空蝉

ひさかはる

文字の大きさ
上 下
14 / 34

14

しおりを挟む
 昼前の夏はあなたを殺さず蝉たちを唄わせていた。

 当てが外れ、暑く蒸らされたに過ぎない生きた身体が布団を半分脱ぎ、女の叢は恥を知らず、黒々とカメラに向いていた。こめかみに残る悲しみの跡が肌を突っ張らせ、泣きながら求めた昨夜が情けなく、可笑しみさえも映されていると想えば無意識とはいえ、眠りに紛れるものではない命の本能めいたものが茫と下腹部に灯った。

 赧くする事を忘れた頬はひとつ棄てた羞恥をあなたに自覚させ、残る半分の布団を剥ぎ、カメラの前で素裸になる素直さを代償として与えた。

 カメラに臀部を向け、ベッドのうえで四つん這いになり、陰へ指を運んだ。冷房の切れた熱気が直接的にあなたを刺激し、ただの動物の牝と成り果てた腰は激しくなり、指を浅く深く呑み込むことを繰り返し、空いたほうの手の指は口内の唾液で濡らされた。

 ふたつの手が異なる熱に侵され、性感は温みを帯びあなたを啼かせた。

 蝉の間を割る自身の声にあげられ、鼓膜は鋭さを増し、道をゆく車や靴音も大きく響き、耳を寄せられれば捉えられるかもしれない窓外の人間たちはあなたをまたひとつ濡らす材となった。

 後ろから男に頭を押さえつけられているかのような圧迫を枕に感じながら無理やり顔を横へ向け、指を咥える姿勢がふたりの男に嬲られている女を想わせると、三人目の男がビデオカメラを手に撮影している画もあなたに浮かんだ。

 男のない家と知られればこういった事もあり得るのだろうか、と想えば自ら望んだものではない色事に、十全に成り立つ言い訳に、形のうえで厭がるであろう自身の嘘に、身体が覚える悦びが実体を伴ってあなたを覆った。

 記憶にある男たちの顔が入れ替わり立ち替わりあなたを犯す。

 その度に指は動きを変え、陰のなかを蠢いた。

 嘔吐かせるよう口内の指を深くさせれば悦びに視界が潤んだ。

 胸をしだく手が、ひとつ足りない事が惜しく、幻想のなかで目一杯の痛みでもって歪む乳房を描いた。

 犯されながらもやむ事のない濡れを嗤う男たちの声。

 その幻聴にあなたの内腿は締まり、頭は白くなった。

 それでもやめずに動かせ続ける指に、夫の顔はなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

眠れない夜の雲をくぐって

ほしのことば
恋愛
♡完結まで毎日投稿♡ 女子高生のアカネと29歳社会人のウミは、とある喫茶店のバイトと常連客。 一目惚れをしてウミに思いを寄せるアカネはある日、ウミと高校生活を共にするという不思議な夢をみる。 最初はただの幸せな夢だと思っていたアカネだが、段々とそれが現実とリンクしているのではないだろうかと疑うようになる。 アカネが高校を卒業するタイミングで2人は、やっと夢で繋がっていたことを確かめ合う。夢で繋がっていた時間は、現実では初めて話す2人の距離をすぐに縮めてくれた。 現実で繋がってから2人が紡いで行く時間と思い。お互いの幸せを願い合う2人が選ぶ、切ない『ハッピーエンド』とは。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~

あらお☆ひろ
現代文学
白血病の診断を受けた20歳の大学生「本田望《ほんだ・のぞみ》」と偶然出会ったちょっと変わった太ったおじさん「備里健《そなえざと・けん」》の1週間の物語です。 「劇脚本」用に大人の絵本(※「H」なものではありません)的に準備したものです。 マニアな読者(笑)を抱えてる「赤井翼」氏の原案をもとに加筆しました。 「病気」を取り扱っていますが、重くならないようにしています。 希と健が「B級グルメ」を楽しみながら、「病気平癒」の神様(※諸説あり)をめぐる話です。 わかりやすいように、極力写真を入れるようにしていますが、撮り忘れやピンボケでアップできないところもあるのはご愛敬としてください。 基本的には、「ハッピーエンド」なので「ゆるーく」お読みください。 全31チャプターなのでひと月くらいお付き合いいただきたいと思います。 よろしくお願いしまーす!(⋈◍>◡<◍)。✧♡

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...