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ロイと別れ冒険者ギルドへと向かうウィル。道中で通行人に奇異の目で見られはしたが、特にアクシデントもなく無事に冒険者ギルドへと辿り着いた。
中へと入ると何度か見かけたギルドマンや行商人の一団が数人いるばかりであった。
ウィルが入口から姿を表すとそれに気がついた受付嬢…先日依頼を受ける際に受付をしていた娘が焦るようにこちらへと駆けてきた。
「ウィルさんご無事でしたか!!」
何やら焦る様子の娘にウィルは落ち着かせるようにゆっくり話す。
「あまり焦って走ると転けるぞ。なにかあったのか?」
ウィルが自分を気遣って対応してくれているのに気がついた受付嬢は少し恥じらうようにしたかと思うと、ハッとした表情を浮かべながら冷静さを取り繕うように話し出す。
「実はウィルさんとロイ君が依頼に向かった森周辺で魔族の目撃報告が入ったんです!!」
深刻そうに話す受付嬢。数位をよく見てみると行商人の集団は何処か疲弊している様子の者がいたり、ギルドマンに至っては決して軽くはない怪我をしている様子だった。
「そのことだg「なので今お二人を探すために数名のギルドマンが森を巡回していたところだったんです!!」…」
ウィルの報告を無視して一方的に話し続ける受付嬢にウィルは少しうんざりしながら、一度気が済むまで話をさせてから報告すれば良いか…と結論づけ情報収集も兼ねて話を聞くことにした。
「魔族はとても危険でもしお二人に何かあったらと思うと気が気じゃなくて…あっ!?すみません、私みたいな若者なんかにこんな事言われても困りますよね!?」
「いや、お気遣い感謝する。それよりも森を捜索しているギルドマンにアレックスという名の男は出動しているか?」
ウィルがそう言うと奥で休んでいるギルドマンの何人かが反応する様に顔を上げた。確認すると先日ロイと依頼の受付した際に酒を飲んでいたギルドマンの二人組のようだった。
「アレックスさんですか?確かに今森を捜索中だとは思いますが…それがなにか?」
受付嬢は少し困惑した顔をする。その時奥にいた二人組の内一人がこちらに近づいて話しかけてきた。
「…おい、あんた。アレックスを森で見かけたのか…?」
ロイが先日はなしていた内の一人がこの男だとしたら恐らくアレックスの仲間だと見ていいだろう。
(さて、どうするべきか…)
男を向いてなにか考え込む素振りをし黙ったウィルに対して、男は何かを察したのか唇を震わせながら話始める。
「あいつは俺がギルドマンを始めた頃からの同期で、今まで色んなとこを旅してきた…」
男は手を強く握りしめるながら話し続ける。
「旅の中で俺たちは色々な馬鹿もやった。こんな事やってたらいつかは死ぬかも知れないとわかっていながらも…」
「俺たちは覚悟して冒険者となったんだ。碌な死に方なんてしないのはわかっている…だから…」
「教えてくれ…アレックスは死んだのか…?」
強く握った男の手には血が滲んでいる。それだけこの男とアレックスというギルドマンは強い絆で結ばれていたんだろう。
俺はこれ以上隠すことは無礼だと思い、今回起こった事の顛末を洗いざらい話した。
「…そうか。あの坊主…ロイとあんたがアレックスの仇を取ってくれたのか…ありがとう」
「俺がやったのは止めだけだ。殆どはロイが一人でヤッた。」
「ハハハ…あんた見た目に反して意外といいやつなんだな。最初見た時は裏稼業の連中の仲間かと思ってたが…」
「…これに関しては生まれつきなものでな」
「いや、別にあんたを貶したわけじゃない。俺等の恩人をバカになんかでできんさ」
「さっきも言ったがオレは…」
「あんたが死体を見つけてくれなきゃアレックスが死んだかどうかすらわからなかったんだ。感謝してもしきれない」
「…そうか」
そう話すとギルドマン…マーカスはもう一人のいる席へと戻っていった。そして…
「オレが言うのも何だが…その顔どうにかしたほうが良いぞ」
ウィルは滝のような涙を流す受付嬢に対して若干引きながら話す。
「だって…この間まで元気だったアレックスさんが…」
「それは仕方ないことだこれが自然を相手にするということ。彼らもそれは覚悟していた。後はあんたらがしっかり対応してアレックスという男と魔族の死体を迅速に処理し少しでも早くあの2人に安心させてやれ」
「…!? はい!!」
そう言って受付嬢は建物の奥へ向かっていった。
「この腕…渡すのをすっかり忘れていた」
ウィルが小さく呟きつつどうしようかと悩んでいると、横から別の女性から声をかけられた。
「あなたがウィルさんね?」
その声がする方へ向くと、さっきの娘と同じ格好をしている別の女性が立っていた。
「ごめんなさいね。あの子まだ入ったばっかしで色々迷惑かけちゃって…」
申し訳無さそうに話す受付嬢にウィルは先程までと違い無感情に話す。
「気にするな。それよりお前もここの職員ということでいいんだな?」
「ええそうよ」
「ならこの腕を預かってくれ」
「これは?」
「殺した魔族の腕だ」
「…魔族は強い魔力を撒き散らしているから獣なんかに荒らされる心配はないわ。それに周囲に巻き散らかされる魔力で行商人の馬も怖がって動かなくなってしまうの」
「だから次からはこういった物はできるだけ持ち込まないようにして頂戴ね? 持ってくるにしても耳とか少量で頼むわ」
「…わかった。次からはそうする」
「わかったならいいわ。今日は遅いから明日アレックス君や魔族の死体の捜索を行うわ。もちろんあなたにも来て貰う必要があるのだけど、それは大丈夫かしら?」
「ロイは重症だからオレだけになるがそれでも良いか?」
「ええ、構わないわ。それとしばらくしたら王国騎士団が調査に来るから、ロイ君だっけ? その子の怪我はその時に魔法師に治してもらうといいわ。私から伝えておいてあげる」
「何から何まで済まないな。あんたの名は…」
「私の名はキアラ•ヴァルベリーニよ。気軽にキアラと呼んで頂戴」
「それと魔法師のことは気にしなくていいわ。それだけのことをあなた達はしてくれたんだもの」
「そうか…ありがとうキアラ」
「どういたしまして。それじゃあ明日、日が昇ったらまたここに来て頂戴」
「わかった」
無感情にそう言いうとウィルは宿屋へ帰っていった。そしてキアラもそんなウィルの後ろ姿をただ黙って見つめていた。
中へと入ると何度か見かけたギルドマンや行商人の一団が数人いるばかりであった。
ウィルが入口から姿を表すとそれに気がついた受付嬢…先日依頼を受ける際に受付をしていた娘が焦るようにこちらへと駆けてきた。
「ウィルさんご無事でしたか!!」
何やら焦る様子の娘にウィルは落ち着かせるようにゆっくり話す。
「あまり焦って走ると転けるぞ。なにかあったのか?」
ウィルが自分を気遣って対応してくれているのに気がついた受付嬢は少し恥じらうようにしたかと思うと、ハッとした表情を浮かべながら冷静さを取り繕うように話し出す。
「実はウィルさんとロイ君が依頼に向かった森周辺で魔族の目撃報告が入ったんです!!」
深刻そうに話す受付嬢。数位をよく見てみると行商人の集団は何処か疲弊している様子の者がいたり、ギルドマンに至っては決して軽くはない怪我をしている様子だった。
「そのことだg「なので今お二人を探すために数名のギルドマンが森を巡回していたところだったんです!!」…」
ウィルの報告を無視して一方的に話し続ける受付嬢にウィルは少しうんざりしながら、一度気が済むまで話をさせてから報告すれば良いか…と結論づけ情報収集も兼ねて話を聞くことにした。
「魔族はとても危険でもしお二人に何かあったらと思うと気が気じゃなくて…あっ!?すみません、私みたいな若者なんかにこんな事言われても困りますよね!?」
「いや、お気遣い感謝する。それよりも森を捜索しているギルドマンにアレックスという名の男は出動しているか?」
ウィルがそう言うと奥で休んでいるギルドマンの何人かが反応する様に顔を上げた。確認すると先日ロイと依頼の受付した際に酒を飲んでいたギルドマンの二人組のようだった。
「アレックスさんですか?確かに今森を捜索中だとは思いますが…それがなにか?」
受付嬢は少し困惑した顔をする。その時奥にいた二人組の内一人がこちらに近づいて話しかけてきた。
「…おい、あんた。アレックスを森で見かけたのか…?」
ロイが先日はなしていた内の一人がこの男だとしたら恐らくアレックスの仲間だと見ていいだろう。
(さて、どうするべきか…)
男を向いてなにか考え込む素振りをし黙ったウィルに対して、男は何かを察したのか唇を震わせながら話始める。
「あいつは俺がギルドマンを始めた頃からの同期で、今まで色んなとこを旅してきた…」
男は手を強く握りしめるながら話し続ける。
「旅の中で俺たちは色々な馬鹿もやった。こんな事やってたらいつかは死ぬかも知れないとわかっていながらも…」
「俺たちは覚悟して冒険者となったんだ。碌な死に方なんてしないのはわかっている…だから…」
「教えてくれ…アレックスは死んだのか…?」
強く握った男の手には血が滲んでいる。それだけこの男とアレックスというギルドマンは強い絆で結ばれていたんだろう。
俺はこれ以上隠すことは無礼だと思い、今回起こった事の顛末を洗いざらい話した。
「…そうか。あの坊主…ロイとあんたがアレックスの仇を取ってくれたのか…ありがとう」
「俺がやったのは止めだけだ。殆どはロイが一人でヤッた。」
「ハハハ…あんた見た目に反して意外といいやつなんだな。最初見た時は裏稼業の連中の仲間かと思ってたが…」
「…これに関しては生まれつきなものでな」
「いや、別にあんたを貶したわけじゃない。俺等の恩人をバカになんかでできんさ」
「さっきも言ったがオレは…」
「あんたが死体を見つけてくれなきゃアレックスが死んだかどうかすらわからなかったんだ。感謝してもしきれない」
「…そうか」
そう話すとギルドマン…マーカスはもう一人のいる席へと戻っていった。そして…
「オレが言うのも何だが…その顔どうにかしたほうが良いぞ」
ウィルは滝のような涙を流す受付嬢に対して若干引きながら話す。
「だって…この間まで元気だったアレックスさんが…」
「それは仕方ないことだこれが自然を相手にするということ。彼らもそれは覚悟していた。後はあんたらがしっかり対応してアレックスという男と魔族の死体を迅速に処理し少しでも早くあの2人に安心させてやれ」
「…!? はい!!」
そう言って受付嬢は建物の奥へ向かっていった。
「この腕…渡すのをすっかり忘れていた」
ウィルが小さく呟きつつどうしようかと悩んでいると、横から別の女性から声をかけられた。
「あなたがウィルさんね?」
その声がする方へ向くと、さっきの娘と同じ格好をしている別の女性が立っていた。
「ごめんなさいね。あの子まだ入ったばっかしで色々迷惑かけちゃって…」
申し訳無さそうに話す受付嬢にウィルは先程までと違い無感情に話す。
「気にするな。それよりお前もここの職員ということでいいんだな?」
「ええそうよ」
「ならこの腕を預かってくれ」
「これは?」
「殺した魔族の腕だ」
「…魔族は強い魔力を撒き散らしているから獣なんかに荒らされる心配はないわ。それに周囲に巻き散らかされる魔力で行商人の馬も怖がって動かなくなってしまうの」
「だから次からはこういった物はできるだけ持ち込まないようにして頂戴ね? 持ってくるにしても耳とか少量で頼むわ」
「…わかった。次からはそうする」
「わかったならいいわ。今日は遅いから明日アレックス君や魔族の死体の捜索を行うわ。もちろんあなたにも来て貰う必要があるのだけど、それは大丈夫かしら?」
「ロイは重症だからオレだけになるがそれでも良いか?」
「ええ、構わないわ。それとしばらくしたら王国騎士団が調査に来るから、ロイ君だっけ? その子の怪我はその時に魔法師に治してもらうといいわ。私から伝えておいてあげる」
「何から何まで済まないな。あんたの名は…」
「私の名はキアラ•ヴァルベリーニよ。気軽にキアラと呼んで頂戴」
「それと魔法師のことは気にしなくていいわ。それだけのことをあなた達はしてくれたんだもの」
「そうか…ありがとうキアラ」
「どういたしまして。それじゃあ明日、日が昇ったらまたここに来て頂戴」
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