28 / 34
28
しおりを挟む
午前六時。
男は遠慮なくボディソープの薫りで女の香を濁し、下着と作業着に身を包み、世間を憚る素振りなく、朝のなか颯爽と玄関を抜けていった。
誰にも知られず背を見送れたのはあなたにとっての僥倖であり、振り返る気のない男の後ろ髪に自身と同じシャンプーの薫りをも嗅ぎ取れた想いに幾許かの名残りを見て慈しんだ。
寝室に帰ると乱れたベッドに思わされるところがあり、カーテンを引いたままの薄暗がりで、カメラの向こう側へあなたは大きく咲いた。
興が落ち着いたのは七時を過ぎた頃だった。
シーツを剥いで、Tシャツとハーフパンツに下着を搦めて抱え持ち、素裸で廊下を行き、脱衣所の洗濯機に放り込み、他の洗濯物で猶予を埋め、洗剤と漂白剤に柔軟剤で汚れを隠していった。
薄いシーツでは吸い取り切れなかった濡れがマットレスに染み込んだ痕を想いながらまわる洗濯槽の音を聞き、男が使ったばかりの浴室の扉を開いて入りシャワーの栓を開いた。
タイルを打つ音に洗濯機の音が混じりカメラのない浴室にも男の目があるように思われると、自涜したばかりの陰が疼いた。
浴室の扉のほうを向き、背から湯を滑らせながら手を下へと運ばせた。尖る芯が指先を嘲笑うかの如くやまない欲を主張する。女のなかから染み出す湿度を尖端へ送り、摩擦は楽に濡れたものと為り果てて、指は上下左右と無尽に動き、あなたをよがらせた。
浴室のぼやけた扉を透いて見る向こうに汚れたシーツがまわる洗濯機の音がかたかたと鳴り、ベッドを揺らせた男の身体が想起されると、あなたの腰はひとりとは思えないゆらめきを持って悦を深くした。
緩く流れる温みに背を抱かれ、電気屋の男にはなかった愛情めいたものを脚色すれば性感のほかにも染められるものがあった。何が何でも恋まで昇華させようとするのは悦楽のみに興を向ける女を恥じてのことか、と言い訳の恋心をなじりながらも身を委ねた。
女の性感を誤魔化す為に偽りの恋をし、男の欲をも利用する狡さが女の無意識のうちに存在すると知れば、男が己の性感を充たす為に女の恋心を利用する謀りを責め切れなくなる。
抱かれた後でこれはどういった目合いであったかと咎めるような目を向けるのは男に求める責ではなく、乱れた女の誤魔化しに男を付き合わせる試みでしかない。
こちらには恋があったと主張すれば淫猥な女ではなくなると掴んだシーツの皺をのばす算段をし始める女は、男以上に卑怯かもしれない。
睦み合いが快いものでなければ終わった後の男に恋を向けられはしないかと、心を澱ませる。
あの男であればどうか。
答えを指に逃し、偽りの恋に甘んじてあなたは昇っていった。
男は遠慮なくボディソープの薫りで女の香を濁し、下着と作業着に身を包み、世間を憚る素振りなく、朝のなか颯爽と玄関を抜けていった。
誰にも知られず背を見送れたのはあなたにとっての僥倖であり、振り返る気のない男の後ろ髪に自身と同じシャンプーの薫りをも嗅ぎ取れた想いに幾許かの名残りを見て慈しんだ。
寝室に帰ると乱れたベッドに思わされるところがあり、カーテンを引いたままの薄暗がりで、カメラの向こう側へあなたは大きく咲いた。
興が落ち着いたのは七時を過ぎた頃だった。
シーツを剥いで、Tシャツとハーフパンツに下着を搦めて抱え持ち、素裸で廊下を行き、脱衣所の洗濯機に放り込み、他の洗濯物で猶予を埋め、洗剤と漂白剤に柔軟剤で汚れを隠していった。
薄いシーツでは吸い取り切れなかった濡れがマットレスに染み込んだ痕を想いながらまわる洗濯槽の音を聞き、男が使ったばかりの浴室の扉を開いて入りシャワーの栓を開いた。
タイルを打つ音に洗濯機の音が混じりカメラのない浴室にも男の目があるように思われると、自涜したばかりの陰が疼いた。
浴室の扉のほうを向き、背から湯を滑らせながら手を下へと運ばせた。尖る芯が指先を嘲笑うかの如くやまない欲を主張する。女のなかから染み出す湿度を尖端へ送り、摩擦は楽に濡れたものと為り果てて、指は上下左右と無尽に動き、あなたをよがらせた。
浴室のぼやけた扉を透いて見る向こうに汚れたシーツがまわる洗濯機の音がかたかたと鳴り、ベッドを揺らせた男の身体が想起されると、あなたの腰はひとりとは思えないゆらめきを持って悦を深くした。
緩く流れる温みに背を抱かれ、電気屋の男にはなかった愛情めいたものを脚色すれば性感のほかにも染められるものがあった。何が何でも恋まで昇華させようとするのは悦楽のみに興を向ける女を恥じてのことか、と言い訳の恋心をなじりながらも身を委ねた。
女の性感を誤魔化す為に偽りの恋をし、男の欲をも利用する狡さが女の無意識のうちに存在すると知れば、男が己の性感を充たす為に女の恋心を利用する謀りを責め切れなくなる。
抱かれた後でこれはどういった目合いであったかと咎めるような目を向けるのは男に求める責ではなく、乱れた女の誤魔化しに男を付き合わせる試みでしかない。
こちらには恋があったと主張すれば淫猥な女ではなくなると掴んだシーツの皺をのばす算段をし始める女は、男以上に卑怯かもしれない。
睦み合いが快いものでなければ終わった後の男に恋を向けられはしないかと、心を澱ませる。
あの男であればどうか。
答えを指に逃し、偽りの恋に甘んじてあなたは昇っていった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
眠れない夜の雲をくぐって
ほしのことば
恋愛
♡完結まで毎日投稿♡
女子高生のアカネと29歳社会人のウミは、とある喫茶店のバイトと常連客。
一目惚れをしてウミに思いを寄せるアカネはある日、ウミと高校生活を共にするという不思議な夢をみる。
最初はただの幸せな夢だと思っていたアカネだが、段々とそれが現実とリンクしているのではないだろうかと疑うようになる。
アカネが高校を卒業するタイミングで2人は、やっと夢で繋がっていたことを確かめ合う。夢で繋がっていた時間は、現実では初めて話す2人の距離をすぐに縮めてくれた。
現実で繋がってから2人が紡いで行く時間と思い。お互いの幸せを願い合う2人が選ぶ、切ない『ハッピーエンド』とは。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~
あらお☆ひろ
現代文学
白血病の診断を受けた20歳の大学生「本田望《ほんだ・のぞみ》」と偶然出会ったちょっと変わった太ったおじさん「備里健《そなえざと・けん」》の1週間の物語です。
「劇脚本」用に大人の絵本(※「H」なものではありません)的に準備したものです。
マニアな読者(笑)を抱えてる「赤井翼」氏の原案をもとに加筆しました。
「病気」を取り扱っていますが、重くならないようにしています。
希と健が「B級グルメ」を楽しみながら、「病気平癒」の神様(※諸説あり)をめぐる話です。
わかりやすいように、極力写真を入れるようにしていますが、撮り忘れやピンボケでアップできないところもあるのはご愛敬としてください。
基本的には、「ハッピーエンド」なので「ゆるーく」お読みください。
全31チャプターなのでひと月くらいお付き合いいただきたいと思います。
よろしくお願いしまーす!(⋈◍>◡<◍)。✧♡
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
リバースバンドリバース
kamin0
現代文学
中下大学に通う大学二年生、辺野人成は、軽音サークルで出来た友人達と平和な夏休みを過ごそうとしていた。そんなある日、辺野の元に高校時代の同級生、初恋の人青井空が訪ねてきて言った。
「また高校のメンバーとバンドを組んでほしい」
なんでも、高校時代の恩師、川瀬先生が重い病にかかってしまい、その川瀬先生が最後の願いとして、辺野がかつて組んでいたバンド、『バンドリバース』の演奏が聴きたいらしいのだ。ためらう辺野だったが、高額の報酬に目がくらみ、結局その提案を承諾してしまう。その後、順調に元メンバーを集める辺野達だったが、一人のメンバーが既に死亡していることを知る。しかもその元メンバーは呪い殺されたというのだ。これをきっかけに辺野達は、呪いとはなにか、そして呪いに関わる人々の苦悩と後悔を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる