ゆっくりと異世界旅

安野穏

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開拓村にて

生活の改革

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 謎の温泉施設には、何故か小さいゴーレムが働いていた。これっていわゆるロボットだよね?

 つまり、日本にあったスパがここにできたけれども働く人間はいない。故に無意識にゴーレム(ロボット)を作ったのだろうか?不思議だ。なんでこんなことができたのだろうか?

 なぜこんなものが現れたのか?謎は謎を呼び、いろいろな意見を村の大人たちは出し尽くし、とにかく、あるものは使おうとあっさりと決まったらしい。

 村の大人たちは私の親も含めいい加減な奴らだった。




 まあ、それでも、毎日お風呂に入ることができる生活はうれしい。子守隊は大人たちが仕事をしている間、ここで遊ぶことになった。ここが一番安全な場所と確認されたからだ。つまり、小さなゴーレム(ロボット)もどきが危険なことをさせないようにと見張ってくれる。というより、私がそう願っているからだと思う。やっぱりこの施設って私が出したものだと思う。魔法の一種だろうか?

 私にとっては前世でのんびりと日帰り温泉三昧していた頃のように、温泉に入ったり、まったりと大部屋でお昼寝したり、何よりも前世のトイレがそのままついてきたことがうれしい。村の臭いトイレ事情を何とかしたいと常々思っていたので、いつか、家にトイレを付けることを考えている。





 毎日毎日、前世のトイレが欲しいなあと思っていたら、なぜか小さなゴーレムたちがいきなり集団で村に現れて、各家々を壊して回り、皆が阿鼻叫喚で逃げ回ることになる。多分ゴーレムがいなくなっただろうということで、一時村人たちはスパに身を寄せることになった。

 ゴーレムたちが動いている間、ずっと私の中から何かが抜けていくのを感じていた。それは毎日私が意識を失うまでになり、これがラノベで言う魔力枯渇ということなのだろうかと思う。つまり、あのロボットもといゴーレムたちは私の魔力を糧にして動いているらしい。なんでこんなことが起きているのかと思えば、きっとトイレが欲しいと願い続けていたせいかもしれない。

 両親や兄弟たちはもちろん、村の人たちも私の急な体調不調を心配しながらも、ゴーレムたちへの恐怖もあり、何も言わずにスパの中で過ごすことしかできなかった。

 村から聞こえる音の大きさに子供はもちろん大人たちさえびくびくしていたが、ゴーレムたちがまたスパに戻ってきたので逃げるようにまた村に戻り、またみんなで呆然と立ち尽くすことになる。




「これはどうしたことだ」

 だよね~~。さびれた開拓村に綺麗な町ができていた。石畳の続く道に村の中心の広場にはきれいな噴水があり、石造りの家は前世のヨーロッパの田舎の風景を思い出させる。

 元の家のあった場所に行くと前よりもちょっと大きな立派な2階建ての石造りの家があり、キッチンやリビング、トイレにお風呂がついていたよ。もう狂喜乱舞の内心を押さえるのが辛かった。部屋も両親の寝室や子供たちの各部屋にはベッドとクローゼットが備え付けられていて、何よりも私がうれしかったのが、トイレだ。前世で使っていた温風洗浄機能付きの便座がついていたのだ。

 街も外見はヨーロッパの田舎町的ではあるけれど、実はきちんと近代的な上下水道完備の立派な街になっていた。護岸工事された川のほとりに浄水場と下水処理施設もできていて、ゴーレムたちやるなあと感心したのは言うまでもない。これで村に蔓延していたあの臭さとおさらばできると思うとうれしいし、何よりも衛生管理がきちんとできるということは流行り病とかの蔓延を防げる第一歩である。

 それにメンテナンスも全部ゴーレムたちが行うらしく、村の人間がする必要もない。快適な暮らしに私はやっと人並みの生活ができると胸を撫で下ろした。




 そんなこんなでゴーレムたちと共存する生活の基盤ができ、さびれた開拓村の生活は一変したが、大人たちの顔色はあまりよくなかった。それは開拓した畑の実りがあまり期待できず、つまり最重要な食生活の問題である。あとは村の近辺に出没する魔獣にも関係する。せっかく実った畑の作物を魔獣たちに食い荒らされるのだ。幸い、この開拓村近辺に出没する魔獣はレベルが低く、普通の村人でも倒せるらしいのだが、夜中に活動するものが多く、朝起きると畑が根こそぎ魔獣被害でやられていることが多いらしい。

 


 魔獣と聞いてどこぞのファンタジー世界に転生したんだなあと実感したのは言うまでもない。




 生まれて1年以上たったのでもう普通に歩くことができるようになった私は、またゴーレムたちに願う。村の周囲に石の壁や堀を作り魔獣が簡単に入り込めないようにしてほしいと。ロボットもどきの小さいゴーレムたちは私の使役獣らしく、私の願いをかなえてくれる。その代り、魔力が枯渇するくらいに魔力を使われるのだが、これもだんだん魔力が増えてきているらしく、昔ほど魔力枯渇することはなくなっている。

 村の入口の門を大きなロボットもどきゴーレム2体に任せ、後はぐるっと村を取り囲むように石壁を張り巡らせていく。もちろん、村の人たちには私がゴーレムもどきを使役していることは一応公然の秘密になっていて、そう公然の秘密なのだ。わかっていても誰も何も言わない。この村には実はたくさんの秘密がある。それはまたのちに語ることにするが、とりあえず、村の安全を優先させる。

 きっととある国の軍隊が来ても大丈夫なような造りにゴーレムたちがしてくれるだろうし、当分は安泰であろうと思う。

 

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