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寝付くまで夏を忘れる冷房にすがり、セットしていたタイマーが切れ、半身を布団のなかで裸にしたままでも耐え切れない暑さに目が覚まされたのはまだ朝になり切れていない薄い夜のなかだった。
部屋に立ち込めるむうっとした妖気は自身の身体を慰めた名残りとしか見えず、発散された女は害虫駆除の煙剤を焚き、四隅にまで人間の意図で持って染め、小さな命を殺める容赦のない傲慢さがあった。その横暴がなされるなかで眠りを続け、掛け布団で覆われ虫よりも自身を苦しめる結果となったのは、無知ゆえに部屋から出ず濛々と焚かれる薬品を吸い込んでしまった事故、あるいはそれを利用した自害のように思われた。
夫を殺した会社への復讐で視野が濁っていたが、何も自身が生きていくことを前提としないでも良いのではないかと湿気の重みに心安くなったあなたはこのまま夏に絞め殺される悦びを虚ろな眼で夢想した。
もう一度指を運び布団のなかで慰めれば見事に死ねるのではないかと陰に触れた。
粘り付く汗に加担された熱のぬめりが深くしてあった。
夜に一度抱かれ、朝になる前に目がさめた夫にもう一度求められた若かりし頃に引き戻され、目頭は熱くなり、潤みに堪え切れなくなったまなじりは、こめかみに向けふたつ筋を引いた。
濡れた枕を思いやりながら指を動かせた。
復讐でも性欲でも悲しみから目を背けられるのならば、と何にでも縋った本心が露わになり、夫の死以外は初めから何でもなかったと思い知らされた。
部屋に立ち込めるむうっとした妖気は自身の身体を慰めた名残りとしか見えず、発散された女は害虫駆除の煙剤を焚き、四隅にまで人間の意図で持って染め、小さな命を殺める容赦のない傲慢さがあった。その横暴がなされるなかで眠りを続け、掛け布団で覆われ虫よりも自身を苦しめる結果となったのは、無知ゆえに部屋から出ず濛々と焚かれる薬品を吸い込んでしまった事故、あるいはそれを利用した自害のように思われた。
夫を殺した会社への復讐で視野が濁っていたが、何も自身が生きていくことを前提としないでも良いのではないかと湿気の重みに心安くなったあなたはこのまま夏に絞め殺される悦びを虚ろな眼で夢想した。
もう一度指を運び布団のなかで慰めれば見事に死ねるのではないかと陰に触れた。
粘り付く汗に加担された熱のぬめりが深くしてあった。
夜に一度抱かれ、朝になる前に目がさめた夫にもう一度求められた若かりし頃に引き戻され、目頭は熱くなり、潤みに堪え切れなくなったまなじりは、こめかみに向けふたつ筋を引いた。
濡れた枕を思いやりながら指を動かせた。
復讐でも性欲でも悲しみから目を背けられるのならば、と何にでも縋った本心が露わになり、夫の死以外は初めから何でもなかったと思い知らされた。
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