切り落とされた。
「がアァァああ!?」
男は切られた腕を見ながらあまりの激痛からうずくまってしまう。
そしてその背後からべつの賊が詰めてきていた。ロイはその賊を視認すると徐ろに、うずくまった男の顎を強化魔法をかけた足で蹴り上げる。
「ぐげっ!?」 「おわっ!?」
うずくまっていた男は後ろの男のところまで吹っ飛び衝突する。そしてその光景を見て左にいた賊が一瞬固まったのをロイは見逃さなかった。
「隙ありだああ!!」
ロイはすぐにその男に突進する。男は剣で反撃しようとするも、強化魔法をかけた足で高速突進してきたロイに突き飛ばされる。
「クソッ!?」 「これで二人目!!」
ロイは賊の胸に剣を突き刺す。
賊の口から「ドプッ」と音を立て血が流れ出る。その光景にロイは確実に致命傷となった事を察し次の賊に目を向ける。
(なんだ…この人たちあんまり強くない?)
ロイは先日の激闘と比べ、何処か拍子抜けした戦いに困惑する。しかし今はそんな事を考えている暇など無いとすぐに気持ちを切り替える。
「なんなんだこのガキ!?」
「どうやらただのボンボンじゃねえみたいだな。おい、オレに合わせろ!!」
そう言いながら賊は手をこちらに向けてくる。ロイは瞬時にそれが魔法発動時の構えだと気がつく。
「炎撃珠!!」
男は魔法を唱えると手のひらから人の頭部と同じくらいの大きさがある火の玉を作り出しロイ目掛けて発射する。それと同時にもう一人の賊が右側から詰めてくる。
(魔法を使えるなんて聞いてないぞ…!!)
「ガキがくたばれ!!」
万事休す。しかしその火の玉がロイに触れる事はなく道半ばで破裂する。
「なんだ!?」
ロイは周囲を見渡そうとするが、聞き覚えのある声でそれを静止される。
「ロイ様!!よそ見は禁物です!!」
「もう遅い!!」
意識を右から迫る賊に戻そうとするロイだったが、それよりも先に賊の剣がロイに迫る…
「な…!?」
しかしこの剣も先程の腕を切られた男同様に空を切る。
「戦場では利用できるものは何でも使え…ですよ!!」
ロイは空振った男の腕もろとも腹部を深々と切り裂く。切られた男の腹部からは、ズリュ…と腸が垂れ下がり、恥部付近から血と汚物の混ざった液体が足を伝って垂れている。
「これで三人目」
そう言い最後の賊を探そうとしたその時、先程の魔法を放った族の声と同時にロイの背後から強烈な破裂音が鳴る。
どうやら回り込まれていたらしい。
「炎柱!!」
「あっっt!?」
それと同時にレヴィルが相対していた賊を斬り伏せ、ロイの加勢に行こうとする。
「ロイ様!?」
言葉にならない激痛が一瞬だけロイの背中に広がる。しかしこの程度の激痛ではロイ心はまだ折れない。すぐに後ろにいる敵を視認するが…
「え…」
敵を視認したロイとレヴィルの思考が一瞬だけ完全に停止する。それは…後ろに立って不意をついてきた筈の敵が、既に頭部が無くなり膝を地面に付きうなだれていたからだ。
そしてその後ろには無機質な…まるでそこらに転がっている死人のような【眼】をした鬼が立っていた。
「せ…先生…」
「及第点だな。」
ロイとレヴィルはその言葉に気がつくと既にウィルの目がいつも通りになっていた。
「他もどうやら決着がついたらしい」
ウィルが馬車の正面方向を見やると、うつ伏せに倒れながら喚き散らす賊の頭領らしき男がルークに捕縛されていた。
「ロイ背中を見せてみろ」
「は、はい」
ウィルはロイの服をまくり傷口を確認する。
「軽度の火傷はあるが大事には至っていないな。あんた確かレヴィル…だったか?」
「ひゃい…!?何でしょうか!?」
突然話を振られたレヴィルは心臓が跳ね上がり声が裏返ってしまう。
「軟膏かなにか持ってないか?」
「えっと…後ろの馬車の荷台にいくつかあります」
「そうか。使っても構わないか?」
「もちろんお使いいただいた構いません」
「そうか。では探してくる」
「は、はい…」
本来は場所のわかるレヴィルが行くべきなのだが、完全に頭からその事が抜けていた。それだけレヴィルにとって衝撃的な光景であった。
(なんて恐ろしいほどの技のキレ…でも)
「綺麗でしょ?先生の技」
「はい…えっ!?」
無意識に返事をしたレヴィルは頬を少し赤くし慌てて口を塞ぐ。
「も…申し訳ありません!!私ったら…でもどうして私が考えてることが?」
「僕も先生に技を初めて見た時に思いましたもん」
そう言いながらロイは初めてあったときの何処迄もマイペースで不思議と惹かれる姿…それでいて何よりも恐ろしいその姿を思い出しながら、馬車の荷台に消えていくウィルを眺めていた。
(ロイ様…もしかしてソッチの気が…!?)
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