ゆっくりと異世界旅

安野穏

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開拓村にて

情報収集

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 やっとハイハイできるようになり、家の中を探検したよ。

 ええ、小さな家ですから一日で探検終わりだったよ。

 一階建てらしく、ハイハイできるまでいた両親の寝室と思しきもの以外に他の兄弟と雑魚寝する部屋、あとは広い部屋と一緒についているキッチンらしきもの、つまりリビングダイニングキッチンと日本風に言えばいいのかな?

 トイレ、それは前にも言った通り、外でどこでも平気でみんなしているよ。ハハハと軽く笑うしかない。

 彼のベルサイユ宮殿でも一般貴族のトイレは庭でするって話みたいに、庶民はどこでも平気でトイレをしていたので町は臭かったと聞いた。あれを地でいくとは思わなかったよ。それで衛生環境がものすごく不安だ。病気の元を振りまいているとしか思えない。これは簡単なトイレが必要だなあとまずは思う。まあ、身体は清浄魔法でいつも清潔に保たれているから大丈夫かも知れないけれど、これは伝染病とかいろいろと心配が出てくる。

 後怖いのは水だと思っていたけれども、なんと料理に使う水は生活魔法で出すので安全だった。これだけはうれしい。

 それ以外は川から汲んできた水を使っているらしい。主に掃除とか?洗濯とか?清浄魔法は本人をきれいにはしてくれるが、家の掃除とか衣類の洗濯とかには使えないらしい。まあ、それが仕えるくらいに魔力がたくさんあれば、こんなど田舎の開拓村で開墾なんかしていないよねって話になるらしい。




 お風呂に入りたい。

 もうそれは日本人の叫びだ。生活魔法の清浄魔法できれいさっぱりになっても、あのお風呂に浸かる至高の時間が欲しい。できれば温泉付きがなおよろしい。

 まだ、一人で外に出してもらえない。早くひとり立ちしたい。




 ハイハイするようになると、すぐ上の姉が子守を始めた。子供が全部で7人。実に子だくさんだ。小さいうちから働くのは当たり前。

 ここは開拓村なので、将来人手になる子供がたくさん欲しいらしい。開墾すればそれが自分の土地になり、畑になる。入植するときに幾ばくかの金銭を受け取り、それでしばらく食いつなぎ、やっと少しばかり収穫できるようになったところらしい。

 


 この世界にはおんぶ紐はないらしく、粗末な籠に入れられた。上の兄や姉たちは両親の手伝いで忙しいらしい。6歳以下の子供たちは集められて6歳の子供が面倒を見るのだ。7歳以上の子からは家の手伝いを強制的にやらされる。昔の農家のこってこんな感じだったのかも。有名なト○ロの世界の方がずっと幸福な暮らしだと思える。少なくとも、この世界の農家の感覚は江戸時代の農民の暮らしに似ているのかもしれない。それとも開拓村というからには北海道の屯田兵時代かも。日本の近代史で習ったあの過酷すぎる暮らしを思い出してげんなりする。


 

 そうそう、うちの家族について言うのが遅れてた。

 父と母と12歳の長男と11歳の次男、10歳の3男、8歳の長女、7歳の4男、5歳の次女、そして私の9人家族。すぐ上の次女以外はみんな家の手伝いをしている。

 実は鑑定魔法を使ってみたのだけれど、レベルが低すぎて名前しか出てこなかった。しょぼい。それでレベルアップと思っていろいろなものに鑑定をしまくったのだけれど、物の名前しかわからないし、レベルも上がらない。それで詰まっているところだ。

 自分のステータスでハーフエルフとなっていたけれど、どう見ても見た目みんな人間。父か母のどちらかがエルフなんだろうと思っていたのだけれどね。この世界のエルフって人間と変わらない見た目なんだろうか?う~~ん、わからん。

 そういえば、チェンジリングとかいうのがあったっけ?確か、イギリスで精霊の取り換えっ子とか言われていた。もしかして私ってそれなのか?いや、前世のゲームからこんなところに飛ばされたことから考えても取り換えっ子という言葉はあっているのかもしれない。




「あうあう」

 面倒見てくれるすぐ上のテファーナお姉ちゃんを呼んだ。勝手に籠から出ると怒られるのだ。なので、ここは大人らしく、おとなしくしている。だがしかし、生理的欲求には逆らえない。

「アリア、トイレかな?」

 そう言いながら、端っこに連れて行く。皆みたいに平気でどこでもしたくない。そこだけは頑としてゆずらなかった。

 今日は年少組は子守しながら、川の近くで遊んでいる。真夏で暑いので、時折ここで水浴びをしているらしい。もちろん、溺れないようになのか、何故か河原に小さな子供用のプールみたいなものができているのだ。川の水を引き込んで、さらにまた川の中に水が流れていく。浅いプールでの水浴びは、年少組にとっては楽しい遊びらしい。

 私は籠の中でうらやまし気に水浴びをしている子供たちを見ては、近くにあるものを暇つぶしに鑑定している。この村の中で一番小さいのは私らしく、籠に入っているのは私だけだ。

 できれば一緒に水浴びしたいが、ダメだと許してくれない。ショック。皆気持ちよさそうに遊んでいるのに、何でこんな籠の中でくすぶっていなければならないのかと思うとよいしょと勝手に籠を出て、初めての独り歩きを始めてみる。

 まあ、時々、籠の中でつかまり歩く練習をしていたのだから結構筋肉はついたと思うのだが、乳児の身体のバランスをなめてたよ。

 頭からずぼっと転げ落ちて、そこで硫黄のかすかな匂いがしたのを感じて、ハイハイでそっちに行ってみる。
 

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