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遅い帰宿と悩みの種
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ロイが目を覚ますと既に日が昇りだいぶ時間が経っているためか、すっかり辺りは明るくなっている様だった。
「やっと起きたか」
ロイが声のした方へ視線を向けると、既に荷物をまとめロイが目覚めるのを待っていた。
「起きたならさっさと開拓村へ戻るぞ」
ぶっきらぼうに話すウィルの言葉にロイは苦笑いを浮かべる。
「ハハ…わかりました…でもここから開拓村まで3時間くらいかかりますよね」
「その…今の僕の状態で開拓村に戻ろうとすると一体どれだけ時間がかかるか…僕はここで待ってますから一旦先生だけで…」
「…痛むから動きたくないだけだろう」
「…バレました?」
そう言うと舌を出しいたずらっぽく笑うロイ。
「この程度でへこたれてどうする…敵はこちらに気を使ってはくれないぞ」
しかしそんなロイに対して冷たく言い放つウィル。
「はい…ちゃんとついていきます…」
ロイは大袈裟に肩を落とし既に準備されている荷物を持ち出発の準備を整える。
「先生、ありがとうございます!!」
「...ああ」
綺麗にまとめられた自分の荷物を見てロイはウィルに満面の笑みで感謝を伝えた。
•
•
•
数時間後ウィルたちは開拓村へと到着する。空は既に朱色に染まり日も沈みかけていた。
「結局夕方になってしまいましたね」
「お前が途中で何度も休憩をはさんだからな」
「いやぁ、でも無事につけて一安心ですね!!」
ロイは荷物を一度その場に下ろすと背伸びをする。
「んん~…いっててぇ…」
「お前は何をやってるんだ…鎮痛薬を使ったからと言って怪我が治ったわけではないんだぞ」
「気が抜けてすっかり忘れてました…」
ロイは「痛ってぇ…」と呟きつつ宿屋のある方へと向かおうとする。しかしそんなロイをウィルは呼び止める。
「どこへ行く。まずはギルドに報告が先だろう?」
「あ、たしかにそうですね!?」
完全に報告のことを忘れ、早く宿屋で休みたいということで頭がいっぱいだったロイは大袈裟に反応する。
「はぁ…報告は俺がしてくるから、お前は宿屋で休んでろ。ただし明日はお前も証人として色々聞かれると思うから覚悟しろ」
「そんなに大変なんですか? 王都では報告して書類にサインしたら終わりでしたけど」
「魔族が出たんだ。恐らく王国騎士団がここに来て色々と調査するはずだ」
「え…そんな大変なことだったんですか魔族が出るのって?」
「まあ、そこら辺は色々あるんだろう。詳しくは明日ギルドからお達しがくると思う」
「それまで安静にしていろ。くれぐれも遊ぼうなどと考えるなよ?」
「ハハハ…ワカッテマスッテ…」
ロイは目を逸らし口笛を鳴らすマネをしているが動揺で全く吹けていない。
「宿屋から抜け出たらすぐわかるからな。もし宿屋にいなかったら…わかっているな?」
「…はい。大人しくしてます!!」
ウィルの圧に屈したロイは大人しく宿屋で休むことを誓うとそのまま宿屋のある方向へ向かって行った。
「さて…どう切り抜けるか。決闘を申し込まれるより厄介な問題を抱えてしまったな…」
既に実質的なお尋ね者となっていたウィルだが姿や名前などはまだバレてはおらず、今回の件を報告する分にはあまり問題はない。しかし面倒事が増えるため王国騎士団とはできるだけ距離は取っておきたいのもまた事実。
ウィルは頭を悩ませながらロイの姿を視認できなくなるまで見届けると、一人浮かない足取りで冒険者ギルドへと向かって歩いて行くのであった。
「やっと起きたか」
ロイが声のした方へ視線を向けると、既に荷物をまとめロイが目覚めるのを待っていた。
「起きたならさっさと開拓村へ戻るぞ」
ぶっきらぼうに話すウィルの言葉にロイは苦笑いを浮かべる。
「ハハ…わかりました…でもここから開拓村まで3時間くらいかかりますよね」
「その…今の僕の状態で開拓村に戻ろうとすると一体どれだけ時間がかかるか…僕はここで待ってますから一旦先生だけで…」
「…痛むから動きたくないだけだろう」
「…バレました?」
そう言うと舌を出しいたずらっぽく笑うロイ。
「この程度でへこたれてどうする…敵はこちらに気を使ってはくれないぞ」
しかしそんなロイに対して冷たく言い放つウィル。
「はい…ちゃんとついていきます…」
ロイは大袈裟に肩を落とし既に準備されている荷物を持ち出発の準備を整える。
「先生、ありがとうございます!!」
「...ああ」
綺麗にまとめられた自分の荷物を見てロイはウィルに満面の笑みで感謝を伝えた。
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数時間後ウィルたちは開拓村へと到着する。空は既に朱色に染まり日も沈みかけていた。
「結局夕方になってしまいましたね」
「お前が途中で何度も休憩をはさんだからな」
「いやぁ、でも無事につけて一安心ですね!!」
ロイは荷物を一度その場に下ろすと背伸びをする。
「んん~…いっててぇ…」
「お前は何をやってるんだ…鎮痛薬を使ったからと言って怪我が治ったわけではないんだぞ」
「気が抜けてすっかり忘れてました…」
ロイは「痛ってぇ…」と呟きつつ宿屋のある方へと向かおうとする。しかしそんなロイをウィルは呼び止める。
「どこへ行く。まずはギルドに報告が先だろう?」
「あ、たしかにそうですね!?」
完全に報告のことを忘れ、早く宿屋で休みたいということで頭がいっぱいだったロイは大袈裟に反応する。
「はぁ…報告は俺がしてくるから、お前は宿屋で休んでろ。ただし明日はお前も証人として色々聞かれると思うから覚悟しろ」
「そんなに大変なんですか? 王都では報告して書類にサインしたら終わりでしたけど」
「魔族が出たんだ。恐らく王国騎士団がここに来て色々と調査するはずだ」
「え…そんな大変なことだったんですか魔族が出るのって?」
「まあ、そこら辺は色々あるんだろう。詳しくは明日ギルドからお達しがくると思う」
「それまで安静にしていろ。くれぐれも遊ぼうなどと考えるなよ?」
「ハハハ…ワカッテマスッテ…」
ロイは目を逸らし口笛を鳴らすマネをしているが動揺で全く吹けていない。
「宿屋から抜け出たらすぐわかるからな。もし宿屋にいなかったら…わかっているな?」
「…はい。大人しくしてます!!」
ウィルの圧に屈したロイは大人しく宿屋で休むことを誓うとそのまま宿屋のある方向へ向かって行った。
「さて…どう切り抜けるか。決闘を申し込まれるより厄介な問題を抱えてしまったな…」
既に実質的なお尋ね者となっていたウィルだが姿や名前などはまだバレてはおらず、今回の件を報告する分にはあまり問題はない。しかし面倒事が増えるため王国騎士団とはできるだけ距離は取っておきたいのもまた事実。
ウィルは頭を悩ませながらロイの姿を視認できなくなるまで見届けると、一人浮かない足取りで冒険者ギルドへと向かって歩いて行くのであった。
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