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第2話 繋がり
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翌日
結局あの後、秋と2人で今後のことを話し合った結果、
まず学校では他人のフリをする。
呼び方は、お互い家では下の名前で呼び、学校では上の名前で呼ぶ。
家でも用がない時は、極力話さない
というふうな感じだ。
これから家族になろうというのに、どことなく距離を置かれてしまう。まあ、家に同い年の男がいると、警戒心が高まるのもわかる。打ち解けるには、かなりの時間がかかりそうだ。
そんなこんなで、俺は今一人で学校に登校している。秋は俺より10分はやく家を出て行った。
学校に着くと、同じ部活の条が俺に話しかけてきた。
「気分はどうだ?今日から部活には行けそうか?」
あー。そうだ。俺、昨日振られたんだった。昨日は父の再婚や新しい家族についてずっと考えていたため、俺が明さんに振られたことをすっかり忘れていた。まあ、でもいつまで経っても振られたことへの悲しみを引きずってたって仕方がない。
「おう、行くよ」
もうすぐ、地区総体だってある。俺は運動は得意ではないが、小学校からバレーをしていたため、バレーだけは得意な方であった。そのため、1年生ながらも、今回の地区総体ではユニホームを貰えることができた。もしかしたら、レギュラーにもなれるかもしれない、そのため、この時期に振られたことをきっかけに部活に支障をきたすのはよくない。切り替えよう。
結局いつもと何も変わらずに過ごし、あっという間に部活の時間になっていた。急いで部室に行き、着替えて体育館に行った。
「今日は、女バレが隣か」
条がつぶやく。続けて条が言う。
「女バレってことは、秋ちゃんがおるじゃん」
「あっ」
つい声が漏れてしまった。
「どうした?なんかあったのか?」
条が累に聞く。
「いや、なんもない」
そうだ。もし、俺たちの関係がバレたら、一気に噂が広まってしまう。そうなったら、秋との関係がさらに悪化してしまう。気をつけろ、他人のフリだ。他人のフリ。
それから俺は部活中もあまり女バレの方を見ないで、練習に打ち込んだ。
「はー疲れたー」
部活が終わり、累は少し女バレの方をみた。七沢高校女子バレー部は、県内の中ではかなりの強豪で、もうすぐある地区総体の優勝候補でもある。そのため、練習時間は他の部活よりも少し長い。反対に男子バレー部は、強豪校とまでは言われないものの、大会によっては、かなり良い順位まで上がることもある。女バレの方を見ていると、条が近づいてきた。
「おいおい、明さんの次は秋ちゃん狙いか?」
「んなわけないだろ。俺の好きな人は明さんだけだ。」
累は答えた。再び条が質問する。
「お前、振られたのにまだ諦めてないの?」
たしかに、俺は振られた。向こうも部活を優先したいらしいし、付き合うのは難しいかもしれない。だからといって、俺の気持ちが変わるわけじゃない。
「付き合えなくても、好きでいるのは、俺の勝手だろ。」
累は答えた。
「でも、もし他に良い人が現れたなら、その時はしっかり自分の気持ちに素直になるんだぞ。」
「わかってる」
正直、明さん以上の人はいないと思いながらも、そう答えた。
秋がスパイクを打つ姿を見る。
「秋ちゃん、可愛いしバレー上手いとか、ハイスペックすぎ」
条がニタニタしながら言う。
そんなハイスペックで、みんなから人気のある彼女が俺の家族で妹だなんて、未だに信じられない。
これ以上見てて、秋に見てるのがバレたら、どんな冷たい態度を取られるかわからない。
「帰るか、条」
結局今日は、明さんに一度も会わずに家に帰った。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
リビングに入ると、キッチンで政子さんが料理をしていて、テーブルにはいつも帰りの遅い父さんがいた。
「今日は早いんだね」
累が言う。
「今日はちょっと早く帰らせてもらったんだよ」
政子さんと一緒に暮らせていて、いつもより幸せそうな顔をする父。
「そういえば累、ジャルって覚えてるか」
久しぶりにその名前を聞いた。その名前は、俺が小学校の頃に所属していたバレーチームの名前だ。
「覚えてるよ」
「じゃあ、ジャルに入っていた女の子を覚えてるか?」
聞かれて思い出した。あー、すごく懐かしい。その子は俺とすごく仲が良かった子で、俺の初恋の人でもあった。今はどこで何をしているのか全く知らないが、いったい今はどこにいるんだろうか。
10年前
俺がバレーに興味を持ち、ジャルに入ったばかりの頃、当時の俺はバレーの難しさ、厳しさに直面していた。練習もきつく、一向に上手くならなくて、体育館の隅で一人で泣いていた時、ある女の子が声をかけてきた。
「大丈夫?なんで泣いているの?」
俺は理由をその子に話した。するとその子は、
「そうなんだ。だったら、私と一緒に頑張ろうよ!」
その子はそう言って、俺と指切りをしてくれた。それから俺は、辛い時や悲しい時にその子のことを思い出して、練習を頑張っていた。いつしか俺はその子のことを好きになっていた。しかし、彼女は突然ジャルをやめてしまった。その時の俺は、もちろんショックだったけど、バレーを続ければ、またいつか会えると信じて、バレーに打ち込んでいた。
今では明さんという別の気になる人が出来て、その子のことも父から言われるまで忘れていた。
「あー、覚えてるよ。名前はちょっと忘れちゃったけどね」
それを聞いて父は言った。
「これを聞いて驚くなよ。その子、実は秋ちゃんなんだ」
続く
結局あの後、秋と2人で今後のことを話し合った結果、
まず学校では他人のフリをする。
呼び方は、お互い家では下の名前で呼び、学校では上の名前で呼ぶ。
家でも用がない時は、極力話さない
というふうな感じだ。
これから家族になろうというのに、どことなく距離を置かれてしまう。まあ、家に同い年の男がいると、警戒心が高まるのもわかる。打ち解けるには、かなりの時間がかかりそうだ。
そんなこんなで、俺は今一人で学校に登校している。秋は俺より10分はやく家を出て行った。
学校に着くと、同じ部活の条が俺に話しかけてきた。
「気分はどうだ?今日から部活には行けそうか?」
あー。そうだ。俺、昨日振られたんだった。昨日は父の再婚や新しい家族についてずっと考えていたため、俺が明さんに振られたことをすっかり忘れていた。まあ、でもいつまで経っても振られたことへの悲しみを引きずってたって仕方がない。
「おう、行くよ」
もうすぐ、地区総体だってある。俺は運動は得意ではないが、小学校からバレーをしていたため、バレーだけは得意な方であった。そのため、1年生ながらも、今回の地区総体ではユニホームを貰えることができた。もしかしたら、レギュラーにもなれるかもしれない、そのため、この時期に振られたことをきっかけに部活に支障をきたすのはよくない。切り替えよう。
結局いつもと何も変わらずに過ごし、あっという間に部活の時間になっていた。急いで部室に行き、着替えて体育館に行った。
「今日は、女バレが隣か」
条がつぶやく。続けて条が言う。
「女バレってことは、秋ちゃんがおるじゃん」
「あっ」
つい声が漏れてしまった。
「どうした?なんかあったのか?」
条が累に聞く。
「いや、なんもない」
そうだ。もし、俺たちの関係がバレたら、一気に噂が広まってしまう。そうなったら、秋との関係がさらに悪化してしまう。気をつけろ、他人のフリだ。他人のフリ。
それから俺は部活中もあまり女バレの方を見ないで、練習に打ち込んだ。
「はー疲れたー」
部活が終わり、累は少し女バレの方をみた。七沢高校女子バレー部は、県内の中ではかなりの強豪で、もうすぐある地区総体の優勝候補でもある。そのため、練習時間は他の部活よりも少し長い。反対に男子バレー部は、強豪校とまでは言われないものの、大会によっては、かなり良い順位まで上がることもある。女バレの方を見ていると、条が近づいてきた。
「おいおい、明さんの次は秋ちゃん狙いか?」
「んなわけないだろ。俺の好きな人は明さんだけだ。」
累は答えた。再び条が質問する。
「お前、振られたのにまだ諦めてないの?」
たしかに、俺は振られた。向こうも部活を優先したいらしいし、付き合うのは難しいかもしれない。だからといって、俺の気持ちが変わるわけじゃない。
「付き合えなくても、好きでいるのは、俺の勝手だろ。」
累は答えた。
「でも、もし他に良い人が現れたなら、その時はしっかり自分の気持ちに素直になるんだぞ。」
「わかってる」
正直、明さん以上の人はいないと思いながらも、そう答えた。
秋がスパイクを打つ姿を見る。
「秋ちゃん、可愛いしバレー上手いとか、ハイスペックすぎ」
条がニタニタしながら言う。
そんなハイスペックで、みんなから人気のある彼女が俺の家族で妹だなんて、未だに信じられない。
これ以上見てて、秋に見てるのがバレたら、どんな冷たい態度を取られるかわからない。
「帰るか、条」
結局今日は、明さんに一度も会わずに家に帰った。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
リビングに入ると、キッチンで政子さんが料理をしていて、テーブルにはいつも帰りの遅い父さんがいた。
「今日は早いんだね」
累が言う。
「今日はちょっと早く帰らせてもらったんだよ」
政子さんと一緒に暮らせていて、いつもより幸せそうな顔をする父。
「そういえば累、ジャルって覚えてるか」
久しぶりにその名前を聞いた。その名前は、俺が小学校の頃に所属していたバレーチームの名前だ。
「覚えてるよ」
「じゃあ、ジャルに入っていた女の子を覚えてるか?」
聞かれて思い出した。あー、すごく懐かしい。その子は俺とすごく仲が良かった子で、俺の初恋の人でもあった。今はどこで何をしているのか全く知らないが、いったい今はどこにいるんだろうか。
10年前
俺がバレーに興味を持ち、ジャルに入ったばかりの頃、当時の俺はバレーの難しさ、厳しさに直面していた。練習もきつく、一向に上手くならなくて、体育館の隅で一人で泣いていた時、ある女の子が声をかけてきた。
「大丈夫?なんで泣いているの?」
俺は理由をその子に話した。するとその子は、
「そうなんだ。だったら、私と一緒に頑張ろうよ!」
その子はそう言って、俺と指切りをしてくれた。それから俺は、辛い時や悲しい時にその子のことを思い出して、練習を頑張っていた。いつしか俺はその子のことを好きになっていた。しかし、彼女は突然ジャルをやめてしまった。その時の俺は、もちろんショックだったけど、バレーを続ければ、またいつか会えると信じて、バレーに打ち込んでいた。
今では明さんという別の気になる人が出来て、その子のことも父から言われるまで忘れていた。
「あー、覚えてるよ。名前はちょっと忘れちゃったけどね」
それを聞いて父は言った。
「これを聞いて驚くなよ。その子、実は秋ちゃんなんだ」
続く
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