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三流の剣士
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マーカスは剣を目線の高さまで上げ、剣先をウィルに向けながら水平に構える。王国騎士団の基本的な構えとは異なるその構えは、どちらかといえば刀神流の構えに酷似しているように感じた。
「剣神流か?」
ウィルの問をマーカスは否定する。
「いいえ。私の流派は刀神流です」
「聞かぬ流派だな」
「それはそうでしょう。なんせこの流派を継承しているのはこの国の中で数人だけですから」
ウィルとロイはマーカスが語る刀神流と言う名の流派を知らない。それもそのはずである、そもそも刀神流などという流派は存在しないからである。
なら何故そんなすぐバレるような嘘をつくのか? その答えをマーカスの付き人として同行した騎士の一人は理解した。
「なるほどな。マーカスさんも考えたな」
「おいどういうことだ?」
「マーカスさんはあのウィルと名乗る男を試すつもりだ」
「そりゃあ騎士団に推薦しようってんだからそうだろう」
「そういうことじゃない。良いから見ておけ」
困惑する残りの騎士団メンバーはただ暴走しているようにしか見えないマーカスを眺めていることしかできなかった。
当然現在の状況を見極めかねていたロイも騎士団同様に困惑しながら見守っていた。
「いったい何をするつもりだ…たとえ小細工をしても先生はきっと簡単に対処してしまうだろうし…」
場の緊張が高まる最中に居ながらも全く動じないウィルにマーカスはまず軽く攻撃を仕掛ける。
「では、行きます!!」
先程の構えの状態で、重心をやや前屈気味で下げる。そして次の瞬間…
「それはオレには通じない」
ガキンッ!!
と金属が激しくぶつかる音がしたかと思うと…先程までマーカスの居た位置には既に誰もおらず視点を音のする方へ向けると、そこにはウィルと鍔迫り合いをしているマーカスの姿があった。
「これでも騎士団随一の速さなんですがね…目では終えてなかったはずですが、どうやったんですか?」
「目で見えたものしか防げない奴は三流だ」
「アハハッ!! それだと騎士団の殆どが三流になってしまいます…ねっ!!」
マーカスはそう話ながら鍔迫り合いでウィルを押し退け、蹴りを食らわせる。
しかしウィルもその蹴りを軽くガードし、今度はマーカスに向けて剣を構える。
「やっとやる気になりましたか?」
「ちょっとした小手調べだ。さあ、遠慮はいらない俺を殺す気で来い」
いつもと違い少し感情的な声を発するウィルにロイは少し違和感を覚える。
(先生が冷静さを欠いている…それだけの相手ってことなのかな?)
「いいですね。本当に貴方は面白い。ではそろそろ本気でいきますね!!」
マーカスがそういうのと同時に全身から魔力がみなぎり始める。その量は誰がどう見ても素人が出せる量を大幅に超えていた。
(マーカスって男はまさか魔法使いだったのか!? こんな魔力量の化け物相手に先生はどうするつもりだ!?)
強化魔法は魔力量が多ければ多いほど耐久力と攻撃力を増す。つまり魔力量が少なければ相手に攻撃を通すことができない。
「さあ、どうしますか!!」
マーカスは先程までとは違う意味で素早く動きウィルとの距離を潰す。そしてウィルが剣で反撃する瞬間に素早く後ろへ回り込む。
「それでは私を捉えることはできませんよ!!」
「…そうだろうな」
マーカスは回り込んで隙が多い下半身めがけて剣を振るう。しかしこれはウィルが前方へと大きく移動したことで外れる。
「案外素早いのですね?」
「お前ほどではないさ」
「褒められてる気がしませんね」
「それはそうだろう。皮肉っているだけだからな」
一度距離を取って仕切り直しとなった二人は軽口をたたきながら、相手の出方を探る。
(ウィルさんは先程からカウンターを狙うばかり、コチラに攻めてくる気配が一切ありませんね? たった2度の攻防でこちらの動きに対応しつつあるのを見ると、あまり悠長に事を構えるのは得策ではありませんね…)
「どうした、それで終わりか? ならコチラから行かせてもらうぞ!!」
そう言うと今度はウィルから距離を縮め攻撃を繰り出してくる。
「っ!? 」
(私が考えに耽った瞬間攻めてきた。これは偶然か!?)
「どうした、心此処に非ずといった感じだな?」
「気にしないで下さい。職業病みたいなものですから」
「それは…命取りになるぞ!!」
ウィルの攻撃を避けるマーカスに追撃の蹴りを放つ。マーカスは完全にいなし切れず腹部へと蹴りを食らってしまった。
「ぐっ!? いい蹴りですね…」
蹴りによって内臓を痛めたか少し吐血するマーカス。ロイはその攻防を見て一つ疑問が浮かぶ。
(なんで魔力量が少ない先生の攻撃が効いてるんだ!?)
先程からウィルから学んだ知識と重ね合わせると、ウィルの攻撃は本来マーカスへは効かないはずである。
しかし実際はマーカスの攻撃はウィルに容易に防がれ、ウィルの蹴りはマーカスへの有効打となった。
「そろそろ終わらせようか」
ウィルはそう呟き剣を構えながら徐々に近づく。蹴りによりよろめくマーカスであったが、ウィルが近づいてくるのを確認すると剣を構え直し魔力をもう一度漲らせる。
「来いっ!!」
「言われなくても…」
お互いの間合いに入る。そして…
「くらえ!!」
マーカスは間合いに入った瞬間限界まで後ろに引いて剣先をウィルに向けた構えの状態から一気に剣を喉元へ向け放つ。
【剣神流 雷光一閃】
それは剣神流でもっとも有名な技。それは雷を彷彿とさせる鋭く荒々しい最速の剣技。熟練の達人が放つその剣を見て避けれるものは存在しないとまで言われる絶技。
「やっぱりあの人の流派は剣神流のだったのか...先生!!」
ロイの叫びが届くよりも疾くマーカスの剣はウィルの喉を貫く…筈だった。
「なっ!?」
「言ったろう。目に見えぬモノを防げぬのは三流だとな」
喉に刺さるはずだった剣は喉元を大きく外れた顔の横で止まっていた。そして…
「これでオレの勝ちだな?」
そしてウィルの剣が逆にマーカスの喉元へと突きつけられていた。
「先生の…勝ちですっ!!」
誰もが息を呑み黙り込む中、ロイはすかさずウィルの勝ちを高らかに宣言した。
「剣神流か?」
ウィルの問をマーカスは否定する。
「いいえ。私の流派は刀神流です」
「聞かぬ流派だな」
「それはそうでしょう。なんせこの流派を継承しているのはこの国の中で数人だけですから」
ウィルとロイはマーカスが語る刀神流と言う名の流派を知らない。それもそのはずである、そもそも刀神流などという流派は存在しないからである。
なら何故そんなすぐバレるような嘘をつくのか? その答えをマーカスの付き人として同行した騎士の一人は理解した。
「なるほどな。マーカスさんも考えたな」
「おいどういうことだ?」
「マーカスさんはあのウィルと名乗る男を試すつもりだ」
「そりゃあ騎士団に推薦しようってんだからそうだろう」
「そういうことじゃない。良いから見ておけ」
困惑する残りの騎士団メンバーはただ暴走しているようにしか見えないマーカスを眺めていることしかできなかった。
当然現在の状況を見極めかねていたロイも騎士団同様に困惑しながら見守っていた。
「いったい何をするつもりだ…たとえ小細工をしても先生はきっと簡単に対処してしまうだろうし…」
場の緊張が高まる最中に居ながらも全く動じないウィルにマーカスはまず軽く攻撃を仕掛ける。
「では、行きます!!」
先程の構えの状態で、重心をやや前屈気味で下げる。そして次の瞬間…
「それはオレには通じない」
ガキンッ!!
と金属が激しくぶつかる音がしたかと思うと…先程までマーカスの居た位置には既に誰もおらず視点を音のする方へ向けると、そこにはウィルと鍔迫り合いをしているマーカスの姿があった。
「これでも騎士団随一の速さなんですがね…目では終えてなかったはずですが、どうやったんですか?」
「目で見えたものしか防げない奴は三流だ」
「アハハッ!! それだと騎士団の殆どが三流になってしまいます…ねっ!!」
マーカスはそう話ながら鍔迫り合いでウィルを押し退け、蹴りを食らわせる。
しかしウィルもその蹴りを軽くガードし、今度はマーカスに向けて剣を構える。
「やっとやる気になりましたか?」
「ちょっとした小手調べだ。さあ、遠慮はいらない俺を殺す気で来い」
いつもと違い少し感情的な声を発するウィルにロイは少し違和感を覚える。
(先生が冷静さを欠いている…それだけの相手ってことなのかな?)
「いいですね。本当に貴方は面白い。ではそろそろ本気でいきますね!!」
マーカスがそういうのと同時に全身から魔力がみなぎり始める。その量は誰がどう見ても素人が出せる量を大幅に超えていた。
(マーカスって男はまさか魔法使いだったのか!? こんな魔力量の化け物相手に先生はどうするつもりだ!?)
強化魔法は魔力量が多ければ多いほど耐久力と攻撃力を増す。つまり魔力量が少なければ相手に攻撃を通すことができない。
「さあ、どうしますか!!」
マーカスは先程までとは違う意味で素早く動きウィルとの距離を潰す。そしてウィルが剣で反撃する瞬間に素早く後ろへ回り込む。
「それでは私を捉えることはできませんよ!!」
「…そうだろうな」
マーカスは回り込んで隙が多い下半身めがけて剣を振るう。しかしこれはウィルが前方へと大きく移動したことで外れる。
「案外素早いのですね?」
「お前ほどではないさ」
「褒められてる気がしませんね」
「それはそうだろう。皮肉っているだけだからな」
一度距離を取って仕切り直しとなった二人は軽口をたたきながら、相手の出方を探る。
(ウィルさんは先程からカウンターを狙うばかり、コチラに攻めてくる気配が一切ありませんね? たった2度の攻防でこちらの動きに対応しつつあるのを見ると、あまり悠長に事を構えるのは得策ではありませんね…)
「どうした、それで終わりか? ならコチラから行かせてもらうぞ!!」
そう言うと今度はウィルから距離を縮め攻撃を繰り出してくる。
「っ!? 」
(私が考えに耽った瞬間攻めてきた。これは偶然か!?)
「どうした、心此処に非ずといった感じだな?」
「気にしないで下さい。職業病みたいなものですから」
「それは…命取りになるぞ!!」
ウィルの攻撃を避けるマーカスに追撃の蹴りを放つ。マーカスは完全にいなし切れず腹部へと蹴りを食らってしまった。
「ぐっ!? いい蹴りですね…」
蹴りによって内臓を痛めたか少し吐血するマーカス。ロイはその攻防を見て一つ疑問が浮かぶ。
(なんで魔力量が少ない先生の攻撃が効いてるんだ!?)
先程からウィルから学んだ知識と重ね合わせると、ウィルの攻撃は本来マーカスへは効かないはずである。
しかし実際はマーカスの攻撃はウィルに容易に防がれ、ウィルの蹴りはマーカスへの有効打となった。
「そろそろ終わらせようか」
ウィルはそう呟き剣を構えながら徐々に近づく。蹴りによりよろめくマーカスであったが、ウィルが近づいてくるのを確認すると剣を構え直し魔力をもう一度漲らせる。
「来いっ!!」
「言われなくても…」
お互いの間合いに入る。そして…
「くらえ!!」
マーカスは間合いに入った瞬間限界まで後ろに引いて剣先をウィルに向けた構えの状態から一気に剣を喉元へ向け放つ。
【剣神流 雷光一閃】
それは剣神流でもっとも有名な技。それは雷を彷彿とさせる鋭く荒々しい最速の剣技。熟練の達人が放つその剣を見て避けれるものは存在しないとまで言われる絶技。
「やっぱりあの人の流派は剣神流のだったのか...先生!!」
ロイの叫びが届くよりも疾くマーカスの剣はウィルの喉を貫く…筈だった。
「なっ!?」
「言ったろう。目に見えぬモノを防げぬのは三流だとな」
喉に刺さるはずだった剣は喉元を大きく外れた顔の横で止まっていた。そして…
「これでオレの勝ちだな?」
そしてウィルの剣が逆にマーカスの喉元へと突きつけられていた。
「先生の…勝ちですっ!!」
誰もが息を呑み黙り込む中、ロイはすかさずウィルの勝ちを高らかに宣言した。
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