空蝉

ひさかはる

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 濡れを馴染ませた女芯は硬さに鋭さを増しても摩擦に堪えるに充分で、慰みを求める身体は指に押し付けるよう自身の腰を波打たせながらベッドを揺らし、掛け布団は妖しさを持ってうねった。

 誰に見られるでもないが、女の陰を露わにする程の心地はなく、自涜の恥に抗いながらも指と腰をやめる術があなたにはなかった。

 明度を調節すれば夜のなかでも観られる画を映すカメラがベッドに向いていると想えば布団に隠されてはいるものの、何をしているのかは瞭然であり、淋しい女と取られても、淫猥な女と取られても、仕様のない第三者の目に晒されているようで、布団を剥ぎ、思い切りベッドのうえで乱れるよりも尚始末が悪いように思われた。

 風俗で働くと決めたとしてもやり切れず、半端な色を俗にいう定型のエロスで落ち着かせても、見せられている側の心地が却って覚束なくなるだろう。けれどそういったシナをひとつの試みとして作っているのなら男の歓びにもなり得るか。

 そういった想念があなたの頭を掠らせると、掛け布団は見世物の気色を纏い始め、純然とした羞恥ではない赧に灯り始め、クーラーに冷まされた外気との釣り合いは崩れ去り、布団のうちの熱は夏の夜そのままに湿度を籠もらせた。

 ルームウェアとショーツは剥ぎ取られ、布団のなかで丸まり、女の股は広くなり、誰かに見せる試みに濡れ、頤は色を持って甘くなり、まなじりは苦しく歪んでも、抱かれているかの如く男を意識した情をもたげた。

 女の陰がもたらす湿りに指は絡まり芯は悦びに啼く。

 自涜とは言えず、誰かをも引き込む欲の渦が下腹部で暴れ、腿から足指の先まで快感が走り、外へと逃げずに反射して、もう一度股へと還る。掛け布団を少し引き上げ爪先を僅かに外気に触れさせると、冷ややかな視線に刺されるような感に股は震え、足指は隠すことなく色を露わにした。

 何が行われているのかさえ判然とさせれば足指の先だけであっても男を勃たすことは出来るだろうか。そうであればこちらに取っても悦びを膨らませる材料となる。

 あなたは足指の先に触れる外気の向こうに牡の熱を想った。

 自然と甘く開かれていた口が意図を持って端を弛ませ幻想の男を誘い、芯は硬さを増していった。
 
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