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初めての依頼
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宿屋に泊まり一晩たった後、オレとロイはモヤズハムの開拓村周辺の森林へ足を運んでいた。
「いやーやっぱり王都のギルドで受ける依頼と違って、魔物の討伐依頼が多いですね」
「そうだろうな。というかお前はなんで意外そうにしているんだ? 王都ではどんな依頼を受けていたんだ」
何処か驚いた様子のロイの反応にウィルは少し疑問を感じていた。
「王都だとペットの捜索とか、清掃活動がメインでしたから…よくよく考えればこんな森の中で普通はそんな仕事あるわけ無いですよね」
「…つまり実質お前も初の依頼受注みたいなものか。よく魔物の討伐依頼を受けさせてもらえたな」
「それがボクがやってた依頼は金額が少ないですが、貢献度?っていう評価が上がるポイントが高い依頼が多かったみたいで…評価だけ見れば魔物依頼を受注する資格はあったようなんです」
「なるほどな。でお前は魔物を買ったことはあるのか」
「実は小型の魔物は何回かあるんですけど…今回の依頼目標であるロックボアのような中型の魔物は経験ないです」
今回オレ達が狙うのはロックボアと呼ばれる中型の魔物だ。気性が荒く、頭部の岩のように硬い部位で突進攻撃してくる商人達からすれば十分に危険な魔物だ。
こいつらは気性が荒い割に周りの些細な変化にすぐ気づくため狩り初心者には少し厳しい相手かもしれない。果たしてロイはこの魔物に気付かれずに近寄れるか…それが今回の肝となる。
「今回依頼に出ているのは2匹のロックボアだ。アイツらは縄張り意識が高い、自らの巣からそう遠くには行かない」
「報告があったのはこの奥にある森の中が一匹とその更に奥にある川辺。まずはオレが手本を見せるから、もう一匹はお前が仕留めろ」
「はい!!」
そうこうしていると、周辺の木々に何かと衝突したような跡がついている。これは自らの縄張りを主張するためにロックボアがよく付けるマーキングだ。
「ここら辺りのようだな」
「先生あれ…」
ロイが指差す方向から約50程離れた草やぶの中で体長3メートルほどの猪が何かを貪っていた。
「何か食べてますね…」
「アイツらは雑食だ。植物でも生物でもなんでも食べる」
「ロイ。お前はここにいろ…まずは手本を見せる」
そう言うとウィルの姿が一瞬希薄になる。
そんな光景にロイはギョッと目を見開きウィルを観察する。
(先生の姿が一瞬見えなくなった…? いや、気配が薄い!!)
ロイがそんな事を考えているとウィルはできるだけ草を避けるようにロックボアへと近付いていく。
(すごい…魔物との距離はもうだいぶ近いのに全く気づかれてない…)
ロイはある程度近づくとポケットの中に手を入れ何かを取り出す。
そして…その手に持った何かをロックボアへと投げる。その何かがあたった瞬間、軽い閃光と同時に大きな破裂音が鳴る。
その衝撃にロックボアは驚き身体を大きく立ち上がらせる。その瞬間…
ウィルは一気にロックボアの懐へ入ると前足を上げたら秋になった胴体に剣を振るう。
一閃…ウィルはたったの一閃で中型とはいえただの動物より生命力の高い魔物の命を両断してみせた。
「これが気配の消し方だ。森の魔物は大抵匂いに敏感だが…それ以上に他の生物の気配に敏感だ。決して自分の気配を悟らせるな」
ウィルは剣についた血や脂を拭くと鞘に剣を収める。
「さあ、次はお前の番だ。自分が為せる全てを使い獣を狩ってみせろ」
「先生…ボク剣以外なにも持ってないんですけど…」
「…はあ、わかったじゃあこれをやる」
そう言ってポケットの中から数個の黒い小石を手渡してくる。
「これってさっき投げてたものですか?」
「ああそうだ。これは回帰石という、またの名をカミナリ石とも言う」
ロイは聞いたことがない石の名前に首を傾げる。そんなロイにウィルは石の特性を説明し始める。
「この石は電気を貯める性質と、近くにある大きな電気を自らに引き寄せる性質がある」
「つまり電撃を当てたい相手にカミナリ石かその粉末を付着させ、コチラが持っている石に電気を流すと相手の石が反応して電撃引き寄せてくれる。結果的に正確に電撃を当てることができるという仕組みだ」
「電撃はより強い方からより弱い方へと流れる。もし相手の方がより強い電気を流すと逆に電撃を喰らう羽目になるからそこは注意が必要だ」
「まあ、今回はただの獣だそこら辺は気にしなくてもいいだろう」
「な、なるほど?」
「おまえいまいちわかってないだろ…」
「いや…仕組みはわかりましたけどどうやって電気を流すんですか?」
「お前は魔法を使えないのか?」
「いや火とか水みたいに身近なものなら出来ますけど、電気っていまいちよくわからないんですよね」
そうか。王都の中ではあまり火や水と違って、電気を使う機会はあまりないのか。
「なら今回は予めオレが電気を溜めておく。この袋に入れておけば電気は通さないから相手に石を付着させたら袋から取り出せ」
そう言ってウィルは皮のような、それでいて少し光沢がある不思議な袋を取り出した。
「これを閉じている間は電気を放出しない。ただ一度開けると貯めた電気が一気に放たれる。チャンスは一回きりだ…いいな?」
「はい!! かならず成功させます!!」
ロイは袋と石を受け取ると自分のポケットへとしまった。
「では準備が出来た次の発見報告があった地点へ向かう」
「準備はできてます!!いつでもいきましょう」
ウィルの問い掛けに元気よく反応するロイ。そんなロイを見てウィルは…
「…近づいたらその大声はやめろよ。気配を消す前に気づかれてしまう」
ロイは慌てて自らの口に手を覆いかぶせる。
「…ここからはまだ距離がある。今は普通にしていろ、本番で無駄な疲労があると失敗につながる…はぁ」
ロイは元気に頷き、ウィルは少しため息をつきながら次の目的地へと向かっていくのであった。
「いやーやっぱり王都のギルドで受ける依頼と違って、魔物の討伐依頼が多いですね」
「そうだろうな。というかお前はなんで意外そうにしているんだ? 王都ではどんな依頼を受けていたんだ」
何処か驚いた様子のロイの反応にウィルは少し疑問を感じていた。
「王都だとペットの捜索とか、清掃活動がメインでしたから…よくよく考えればこんな森の中で普通はそんな仕事あるわけ無いですよね」
「…つまり実質お前も初の依頼受注みたいなものか。よく魔物の討伐依頼を受けさせてもらえたな」
「それがボクがやってた依頼は金額が少ないですが、貢献度?っていう評価が上がるポイントが高い依頼が多かったみたいで…評価だけ見れば魔物依頼を受注する資格はあったようなんです」
「なるほどな。でお前は魔物を買ったことはあるのか」
「実は小型の魔物は何回かあるんですけど…今回の依頼目標であるロックボアのような中型の魔物は経験ないです」
今回オレ達が狙うのはロックボアと呼ばれる中型の魔物だ。気性が荒く、頭部の岩のように硬い部位で突進攻撃してくる商人達からすれば十分に危険な魔物だ。
こいつらは気性が荒い割に周りの些細な変化にすぐ気づくため狩り初心者には少し厳しい相手かもしれない。果たしてロイはこの魔物に気付かれずに近寄れるか…それが今回の肝となる。
「今回依頼に出ているのは2匹のロックボアだ。アイツらは縄張り意識が高い、自らの巣からそう遠くには行かない」
「報告があったのはこの奥にある森の中が一匹とその更に奥にある川辺。まずはオレが手本を見せるから、もう一匹はお前が仕留めろ」
「はい!!」
そうこうしていると、周辺の木々に何かと衝突したような跡がついている。これは自らの縄張りを主張するためにロックボアがよく付けるマーキングだ。
「ここら辺りのようだな」
「先生あれ…」
ロイが指差す方向から約50程離れた草やぶの中で体長3メートルほどの猪が何かを貪っていた。
「何か食べてますね…」
「アイツらは雑食だ。植物でも生物でもなんでも食べる」
「ロイ。お前はここにいろ…まずは手本を見せる」
そう言うとウィルの姿が一瞬希薄になる。
そんな光景にロイはギョッと目を見開きウィルを観察する。
(先生の姿が一瞬見えなくなった…? いや、気配が薄い!!)
ロイがそんな事を考えているとウィルはできるだけ草を避けるようにロックボアへと近付いていく。
(すごい…魔物との距離はもうだいぶ近いのに全く気づかれてない…)
ロイはある程度近づくとポケットの中に手を入れ何かを取り出す。
そして…その手に持った何かをロックボアへと投げる。その何かがあたった瞬間、軽い閃光と同時に大きな破裂音が鳴る。
その衝撃にロックボアは驚き身体を大きく立ち上がらせる。その瞬間…
ウィルは一気にロックボアの懐へ入ると前足を上げたら秋になった胴体に剣を振るう。
一閃…ウィルはたったの一閃で中型とはいえただの動物より生命力の高い魔物の命を両断してみせた。
「これが気配の消し方だ。森の魔物は大抵匂いに敏感だが…それ以上に他の生物の気配に敏感だ。決して自分の気配を悟らせるな」
ウィルは剣についた血や脂を拭くと鞘に剣を収める。
「さあ、次はお前の番だ。自分が為せる全てを使い獣を狩ってみせろ」
「先生…ボク剣以外なにも持ってないんですけど…」
「…はあ、わかったじゃあこれをやる」
そう言ってポケットの中から数個の黒い小石を手渡してくる。
「これってさっき投げてたものですか?」
「ああそうだ。これは回帰石という、またの名をカミナリ石とも言う」
ロイは聞いたことがない石の名前に首を傾げる。そんなロイにウィルは石の特性を説明し始める。
「この石は電気を貯める性質と、近くにある大きな電気を自らに引き寄せる性質がある」
「つまり電撃を当てたい相手にカミナリ石かその粉末を付着させ、コチラが持っている石に電気を流すと相手の石が反応して電撃引き寄せてくれる。結果的に正確に電撃を当てることができるという仕組みだ」
「電撃はより強い方からより弱い方へと流れる。もし相手の方がより強い電気を流すと逆に電撃を喰らう羽目になるからそこは注意が必要だ」
「まあ、今回はただの獣だそこら辺は気にしなくてもいいだろう」
「な、なるほど?」
「おまえいまいちわかってないだろ…」
「いや…仕組みはわかりましたけどどうやって電気を流すんですか?」
「お前は魔法を使えないのか?」
「いや火とか水みたいに身近なものなら出来ますけど、電気っていまいちよくわからないんですよね」
そうか。王都の中ではあまり火や水と違って、電気を使う機会はあまりないのか。
「なら今回は予めオレが電気を溜めておく。この袋に入れておけば電気は通さないから相手に石を付着させたら袋から取り出せ」
そう言ってウィルは皮のような、それでいて少し光沢がある不思議な袋を取り出した。
「これを閉じている間は電気を放出しない。ただ一度開けると貯めた電気が一気に放たれる。チャンスは一回きりだ…いいな?」
「はい!! かならず成功させます!!」
ロイは袋と石を受け取ると自分のポケットへとしまった。
「では準備が出来た次の発見報告があった地点へ向かう」
「準備はできてます!!いつでもいきましょう」
ウィルの問い掛けに元気よく反応するロイ。そんなロイを見てウィルは…
「…近づいたらその大声はやめろよ。気配を消す前に気づかれてしまう」
ロイは慌てて自らの口に手を覆いかぶせる。
「…ここからはまだ距離がある。今は普通にしていろ、本番で無駄な疲労があると失敗につながる…はぁ」
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