空蝉

ひさかはる

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 珈琲に催され、トイレに入れば尿意のほかにも素直になるものがあった。小水を済ませ、ウォシュレットで綺麗にする言い訳に女の陰を濡らせると、女の芯に当てるよう腰は位置を変えた。

 痒さの伴う刺激は背を丸めさせ、唇を薄く開かせた。ひとり声をあげるには余りある虚しさに恥を覚え、眉間に力を寄らせるに留めおいた。

 芯に返され便器に溜まる水に撥ねる音がちょろちょろと鳴り鼓膜を撫でた。何に急かされるでもないが、落ちてゆく砂時計に似た心地があり、上から下へと溜まりゆく試みを想い、腰をスライドさせ、羞恥ある胸のうちから下腹部を目掛け降りてゆく熱は時間と共に重みを持ち存在を確かにしていった。

 ウォシュレットを芯に当て続け、臀部のほうから手を忍ばせ、指で陰の襞を甘く割って女の入り口に軽く触れさせると、ついさっき水流で綺麗にしたとは思えないぬめりが頭を出していた。中指に絡ませ、なかへと挿していけば冷たい夫の指にはなかった快感が走り、丸めていた背は天井へ向かって伸び、陰から頭の先まで一本の直線が深く描かれた。

 角度が変わり、女芯に当てる勢いのある水が芯を守る薄い皮の下から剥き身の直接的な愛撫に変容し、痒みは痛烈になり、足は踵に力を持たせ、浮かせた爪先の指は開かれ、すうっとした空気を指の股に感じた。

 が、その程度では冷めることのない悦が痛痒を飛び越え目を潤ませた。

 空いたほうの手で唇を割り、男の根を想いながら舌を這わせた。自身の指に神経がある事が厭わしく、手近に何か棒状のものはないかと目を彷徨わせたが、便器を擦るブラシの柄しかなく、流石にそこまでは汚れ切れない、と指を二本にし、疑似の根を太くさせて誤魔化した。舌に触れる指が増えると神経は分散され、一本のときよりも大分鈍くなった感覚に男の根がやや実感を伴って想起された。

 指の神経に比べ女の陰は欲が張り、内と外に分散される事なく快楽は相乗し、芯が受ける刺激を陰のなかは我がことのように悦び濡れを昂らせる。

 唇を割った指を前後させると、舌に宿る思い出が甦り、無意識が貪らせ、疑似の根以上に女の口内が真に迫った。指をひとつ増やし円柱を造るよう、人差し指と薬指を内に向かって寄せれば、三本の指は膨らみ切った男を呑み込む苦しさに似た丁度良い太さになり、口内は埋められ、舌は本意気となった。

 中指ひとつでは足りなくなった陰に薬指も重ねて呑み込めば、心は失われ、かたかたと派手な音を立て始めた便座もはばからず、欲に向いた激しさのほか一切を不乱にして女はひろがっていった。

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