剣豪、未だ至らぬ

萎びた家猫

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称賛と褒美

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 あの後気を失ったロイはしばらく眠っていたが、近くで乾いた物がパチパチと弾ける様な音と暖かな光をまぶた越しに感じ目を覚ます。

「ここは…」

 霞む目をゴシゴシと拭いながら周囲を見渡すとそこは先程の川辺であることがわかる。

 日も落ちだいぶ時間が経っているのかロイの近くにある焚き火周辺を除いて周りは完全な暗闇となっていた。

「先生は…痛っ…!?」

「あばら骨が折れているし、恐らくだが胸骨や足の骨にもヒビが入っているからかなり痛むだろう?」

 ロイは声がする方へと顔だけ向けると、焚き火を挟んで反対側にウィルが座って何やら作業をしていた。

「先生…僕はどれくらい眠っていました?」

「恐らく6時間ほどだ。開拓村へ戻る準備は既に済ませているが、お前の怪我もあるからな、今日はここで野宿する」

「…先生、すみません」

 ロイは今回の結果に苦悶の表情を浮かべながらウィルへと謝罪するが、当の本人は疑問の表情を浮かべていた。

「…なぜ謝る?」

「だって…あんな大口叩いたのに結局最後は先生に頼ってしまったし…それに先生が来てくれなかったらボクは死んでました」

「そうだな。あの時オレが割って入らなければ、お前は死んでいただろう」

「はい…すみません…」

 再度謝罪するロイにウィルは疑問を投げかける。

「だからなぜ謝るのだ。お前は最後までやりきったではないか」

「でも僕が死ぬような状況になったら師弟の関係は終わりだって…」

「…オレはくだらない戦い方をしたら今の関係を終わらせると言ったんだ」

「はい…だから…」

したを向きながらボソボソ喋るロイにウィルはハッキリと告げる。

「お前は最後まで後ろを振り返らず戦い抜き…そして生き延びた」

「もしあの時お前が逃げたり…オレに助けを求めるようなことがあったらオレはお前を見殺しにしただろう」

「だがお前は骨を折られようが、策を砕かれようが決して諦めずあの魔族に挑んだ」

「…見事な戦いぶりであった」

「先生…」

「今日の感覚を忘れるな」

 そう言うとウィルは座りながら俯く。どうやら眠りについたようだ。

 そんなウィルにロイは…

「先生…ご褒美ってありまs…いってぇ!?」

 ロイの顔面になにか布のようなものが高速でぶつかる。

「くだらんことを言わずに早く寝ろ。明日は早朝にここを立って」

 ぶっきらぼうに話すウィルに対して、ロイは大声で講義する。

「怪我人になにするんですか!? それに僕は今起きたばっかであんま眠くないですし…!!」

「知らん。休めるときに休むのも修行だ」

「先生…この間に先生が…食べたっていう甘味ボクも食べたいです!!」

「…」

「聞いてます先生?」

「…分かったから早く寝ろ」

「やったぁ…!? いててて…」

 褒美を受け取れると分かったロイは喜ぶが傷口の痛みに悶える。そんなロイにウィルはため息を吐きながら、ある一点に指をさしながら話す。

「はぁ…お前の近くにオレのポーチがある。その中に入っている黒い袋の中からクスリを出して飲め…痛みが和らいでよく眠れる」

「黒い袋…うへぇなんかすごい匂いですよこれ…先生が持ってる薬って匂いがきついモノが多いですよね…」

「それを飲んで寝ろ。次起こしたらお前の負傷箇所が増えることになるからな」

「先生、怖すぎでしょ…」

 ロイはウィルの発言とくすりの匂いに顔を引きつらせつつも、何とか飲み込む。

 ウィルの言った通り、飲むと体の痛みが和らぎ眠気が襲ってきた。

「いやこれ変ですって…つよすg…」( ˘ω˘)スヤァ

 ロイの寝息を確認するとウィルは小さなそれでいて穏やかな声で…

「…ほんとに世話が焼ける弟子だ」

 その言葉は誰の耳にも入ることはなく、月明かりだけが照らす夜空へと消えていった。
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